記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
2019/12/13
記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
子供は元気だから病気なんかめったにしない、と考えられていたのは今では昔のことで、近年の研究により、子供も大人と同じような病気にかかったり、子供特有の病気があったりすることがだんだんと知られてきました。
そのうちの1つが、子供に起こる「めまい」です。大人のめまいの原因と言えばメニエール病が多いですが、子供のめまいの原因のトップは違います。子供のめまいの原因について、詳しく見ていきましょう。
子供のめまいの原因として一番多いのは起立性調節障害と呼ばれるものです。英語では Orthoristic Dysregulation と言いますので、頭文字をとって「OD」と略することもあります。これは、骨や筋肉などのいわゆる大枠としての「身体」の発育に比べ、循環器系や自律神経などの内臓や神経系が司る「身体機能」の発育が未熟なため、急に立ち上がったときなどに脳や頭蓋への急速な血液供給が間に合わず、発症してしまうものです。
つまり、身体が大きくなる成長期に、身体の大きさに内分泌系の発達が追いつかないために起こる脳貧血状態である、と言えます。したがって、比較的身体の発育が良い、身長の高い子供に発症しやすい傾向があります。とくに、学童期である10~15歳ごろが多く、約5~10%もの子供が起立性調節障害を発症しているとされています。
症状としては「大症状」と「小症状」に分けられ、それぞれ以下のような状態が見られます。
とくに、立ち上がったときに目の前が真っ暗になったように感じる「眼前暗黒感」や、ぐらぐらとするめまいは特徴的な症状です。午前中は血圧が低下しているため発症しやすく、季節としては気温が上がってきて血圧が下がりやすくなる春から夏にかけて頻繁に起こりやすいとされています。
こうした症状は成長過程の中で一時的に起こるものですから、数年間は発作を繰り返すものの、身体機能(内分泌系や神経系など)が成長していくにしたがって、徐々に少なくなっていきます。しかし、一部の女児では成人した後も症状が残る場合があります。
基本的には健全な発育過程で起こる現象であり、疾患ではありませんので、軽症の場合には無治療で経過観察とすることが多いです。しかし、めまいの症状が強く出たり頻繁に出たりする場合は塩酸エチレフリン・メシル酸ジヒドロエルゴタミン・メチル硫酸アメジニウム・塩酸ミドドリンなど、血圧を上げる薬を投与することもあります。とくに、片頭痛を伴う場合はメシル酸ジヒドロエルゴタミンがより有効と考えられています。
子供のめまいの原因として、他にも小児良性発作性めまいという疾患が考えられます。これは「片頭痛に関連する周期性症候群」の1つに分類されていて、大人になると片頭痛に変化するケースが多い周期性・発作性の疾患です。この疾患の特徴は、以下のようになっています。
原因についてははっきりとしたことはわかっていませんが、ピアノの発表会など大きな舞台の前に緊張するなどの嫌なストレスや、遠足の前に興奮するなどの楽しさからくるストレスなどが考えられています。メニエール病などのよくあるめまいと違うのは、難聴や耳鳴りがないという点です。
この疾患はまだまだ国内での認知度が低いため、病院に行っても原因不明と診断されてしまうことが多いのですが、きちんとした診断や説明を受け、悪い疾患にかかっているわけではない、ということを理解するだけでも安心して症状が軽くなったり、場合によってはなくなったりすることがあります。
前述の起立性調節障害と同じように、基本的には成長とともに治ることが多い疾患ですから、不安なままで放置するのではなく、きちんと症状を見極めるとともに、必要なら医療機関を受診し、正しく対処することが大切です。
子供が強い腹痛やめまいなどの症状を訴えたら、まずは暗くて静かな場所で安静にさせてあげましょう。とくに、吐き気や嘔吐の症状があるときは、食事を無理に食べさせず、食べられるときに食べたいものを食べるだけで構いません。
もし、症状がそのまま落ち着いてくるようなら、十分休ませてあげるだけで大丈夫です。しかし、長く続く場合や、症状がひどい場合は、片頭痛の治療薬や点滴・鎮静剤などを使う必要がありますので、医療機関を受診しましょう。また、同じ症状を何度も繰り返す場合、他の疾患が隠れている可能性もありますので、一度病院で検査を行い、正しい対応や治療を行うことが重要です。
その他にも、以下のようなことが子供のめまいの原因となる可能性があります。
原因不明の吐き気が続いたり、なんとなくふらつくことが多くなって体育の授業が苦手になったりする、といった場合は、「脳腫瘍」の可能性も考え、脳波の検査やCT・MRIなどの画像検査を行いましょう。
また、大人の繰り返すめまいの代表的な原因である「メニエール病」は、以前は子供が発症することはまれだと考えられていました。しかし、最近では10歳以下の子供のメニエール病も時々は見られるようになってきましたので、決して子供には起こりにくいとは言い切れません。これは、子供を取り巻く生活環境の変化が一因ではないかとも考えられています。
このように、子供のめまいの原因として考えられるのは起立性調節障害以外にも、さまざまな疾患や症状が挙げられます。子供がめまいの症状を強く訴えた場合、あるいは何度も繰り返す場合は、耳鼻科(神経耳科)・小児科(小児神経)・内科(神経内科)など、神経関連の専門医の診察や検査を一度受けておくのが良いでしょう。
子供のめまいの原因として最も多いものは起立性調節障害です。これは、身体がぐんぐん成長していく時期に、内分泌系や神経系の発達が追いつかず、急に立ち上がったときに脳にうまく血液が流れない一種の脳貧血状態と言えます。
その他にも小児良性発作性めまいが考えられますが、この2つは基本的に成長とともに自然に治ります。ただし、症状が酷い場合は投薬治療や点滴などが必要ですので、一度医療機関を受診しましょう。