お餅をのどに詰まらせた!助けるために何をすればいい?

2019/12/29

山本 康博 先生

記事監修医師

MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長
東京大学医学部卒 医学博士
日本呼吸器学会認定呼吸器専門医
日本内科学会認定総合内科専門医
人間ドック学会認定医
難病指定医
Member of American College of Physicians

山本 康博 先生

お正月になると毎年のように、お餅をのどに詰まらせてしまう事故が報道されます。今回は、もしものときのために知っておきたいお餅をのどに詰まらせたときの適切な対処法について、安心して食べるためのコツと一緒にご紹介します。

冷凍宅配食の「ナッシュ」
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お餅をのどに詰まらせた!まず確認すべきことは?

お餅をのどに詰まらせてしまったときには、まず気道と食道、どちらにお餅を詰まらせているのか確認する必要があります。
以下のチェックポイントに当てはまっている場合は、お餅が気道を塞いでいる可能性が高いです。

気道にお餅が詰まっている人の特徴
  • お餅を詰まらせたと思われる直後から、言葉が出なくなり激しく咳き込んでいる
  • 苦しそうにもがいていて、顔色が青や紫色に変化し、意識がとびそうになっている

一方で、以下の特徴に当てはまる場合は、食道にお餅を詰まらせている可能性が高いです。

食道にお餅が詰まっている人の特徴
  • 苦しそうに咳き込んではいるが、呼吸は正常にできているようだ

ただし、どちらの場合ものどの詰まりが原因で声を出せない様子だとしたら窒息状態と判断できます。可能なら咳を続けさせて、異物除去のための対策を取ってください。

意識があるとき、ないときで次にすべきことが変わる!

お餅をのどに詰まらせ、窒息状態にある人には、速やかな応急処置が必要です。本人の意識の有無に合わせて、それぞれ以下いずれかの対処をしてください。

本人に意識がある場合

ハイムリック法で異物除去を試みる

お餅をのどに詰まらせている人を立たせるか座らせて、救護者は背後に回ります。

次に救護者の腕を患者の両脇から胸の方へ通し、救護者が患者を抱えるような姿勢をとって、体を密着させます。片手で患者のへその位置を確認し、もう片方の手を握りこぶしにして胃のあたり、上腹部に当てます。

そして、へその位置を確認した手を握りこぶしにし、手前上方に向けて素早く突き上げてください。何度か繰り返しても効果がない場合は、次の背部叩打法に移ります。

※ただし、意識がない人、妊婦、1歳未満の乳児にはできません。意識がない場合は、以下で紹介する心肺蘇生法を行ってください。

背部叩打法(はいぶとうだほう)で異物除去を試みる

お餅をのどに詰まらせている人を、横向きに寝かせます。救護者は手の付け根を患者の両肩甲骨の間に当てて、力強く連続して叩いてください。

なおこの方法は、患者を立たせた状態、座らせた状態のいずれでも可能です。意識はあるものの本人が起き上がれないようなら、最初から背部叩打法を試しましょう。

本人に意識がない場合

意識がない場合は、呼吸困難から心肺停止を起こしていると考えられます。意識がない、途中で反応がなくなった、ぐったりした場合には、以下手順で心肺蘇生法を行ってください。

  1. まずは周囲の人にも協力を仰ぎ、119番通報して救急車を呼ぶ
  2. 心臓マッサージを30回、人工呼吸を2回を1セットとして繰り返す
心臓マッサージの方法
  1. 患者の無念お真ん中に、両手の付け根を重ねて置く。そのまま患者の胸が5cm沈むくらいまで、垂直に押し下げる
  2. この動きを1分間に約100回のペースで、断続的に30回続ける
人工呼吸の方法
  1. 片手で患者のおでこを押さえ、もう片方の手で患者の顎を持ち上げ気道を確保する。さらに鼻を軽くつまみ、空気が漏れない状態にする
  2. 患者の口に救護者の口を大きく覆いかぶせるようにしてつけて、1回あたり1秒くらいかけてゆっくりと、患者の胸が膨らむ程度の空気を吹き込む

なお、心臓マッサージの途中で患者ののどに詰まっているお餅が見えたときは、患者の体を横向きにし、交差させた親指と人差し指を口の中に入れます。親指を上の歯に、人差し指を下の歯に当てた状態からひねるようにして患者の口を開き、もう片方の手の人差し指にガーゼを巻いてのどに入れ、取り除いてください。

掃除機で吸い取ってもいい?

すきま掃除用のノズルを喉の奥に差し込むと、掃除機でのどに詰まったお餅を吸い出すことは理論上可能です。ただし、差し込みが不十分だと誤って舌や口内の組織を吸い込む可能性があり、かえって危険です。自己判断で行うのはリスクが伴いますのでやめておきましょう。

餅を詰まらせてしまうのはどうして?

お餅がのどに詰まる原因としては、以下が挙げられます。

  • 食事中、または噛んでいる間に冷めて粘度を増したお餅が、のどにくっついてしまう
  • 噛む力、唾液の分泌量、飲み込む力のいずれも不十分であるため
  • お餅がのどに詰まりそうになったときに、反射的に咳き込む機能が弱いため
  • 早食い、詰め込み食いの癖があり、無意識のうちにお餅を詰まらせてしまう

どうすれば安心して食べられる?

お餅をのどに詰まらせず、おいしくいただくために、以下のポイントに注意しましょう。

  • あらかじめ、お餅を噛みやすい・飲み込みやすい大きさに切っておく
  • ゆっくりでいいのでしっかり噛み、唾液とよく混ぜて粘り気を少なくする
  • それでも飲み込みにくいようなら、お茶や水でのどを湿らせてから飲み込む
  • 気道が開いてしまうのを防ぐため、お餅を食べながらのおしゃべりは控える
  • お餅がのどに入ってしまわないよう、椅子に深く腰掛けあごを引いた姿勢で食事する

おわりに:お餅をのどに詰まらせてしまったら、意識を確認して応急処置を!

年齢を重ね、噛む力・唾液の分泌量・飲み込む力が弱ってくると、どうしてもお餅をのどに詰まらせやすくなります。もし、家族や友人・知人がお餅を詰まらせてしまったら、まずは意識の有無を確認してください。そのうえで、意識状態に合った応急処置をする必要があります。食べる前にひと工夫して、お餅をおいしくいただきましょう。

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