記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
2020/3/5
記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
高齢者というと、なんとなく耳が遠くて、目も見えにくくなる、といったイメージを持っている人は多いでしょう。しかし、例えば耳の遠さにも個人差があり、口を耳に近づけないとうまく聞き取れない人から、少し離れていても聞こえる人までさまざまです。
このように、高齢者の身体的特徴は個人差が大きいものですが、共通しているのはどんなところなのでしょうか。また、身体機能の低下を遅らせるにはどうすれば良いのでしょうか。
高齢者の身体的な特徴とは、一言で言えばさまざまな部位の衰えということが挙げられます。免疫力の低下、体力の低下、筋力の低下、そしてそれらに伴う疾患や合併症の多さなどです。具体的には、以下の6つのポイントにまとめることができます。
一口に高齢者と言っても、その身体の状態は十人十色、千差万別です。それは、人によってそれまで生きてきた社会的な背景や環境要因、生活習慣、ものの考え方などが総合的に老化に影響してくるためで、何歳までにこのぐらい衰える、といった目安が立てにくいのです。それほど老化というのは個人差の激しい変化と言えます。
では、高齢者の体にこのような老化、すなわちさまざまな身体機能の低下が起こるのはなぜなのでしょうか。それは、主に加齢に伴う低栄養が関係していると考えられています。高齢になるにつれて、歯周病や歯が抜けて減る、噛み合せが悪くなるなど咀嚼機能が低下し、舌の動きや飲み込む機能が悪くなる嚥下機能の低下も見られます。
咀嚼・嚥下がうまくいかないと、当然、食事の量も減っていきます。また、歯が悪くなると固いものがうまく噛み切れなくなりますので、栄養も偏りがちになります。これらの要因から、低栄養に陥りやすくなるのです。さらに、加齢で筋力や筋肉量・体力が減れば身体活動量も減りますので、食欲そのものも減退し、余計に低栄養になりやすくなります。
こうして低栄養の状態になると、活動に必要なエネルギーや、筋肉量・筋力・身体機能の維持に必要なタンパク質などが不足し、さらに筋力が低下し、疲れやすくなり、身体機能が低下します。そして、疲れやすくなって筋力が低下すると、ますます歩いたり動き回ったりという身体活動量が減り、消費エネルギーが減って食欲が減ります。
このように、一度低栄養の状態になると、なかなか負のスパイラルから抜け出せず、悪循環でどんどん身体機能が衰えていってしまうのです。加齢に伴う骨格筋量と骨格筋力の低下をサルコペニア、サルコペニアが進んで筋力や活力が衰えてしまうとフレイルという名前で呼ばれることがありますが、できればサルコペニアの段階で早急に改善策を取りたいものです。
前章で触れたように、身体機能の衰えをゆるやかにし、老化を遅らせるためには、そもそも低栄養の状態に陥らないようにすることが大切です。つまり、食欲の維持のための身体活動量の維持、そしてそのための筋肉量や筋力の維持が必要不可欠です。サルコペニアを進行させないためにも、フレイルになる前、あるいは軽度のフレイルでとどめておくためにも、筋肉量や筋力を意識的に維持しましょう。
そのためには、十分なタンパク質を摂取することと、筋力トレーニングを組み合わせる必要があります。筋肉を作るもととなるのはタンパク質ですから、まずは意識的にタンパク質をしっかり摂取しましょう。筋力トレーニングは医師や専門家の指示を仰ぎ、関節や骨に負荷がかからないよう、無理なく行うことが大切です。
身体機能の低下を防ぐということは、健康な身体を維持することにほかなりません。健康な身体を維持できれば、それだけ元気に活動できる期間が増えるということです。ですから、早いうちから適度な運動と適切な食生活をはじめ、十分な休養や節酒・禁煙、歯や口腔内の健康維持を心がける、といった生活習慣の見直しが重要なのです。
高齢者の身体的特徴を一言で言えば、身体機能の衰えです。しかし、一方でその衰え方には個人差があり、80歳を過ぎても元気に活動している人もいれば、70歳で寝たきりになってしまう人もいます。
こうした老化を遅らせる要因として、低栄養に陥らないようにするということが挙げられます。身体機能の維持のためには、筋力や筋肉量を維持するためのタンパク質をしっかり摂取し、無理のない範囲で筋力トレーニングを行いましょう。