ギラン・バレー症候群になったらどんな治療をするの?

2020/3/12

山本 康博 先生

記事監修医師

東京大学医学部卒 呼吸器内科医

山本 康博 先生

ギラン・バレー症候群とは、末梢神経と呼ばれる運動や感覚を司る神経が傷つけられ、手足にピリピリとしたしびれが生じたり、脱力したりする病気です。症状がごく軽度の場合は気づかないうちに治っていることもありますが、重症の場合は全身が麻痺することもあります。

そのため、症状が重くならないうちに早く治療することが大切です。この記事では、ギラン・バレー症候群の症状や治療法、後遺症の有無などについてご紹介します。

ギラン・バレー症候群の症状は?

ギラン・バレー症候群の症状には個人差がありますが、典型的な初期症状として、手足の先にピリピリとしたしびれが現れることが挙げられます。このしびれが現れてから数日後、手足の力が入りにくくなる脱力の症状が出てくる人が多いです。症状は良くなったり悪くなったりすることはなく、一気に進行してだいたい1週間~10日ほどで症状のピークを迎えます。

手足のピリピリ感から症状のピークまでは、最短で3~4日、最長で3~4週間程度と言われていて、4週間を超えることは少ないとされています。症状のピークを過ぎると、治り方にも個人差はあるものの、基本的にはそれ以上悪くなることはなく、回復の方向に向かいます。

症状の程度は人によってさまざまで、ごく軽症で手足のピリピリ感や軽い脱力程度であれば、発症したことに気づかず自然治癒してしまう人もいるようです。しかし一方で、重症化すると立ち上がることができず、歩くことも難しくなる人がいます。さらには、話すことや水を飲むこともできなくなるケースもあります。

最も重篤な状態に至るケースでは、全身がピクリとも動かなくなってしまうため寝たきりになり、瞬きさえもできなくなることがあります。筋力が低下すると呼吸機能も低下しますので、全体の約10~20%の人では人工呼吸器が必要となり、最終的に死に至る人も全体の約5%程度いると言われています。

ギラン・バレー症候群はどうやって治療する?

ギラン・バレー症候群の治療には主に「免疫グロブリン大量静脈注射療法」と「血液浄化療法」が使われ、症状によってはこの2つの療法を同時に使用することもあります。

免疫グロブリン大量静脈注射療法とは

第一選択として使われるのが、免疫グロブリン大量静脈注射療法です。静脈注射を略して静注療法と呼ばれることもあります。この療法では、ヒト免疫グロブリンという免疫システムにおいて非常に重要な役割を果たす抗体を含んだ薬剤が使われ、だいたい5〜6時間ほどかけて点滴注射を行います。

ギラン・バレー症候群では、免疫システムが病原体と間違えて自分の神経を攻撃してしまう「自己免疫」という反応が起きたため、神経が障害されたと考えられています。そこで、免疫グロブリンを大量に血中に送り込んで自己免疫反応を抑え、免疫システムの働きを調整するのが免疫グロブリン大量静脈注射療法です。

免疫グロブリン大量静脈注射療法で効果が見られないケースや、副作用が出てしまった、あるいは過去に出たことがある、などでこの療法が使えないケースでは、次にご紹介する血液浄化療法が使われます。

血液浄化療法とは

血液の中の液体成分「血漿(けっしょう)」を遠心分離や半透膜などを使って分離し、血漿の中に含まれる有害物質を取り除き、再び体内に戻す治療法です。1回につき3~4時間程度、毎日または1日おきに疾患のピークを過ぎるまで行い、疾患のピークを過ぎたら治療を中止します。

最も安全とされている方法は、血液を抜きながら濾過(ろか)して有害物質を除去し、そのまますぐに血液を戻す方法です。この方法では使用する管が1本で、体内から抜いた血液をすぐに戻すことから、比較的トラブルが少ないとされています。

血液をいったん抜いてからまた戻す場合、足のつけ根から入れた管を通して全身の3分の2程度の血液を抜き、有害物質を除去して体内に戻します。この場合は、管が2本必要になりますので、さまざまなトラブルが比較的生じやすいとされています。

血液は、人間の血管内を流れているときに固まることはないのですが、管などの異物と接触すると固まってしまう性質があります。そのため、ヘパリンなど血液が固まるのを防ぐ薬を使いながら治療を行います

同時に使うと早く治る?

