記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
2023/11/15
記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
アキレス腱とは足首にある腱であり、この腱が切れてしまうと歩けなくなってしまいます。もともとは激しいスポーツをしている人に多かったのですが、最近は中高年の受傷者が増えているといわれています。この記事では、アキレス腱断裂が起こる原因と治療法、予防対策について解説しています。
アキレス腱とは足のかかとの腱(けん)のことです。ギリシャ神話の不死身の英雄アキレウスの唯一の弱点であり、人体の中でも最も大きな腱で、ふくらはぎの後ろ側にある「腓腹筋」「ヒラメ筋」の2つが下部で合流してアキレス腱となっています。約1トンの牽引力にも耐えられるほどの強固な構造をしているのが特徴です。
アキレス腱は、おもに足関節の底屈(ていくつ:関節を足の裏の方向に折り曲げるような向きの運動のこと)の動きを司っています。この腱が、何らかの動作の際に切れることを「アキレス腱断裂」と言います。
以前は10~20代の若い世代に多くみられましたが、最近は30〜50代のスポーツ愛好家や久々にスポーツをした人の発症が多くみられるといわれています。踏み込み・ジャンプ・着地動作などの際に「かかとを蹴られた」「ボールがかかとに当たった」「かかとでブチッと音がした」という感覚を覚える人が多く、その後、歩行に障害をきたします。
アキレス腱断裂は、前述のように踏み込みやダッシュ、ジャンプなどの動作によってふくらはぎの「下腿三頭筋」が急激に収縮したり、着地動作などで急激に筋肉が伸ばされたりしたときに発生しやすいようです。このような動作で腱が切れてしまうのは、腱の退行性変性(いわゆる老化現象)が基盤になっていると考えられています。
30歳頃からアキレス腱の退行性変性が進行し、徐々に腱の柔軟性が低下していきます。また、「体重が増えて腱への負担が増える」「仕事や家事・子育てなどで無理な体勢を取ることが増える」「筋力が低下する」といったことも、アキレス腱断裂の原因として挙げられます。年齢が高い人にアキレス腱断裂が起こりしやすいのは、これらが関係しています。
最近はフットサル人口が増えたため、フットサルで受傷する人も増えてきているといわれています。なお、バレーボールの場合、ジャンプ時の受傷はほとんどなく、レシーブで前のボールを取りに行こうとして地面を蹴る動作をしたときや、移動してトスを行う動作のときに多く発生しています。
アキレス腱断裂が起こった場合、治療には手術療法と保存療法(非手術療法)の2つがありますが、いずれも治療期間に大きな差はありません。
どちらの治療法であっても、装具が取れた後は両足つま先立ちの練習や、軽いジョギングなどのリハビリを行います。ダッシュなど、受傷の原因となった動作を行うときには再断裂が起こらないよう十分注意しなくてはならず、こうした動作を行う際はリハビリテーションの最終段階で行います。
また、ギプスや装具が外れて1カ月以内は、再断裂が起こりやすい期間ですので注意が必要です。とくに、1週間以内はこれまでギプスで固定されていたものが外れ、行動範囲も広がったことにより、転倒したり階段を踏み外したりして再び断裂してしまうことが多いので注意しましょう。日常生活の動作に十分注意していれば、再断裂は防げます。
アキレス腱断裂を予防するには、とっさのときにアキレス腱だけに大きな負担がかからないよう、全身の筋肉の柔軟性を高めることが大切です。スポーツをする前は、アキレス腱だけでなく頚椎や四肢、全身のストレッチを入念に行いましょう。また、動脈硬化や痛風、高脂血症なども腱の変性につながるといわれていますので、生活習慣病そのものの治療も、予防としておすすめです。毎日の生活習慣にも気をつけましょう。
アキレス腱はふくらはぎの後ろの「腓腹筋」「ヒラメ筋」が合流したもので、約1トンの牽引力にも耐えられる強度を持つ、人体で最も大きな腱です。この腱の断裂は、前十字靭帯断裂と並び、スポーツ外傷のなかでは重症の部類に入ります。治療には手術療法と保存療法の2つがあり、いずれも約半年〜1年程度の治療期間を要します。予防のためにも、再断裂防止のためにも、スポーツ前には入念なストレッチを行いましょう。