記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
2019/11/24
記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
年齢が上がるにつれて、腰痛をはじめとするトラブルに悩まされる人が増えてきます。この記事では、高齢者の腰痛に焦点を絞り、その特徴や症状、原因などを解説します。
高齢者の腰痛は、若い世代とは発症のタイプが違います。若い世代では「ぎっくり腰」などの一過性の腰痛、すなわち急性疼痛が多く、たいていは治療によって痛みを消すことができます。しかし、高齢者の腰痛は一度発症するとなかなか治らない、あるいは再発を繰り返す「慢性疼痛」が多いのです。
また、若い世代では安静にしているときには痛みがなく、動いたときに痛む「運動時痛」が主な症状である場合が多いのに対し、高齢者の場合腰痛に加えて他の症状もみられることが多いです。このように、一口に腰痛と言っても、若い世代と高齢者では症状の出方や期間に違いがみられます。
高齢者と若い世代で腰痛の症状や期間に違いがあるのは、そもそも腰痛を引き起こす原因に違いがあるためです。
高齢者の腰痛の場合、変形性脊椎症・腰部脊柱管狭窄症・脊椎圧迫骨折などが原因となっている場合が多いです。いずれも、骨やその間でクッションになっている部分が加齢によって弱くなったり、弾力性が失われたり、変形したりすることによって起こるため、慢性的に腰痛が続きます。
また、まれではありますが、腰痛が重篤な疾患の兆候となる場合もあります。
高齢者の腰痛は、大半が加齢が原因のため、予防は困難です。そこで、主に対症療法を中心にケアを行います。
変形性脊椎症・腰部脊柱管狭窄症の場合、まず内服薬や理学療法による保存療法が選択されます。保存療法では効果が不十分な場合、ブロック注射や手術療法を行うこともあります。そして、圧迫骨折による腰痛の場合は、コルセットでまず脊柱を安静にさせ、骨粗鬆症自体の治療を行います。
ただ、腰痛があるからといって安静にしすぎると、脚の筋力や心肺機能の低下、骨粗鬆症の悪化などにつながります。重篤な疾患につながるような症状(激しい痛みや発熱、悪性腫瘍の存在)がなく、加齢による変化であるとわかった場合、適切な処置で症状を抑えるとともに、生活活動度を減らさないよう、散歩や家事などを腰痛の起こる前と同様に行うことが大切です。
骨粗鬆症による脊椎圧迫骨折や、腰部脊柱管狭窄症の場合、症状を悪化させるような生活習慣を改善することも必要です。バランスの良い食事とともにカルシウムやビタミンDを意識的に摂取することや、適度な運動を習慣づけること、太陽光を浴びること、過度な飲酒や喫煙を避けること、リハビリテーションにもつながるストレッチを行うことなどがおすすめです。
高齢者の腰痛の多くは慢性疼痛で、変形性脊椎症・腰部脊柱管狭窄症・脊椎圧迫骨折など、加齢による骨や椎間板の変形が主な原因です。また、まれな場合ではありますが、大動脈解離や悪性腫瘍などの重篤な疾患が原因となることもあります。
加齢による疼痛の場合、予防は非常に困難ですから、症状が現れた場合に対症療法でケアを行っていきます。骨粗鬆症の場合は、生活習慣の改善も効果的です。