ギラン・バレー症候群でみられる症状は?

2020/2/17

山本 康博 先生

記事監修医師

MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長
東京大学医学部卒 医学博士
日本呼吸器学会認定呼吸器専門医
日本内科学会認定総合内科専門医
人間ドック学会認定医
難病指定医
Member of American College of Physicians

山本 康博 先生

ギラン・バレー症候群は、罹患率が非常に低いことから、日本でもまだまだ知られていない難病の1つです。とはいえ、症状の程度には個人差が大きく、生命に関わるほど重症化する人もいれば、ごく軽度で疾患に気づかない人もいます。

では、ギラン・バレー症候群かもしれないと疑われる症状には、どんなものがあるのでしょうか?医学的な面と、日常生活の両面から見ていきましょう。

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ギラン・バレー症候群ってどんな病気?

ギラン・バレー症候群は、我々の体に備わっている免疫システムが、病原体と間違えて末梢神経を攻撃してしまう自己免疫疾患の一種、と考えられています。発症すると手足の脱力やしびれ、痛みなどを感じ、重症例では生命に関わることもあります。年間で10万人あたり1~2人と非常に低い発症率ですが、10歳ごとに区切った発症率を見ていくと、10歳上がるごとに1割ずつ増えていて、高齢になるほど発症しやすい疾患と言えるでしょう。

一般的に、自己免疫疾患というと免疫機能が活発な若い人で起こりやすいというイメージですが、ギラン・バレー症候群は高齢者でかからないわけではなく、むしろ高齢者の方が発症率が高い傾向にあります。症状がごく軽い場合には自然治癒することもあるので、高齢で発症した人の中には気づかないまま発症して治癒している人もいるかもしれません。

そもそもなぜ、病原体と間違って神経を攻撃してしまうのかと言うと、ウイルスや細菌などの病原体がその表面に持っている成分とよく似た構造をしたものが、末梢神経にもあるからです。ウイルスや細菌が体内に侵入すると、異物を排除するため、異物に対して限定的(特異的)な攻撃ができるよう、ウイルスや細菌の表面にある成分を認識し、それをめがけて攻撃するように抗体が作られます。

この抗体が、病原体を認識するための成分と、末梢神経にあるよく似た構造を取り違えて攻撃してしまうのが原因ではないか、と言われています。抗体による攻撃自体は一過性のもので、ウイルスや細菌などの病原体がいなくなれば終わりますが、攻撃を受けた末梢神経側のダメージはさまざまです。

ごく軽いダメージで済めば、症状も重篤な状態には至らず自然治癒することもありますが、攻撃を多く受けてダメージが大きくなった場合、神経が傷つくと回復が遅いことから、治るまでに時間がかかったり、後遺症が残ったりしてしまうのです。実際に、ギラン・バレー症候群を発症した患者さんのうち、約60%の人の血液中で、末梢神経の構成成分である「糖脂質(主にガングリオシド)」に対する抗体が発見されています。

末梢神経とは、体の動きに関わる運動神経、感覚を伝える感覚神経、内臓や血管などの働きをコントロールして体内環境を整える自律神経の3つで構成されています。これらの神経は、軸索という中心部分が髄鞘という鞘に包まれているものといないものがあり、以前は髄鞘が剥がれてしまう「脱髄」タイプのみがギラン・バレー症候群と考えられていました。

しかし、近年では脱髄ではなく、軸索が直接障害されるギラン・バレー症候群もあることがわかってきたため、現在ではどちらのタイプもギラン・バレー症候群と呼んでいます。一般に欧米では脱髄型、日本を含むアジアでは軸索障害型が多いとされていて、日本での平均発症年齢は39歳、男性の患者さんの方がやや多いことがわかっています。

ギラン・バレー症候群でみられる症状は?