病状によっては、上記の2つの治療法を同時に行うケースもあります。同時に使用しても弊害はないものの、とくに早く治療できるというデータもありません。しかし、同時に使用した場合は、人工呼吸器が必要なほどの重篤な状態に陥る確率が低下するとされています。どちらかの治療法のみ使った場合、人工呼吸器が必要な症例は約20%にのぼりますが、両方の治療法を使った場合、約15%まで低下するというデータがあります。

ところが、1年後の治療成績までを加味するとほぼ変わらないというデータもありますので、両方の治療を使った場合、短期的な治療成績は上がるものの、長期的に見たときはどちらかの治療法のみ使った場合と変わらないと言えます。ですから、必ずしも両方の治療法を同時に使った方が良いとは言い切れません。

リハビリテーションを行うこともある

治療が長期にわたるときは、病状に応じて以下のようなリハビリテーションを行うときもあります。

  • 筋力の増強
  • 耐久力の増大
  • 関節可動域の維持と拡大
  • 日常生活の動作や歩行能力の維持や獲得のための運動療法
  • 作業療法
  • 構音や嚥下障害に対する言語療法

麻痺が重い状態のときは、筋肉に過剰な負荷がかからないよう、これらのリハビリテーションによる負荷を調節します。とくに、1年以上症状が続くような場合には、リハビリテーションが必要です。

治療後に後遺症が残ることはある?

ギラン・バレー症候群が一度きちんと治癒した後は、薬を服用する必要もなく、発症する前と同じように元通りの生活を送れるケースが多いです。約7~8割の人は日常生活に戻れますし、再発も非常に少ないと言われています。ただし、治療期間が長引くことはあり、寝たきり程度まで進行した場合は、元通りの社会生活を送れるようになるまで、短くても3~4カ月程度、長い場合は2~3年かかることもあります。

そして、2~3割の人には、筋力が低下したりわずかな手足のしびれが残ったりすることがありますが、日常生活にはほとんど支障をきたさないことが多いです。このケースでは、筋力を必要とする仕事に就いている人の場合、仕事に影響することもあるかもしれません。

また、ごくわずかではありますが、重症例では約5%程度の割合で死亡するケースもあり、死に至る理由は不整脈が最も多いとされています。ギラン・バレー症候群によって機能しなくなる運動神経・感覚神経・自律神経のうち、自律神経が機能しなくなった場合、心臓の拍動を調整する機能に支障が出てしまい、不整脈から死に至るというものです。

自律神経が障害されると胃腸が機能しなくなることもあり、腸管の癒着や血流障害によって内容物が流れなくなる「腸閉塞」と呼ばれる状態がさらに重症化し、死に至ったケースもあります。他にも、人工呼吸器が適応となるケースでは、人工呼吸器に関連する肺炎で死亡したケースも報告されています。

しかし、いずれのケースも死亡にまで至る例はまれだと言えます。ギラン・バレー症候群では、症状が良くなったり悪くなったりすることはありませんので、症状のピークを過ぎて順調に回復に向かった場合は、再び日常生活が送れるまで回復できる可能性が高いと言えるでしょう。

おわりに:ギラン・バレー症候群の治療では、免疫グロブリン大量静注療法が第一選択

ギラン・バレー症候群は、自己免疫疾患の一種と考えられています。本来は自分の体を細菌やウイルスなどの病原体から守ってくれるはずの免疫システムが、病原体と間違えて自分自身の神経を攻撃してしまうものです。

そこで、第一選択として免疫グロブリンという抗体を注射し、体内の免疫システムを調整する方法が有効です。この治療法が使えない場合は、血漿浄化療法が使われることもあります。

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