腹部エコー検査を受けることになったとき、準備が必要なのか、体への影響はあるのか、会社を休まないといけないのかなど不安を感じることがあるでしょう。健康診断や人間ドックで実施されることもある腹部エコー検査について概要や注意点を紹介します。
腹部エコー検査とは
腹部エコー検査では、人間の耳では聞き取ることができない高い周波数の音波(超音波)を腹部に当て、内臓から返ってくる反射波を分析して診断し、臓器などの状態を検査します。X線検査の場合は被爆の影響がありますが、腹部エコー検査には被爆の心配はなく痛みもありません。
腹部エコー検査でわかることは?
腹部エコー検査で肝臓、胆のう、膵臓、腎臓、脾臓、膀胱、前立腺、子宮、卵巣などの臓器を調べることができます。たとえば腹部エコー検査で下記の病気を発見することができます。
- 肝血管腫
- 肝臓に発生する良性の腫瘤性病変です。症状は特にありません。ただし大きくなった場合に血小板が消費され、血が止まりにくくなることがあります。肝血管腫ががんになることはありませんが、定期的に検査を受けて経過観察することをおすすめします。中年以降の女性が発症するケースが多いと考えられています。
- 脂肪肝
- 肝臓に30%以上の脂肪が蓄積した状態です。健康な人でも肝臓には3%の脂肪が貯まっています。脂肪肝は血液検査での発見が難しく、腹部エコー検査で診断されます。自覚症状があまりないため、症状が進行して肝臓の機能低下を招くことがあります。
- 胆のうポリープ
- 胆のうの内側にできる隆起性変化の総称です。成人の5~10%に胆のうポリープがあらわれています。40~50代の人に多くみられます。
- 胆石
- 肝臓から分泌される消化液の一種である胆汁が固まったものです。ほとんど症状があらわれないため「無症状胆石」と呼ばれる場合があります。しかし年に2~4%の頻度でなんらかの症状があらわれる可能性があります。
腹痛、発熱、黄疸などの症状が見られた場合、急性胆のう炎や総胆管結石などの合併症を発症しているおそれがあります。
- 水嚢胞性腫瘍
- 膵臓に嚢胞が発生する病気の総称です。治療の必要性がない良性のものがありますが、悪性化のリスクもあります。珍しい病気ではありません。高齢になるほど発生する確率が高くなります。
水嚢胞性腫瘍が悪性化をする前に発見することが大切ですので、定期的に検査することをおすすめします。
- 脾腫
- 脾臓が大きくなる状態です。軽度の脾腫は病気ではありませんが、脾腫の原因はさまざまで経過観察が必要となることもあります。感染症、腫瘍、貧血、うっ血肝、膠原病などが脾腫の原因として知られています。
- 腎腫瘍
- 腎血管筋脂肪腫は発生度の高い良性腫瘍です。基本的に経過観察をします。腎細胞がんは代表的な悪性腫瘍で、嚢胞の状態などを経過観察しながら治療を検討します。
- 腹部大動脈瘤
- 心臓には大動脈があり、全身へ血液を送り出しています。大動脈の壁が膨らんだ状態を大動脈瘤と呼びます。大きさが5cm程になるまでは経過観察します。
検査の流れは?
腹部エコー検査の所要時間はおよそ10~20分です。検査を受けるときは上半身は腹部を検査できるように衣服を胸の下あたりまでまくります。ズボンやスカート、下着は腰骨の位置まで下げます。下記の流れで検査は進みます。
- 仰向けになり、腹部にゼリーを塗る
- ゼリーを塗ったところに検査器具(プローブ)で音波を当てる
- 器具を押し当てたり、体の向きを変えたりしながら観察する
検査を受ける際の注意点は?
- 前日夜10時以降は飲食をしない
- 食べ物を消化するとき胆のうという臓器から胆汁が分泌されます。胆のうは胆汁を分泌すると小さくなってしまうため、検査時に胆のうの異常を発見できなくなります。消化中は腸の動きが活発になりガスが増え、検査で観察がしにくくなります。前日夜10時以降は飲食を控えてください。
- 検査当日の朝、食べ物は食べない
- 飲み物は水やお茶は少量なら飲んで大丈夫ですが、牛乳や砂糖の入った飲料水は控えます。
- 検査前はなるべくトイレに行かない
- 尿が溜まっていない状態の膀胱は小さく異常を発見しにくくなります。
- 服用中の薬は通常通り服用する
- 医師から服用中止の指示がない限りいつも通り薬を服用してください。自己判断で服用を中止しないようにしましょう。
おわりに:臓器の異常を発見する腹部エコー検査。前日から準備をしましょう
腹部エコー検査は健康診断などでも実施される検査です。前日の夜から飲食物摂取などについて注意点はありますので、医療機関の指示に従い準備をしてください。注意点を守り検査がスムーズに進むようにしましょう。
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