約3分の2の患者さんでは、ギラン・バレー症候群を発症する数週間前に、風邪を引いたり下痢をしたりといった細菌性・ウイルス性などの感染症を発症しています。主な病原体はカンピロバクター、サイトメガロウイルス、エプスタイン・バーウイルスなどとされており、下痢を起こしている場合はカンピロバクター腸炎の可能性が高いと考えられます。カンピロバクター腸炎は、主に軸索障害型のギラン・バレー症候群の原因になると言われています。

ギラン・バレー症候群を発症すると、以下のような症状が見られます。

  • 咳や下痢、腹痛などの感染症状から数日~数週間後、手足の力が徐々に入らなくなってくる
  • 顔面の筋肉に力が入らない(顔面神経麻痺)
  • 目を動かせなくなり、物が二重に見える(外眼筋麻痺)
  • 食事がうまく飲み込めない、ろれつが回らない(球麻痺)

通常、典型的な初期症状としては、ピリピリとした手足の先のしびれがあるとされています。しびれから数日後、手足の力が徐々に入らなくなってきますが、このときの麻痺は下肢から始まり徐々に上肢に広がっていくことが多いです。しかし、最終的な症状の重さは個人差が大きく、ごく軽い麻痺で済む人もいれば、ほとんど手足が動かせなくなる人までさまざまです。

また、手足のしびれや痛みは出るものの、運動麻痺と比べると感覚麻痺の程度は軽いケースが多いです。自律神経が障害されると、不整脈や起立性低血圧など、体内環境をうまく調節できなくなります。全体の約10~20%程度の重症例では呼吸をするための筋肉も麻痺してしまうため、人工呼吸器が必要となります。

症状は良くなったり悪くなったりを繰り返すわけではなく、急速に進行し、通常4週間程度で病状のピークを迎えます。最短で3~4日、最長で3~4週間程度とされていますが、4週間を超えることはまれだと言われています。ピークを過ぎた後は徐々に改善に向かい、6~12カ月程度で症状が落ち着き、安定した状態になります。

しかし、重症例では回復に長い時間がかかるほか、何らかの後遺症が残る患者さんが2割程度います。そして、全体の約5%が死に至るとされています。手足の力は入るけれど目が動かなくなる、ふらついて歩けなくなる、といった症状が出る特殊なタイプの場合、フィッシャー症候群と呼ばれます。

ギラン・バレー症候群が疑われる症例は?

ギラン・バレー症候群は、症状の程度に個人差があり、ごく軽症の場合はこの疾患を発症していると気づかないうちに自然治癒している人も少なくありません。例えば、もともと握力が40キロあった人が20キロに落ちたとしても、日常生活には何ら支障がないため、「なんとなく手足がピリピリするな」という程度で終わってしまう可能性が高いのです。

しかし、もともと握力が20キロしかなかった人が10キロに落ちると、日常生活に支障が出るため、どうやら体がおかしい、と気づくわけです。このように、ギラン・バレー症候群は、日常生活に支障が出始めた時点でようやく気づき始めることが多いのです。例えば、以下のような症状が見られ、かつ、直近で何らかの感染症にかかったことがあれば、ギラン・バレー症候群を疑っても良いでしょう。

  • ペットボトルのキャップやプルタブのフタが開けられない
  • 階段の上り下りが非常につらい、できない
  • 座った状態から立ち上がれない、立ち上がるのがとてもおっくうに感じる
  • ゴミを集積場まで運べない
  • 布団を押入れにしまえない

何かしら力を使う仕事ができなくなって初めて、なにかおかしいと気づくことが多いため、逆に普段から力仕事を行わない人では、発症に気づかない可能性が高いです。実際に、疾患が判明した時にはかなり進行した状態の人も多く、既に筋力が通常の2分の1~3分の1程度にまで低下しているケースも少なくありません。

おわりに:ギラン・バレー症候群は、手足のピリピリしたしびれから始まります

ギラン・バレー症候群は、末梢神経と呼ばれる運動神経・感覚神経・自律神経を免疫システムが攻撃してしまう自己免疫疾患の一種と考えられています。そのため、手足のピリピリとしたしびれから始まり、徐々に足から、そして手までも力が入らなくなっていきます。

患者さんが発症に気づくのは、日常生活で力仕事ができなくなる頃ですから、既にかなり症状が進行した段階でようやく病院を受診することも少なくありません。

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