高齢者が脳トレに取り組むメリットって?おすすめはある?

2019/11/16

山本 康博 先生

記事監修医師

MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長
東京大学医学部卒 医学博士
日本呼吸器学会認定呼吸器専門医
日本内科学会認定総合内科専門医
人間ドック学会認定医
難病指定医
Member of American College of Physicians

山本 康博 先生

昔から、脳も使わないと衰えてることはよく言われていました。最近ではゲームなどを皮切りに「脳トレ」ブームが流行ったこともあり、「脳トレ」という言葉は今やすっかり定着しています。この記事では、高齢者が脳トレをするメリットやおすすめの脳トレ、脳トレに取り組む際の注意点を紹介します。

高齢者が脳トレに取り組むと得られる効果は?

脳を使っていないと、年齢とともに機能が低下します。脳の機能が衰えると、感情をコントロールできず怒りっぽくなったり、記憶力が低下して忘れっぽくなったりします。そこで、パズルや数字遊びなど、脳を使って楽しむいわゆる「脳トレ」と呼ばれるレクリエーションで脳機能を活用することがおすすめです。

脳トレは、認知症の予防、軽度の認知症の人が能力を維持する、脳の働きを活性化するといった効果が期待されます。とはいえ、「訓練」や「トレーニング」という言葉のイメージから、中には「やらされている」「なんだかきゅうくつ」といったイメージを感じてやりたがらない人も少なくありません。そこで、あくまでもレクリエーションの一環として、誰でも気軽に参加できるようにするのがおすすめです。

遊び感覚で楽しみながら行うと、脳はより活性化します。脳トレは、単に脳を鍛えるだけでなく、日々の生活に楽しみを加え、生活の質を向上することにも役立つのです。

高齢者におすすめの脳トレは?

脳を活性化するポイントは、以下の3つです。

  • 挑戦する
  • 考える
  • 判断する

脳トレは頭を使うトレーニングですから、体を使うトレーニングは難しい人でも楽しく取り組めます。脳トレと聞くと、難しい計算や記憶の問題を思い浮かべるかもしれませんが、高齢者の行う脳トレはどれも簡単で、誰でも気軽に楽しめるものばかりです。

たとえば、パズルを使った脳トレは人気があります。ジグソーパズルは小さなピースを自分の手で持ち、どこにはめれば上手くはまるのか、試行錯誤を繰り返していくため、脳の働きを活性化します。指先を動かす刺激は脳の多くの部分に伝わり、形を覚えることが記憶力のトレーニングにもなるので認知症予防にも役立ちます。

そのほか、文字を並び替えて別の言葉を作ったり、数字を入れ替えて問題を解いたりといったパズルも人気の高い脳トレです。問題そのものの難しさよりも、たくさん量を解けることや、本人が楽しみながら行えることが重要なポイントです。

しりとりも「前の人が言った言葉を覚える」「最後の文字から始まる言葉を思い出す」という、記憶力や情報処理能力を鍛えられる立派な脳トレです。ただ、普通のしりとりをずっと続けていても単調で飽きてしまいやすいので、飽きずに遊べるよう、たとえば「山の動物」「海の動物」「4文字の言葉」「ポジティブな言葉」など、使える言葉に制限をかけてしりとりをするのがおすすめです。このような制限ルールを加えると、しりとりに変化が生まれて飽きずに楽しめますし、言葉を思い出すのに脳をフル活用する効果も期待できます。慣れてきたら、手拍子や音楽に合わせてリズミカルに行うと、身体を動かしながら楽しく脳トレできます

他にも、クイズ・オセロなどのボードゲーム・レクリエーション介護士が考案したオリジナルゲームなど、さまざまな脳トレがあります。その中でも、特別な道具を用意しなくてもできる脳トレを2つご紹介しましょう。

数式を考える

計算を使った脳トレです。紙とペンがあれば誰でも参加できます。あらかじめ答えを決めておき、その答えになる数式をできるだけたくさん考えていきます。制限時間内で最終的にどれだけの数式を思いつけるか、グループごとまたは個人戦で競い合います。

遊び方

  1. 各グループ、または個人に紙とペンを配る
  2. 企画者は「答えが20になる数式を作りましょう」など、数字を指定する
  3. 1分間の制限時間で、思いつく限りの数式をどんどん紙に書き出していく
  4. 制限時間が来たら、グループまたは個人ごとに1つずつ数式を発表していき、企画者は全員に見えるところに設置されたホワイトボードや大きな紙に読みやすく書き出していく
  5. 他のチームが考えていない数式は2ポイント、数式がかぶっていたら1ポイント、間違っていたらマイナス1ポイントで計算し、最後に合計得点を競う

数式を考えることが目的ですが、他のチームとかぶっていてもたくさん書き出せればその分点数が増えますから、あまり考えすぎずどんどん書いていけるよう声かけしていきましょう。また、「2×10」と「10×2」のように、前後が入れ替わっていても答えが合っていれば、違う数式としてカウントして構いません。小さい数字だと数式を思いつきにくいので、10以上の数字を指定するのが良いでしょう。

都道府県を当てる

各都道府県の代表的な事柄(名産品や有名な場所など)に関するクイズを出し、参加者にその都道府県がどこなのか当ててもらうクイズです。都道府県に関することはどんな人でも知っている可能性が高いため誰でも参加しやすく、頭の体操と回想法の2つの要素から脳を活性化し、楽しめるクイズです。

遊び方

  1. あらかじめ、各都道府県の「有名な観光地」「歴史上の有名人」「名産物」など、都道府県を代表するものや事柄をそれぞれ3~5つずつ用意しておく
  2. ホワイトボードにヒントをひとつずつ書いておき、参加者にどの都道府県のことを言っているか当ててもらう(「ちんすこうが名物なのは?」「広大なラベンダー畑がある都道府県と言えば?」「砂丘で有名なのは?」など)
  3. 少ないヒントで解けた人から、高い得点をつけていく

都道府県クイズは47個全てを用意する必要はありませんし、難しくする必要もありません。できるだけ参加者に馴染みがありそうな場所や、誰もが知っている有名なキーワードを使い、参加者が必ず答えに辿り着けるように作りましょう。

脳トレに取り組んでもらうポイントは?

脳トレのレクリエーションはで最も大切なことは、「できるだけ毎日、楽しみながら行ってもらう」ことです。気が向いたときだけやるのではなく、毎日継続していくことが、脳の機能を活性化し、現在の脳機能を維持したり、認知症を予防したりといった効果につながります。そのためには、やはり楽しみながら行えることが重要です。

そして、楽しんで毎日続けてもらうためには、参加者の好みや個性を把握し、どんな遊びが好きなのか、どれくらいの難易度のクイズなら簡単に解けるのか、といったことを考えて企画することも大切です。興味がないことを無理やりやらせようとするのは逆効果になりかねません。

しりとりやクイズなど、対戦するタイプの脳トレの場合、ルールを緩やかにしたり、誰かが勝ったらまた別の人が勝てるようにしたりなど、細やかなゲームバランスの調整も忘れないようにしましょう。ルールが難しくて参加できなかったり、特定の人やグループが負けてばかりだとやる気をなくしてしまいます。

さらに、認知症の人や高齢者は脳が疲れやすいですから、どんなにレクリエーションが楽しくても、長時間続けると疲労でぐったりしてしまいかねません。いつでも休んだり、やめたりできるよう、ゆるやかな活動にしましょう。

おわりに:高齢者の脳トレは、認知症予防や脳の活性化につながります

脳トレは、脳を鍛えるトレーニングです。脳を活性化し、脳の機能を維持・向上を促します。ただし、訓練やトレーニングという「強制」のスタイルでは抵抗する人もいますので、レクリエーションとして遊びながら行うのが無理なく取り組んでもらう上で大切です。また、ゲームが難しすぎたり、長すぎると苦痛になってしまうため、易しい難易度で疲れたら自由に休めるようにするなど、ゆるやかなスタイルで行いましょう。

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