記事監修医師
東京大学医学部卒 呼吸器内科医
山本 康博 先生
2020/4/14
記事監修医師
東京大学医学部卒 呼吸器内科医
山本 康博 先生
アキレス腱とは足首にある筋のことを指し、この腱が切れてしまうと歩けなくなってしまいますので注意が必要です。もともとは激しいスポーツをしている人に受傷者が多かったのですが、近年では中高年層の受傷者が増えています。
この記事では、アキレス腱断裂とはどんな仕組みで起こるのか、その原因と治療法を中心にご紹介します。最後に予防法もご紹介していますので、ぜひ実践してみてください。
アキレス腱とは足のかかとの腱(けん)のことで、ギリシャ神話では「不死身の英雄アキレウスの唯一の弱点であった」と言われています。人体の中でも最も大きな腱で、ふくらはぎの後ろ側にある「腓腹筋」「ヒラメ筋」の2つが下部で合流してアキレス腱となっています。約1トンの牽引力にも耐えられるほどの強固な構造をしているのが特徴です。
アキレス腱は主に足関節の底屈(ていくつ:関節を足の裏の方向に折り曲げるような向きの運動のこと)の動きを司っています。この腱がさまざまな動作で切れるのがアキレス腱断裂です。
以前は10~20代の若い世代に多くみられましたが、最近は30〜50代のスポーツ愛好家や、久々にスポーツをした人が発症しやすいと言われています。特に、踏み込み・ジャンプ・着地動作などの際に「かかとを蹴られた」「ボールがかかとに当たった」「かかとでブチッと音がした」という感覚を覚える人が多く、その後、歩行に障害をきたします。
アキレス腱断裂は、前述のように踏み込みやダッシュ、ジャンプなどの動作によってふくらはぎの「下腿三頭筋」が急激に収縮したり、着地動作などで急激に筋肉が伸ばされたりしたときに発生しやすいようです。このような動作で腱が切れてしまうのは、腱の退行性変性(いわゆる老化現象)が基盤になっていると考えられています。
30歳ごろからアキレス腱の退行性変性が進行していき、徐々に腱の柔軟性が低下していきます。また、体重が増えて腱への負担が増えたり、仕事や家事・子育てなどで無理な体勢を取ることが増えたり、筋力が低下したりといったこともアキレス腱断裂の原因として挙げられます。年齢が高い人がアキレス腱を断裂しやすいのは、これが理由です。
また、最近はフットサル人口が増えたため、フットサルで受傷する人も増えてきています。なお、バレーボールの場合、ジャンプ時の受傷はほとんどなく、主にレシーブで前のボールを取りに行こうとして地面を蹴る動作や、移動してトスを行う動作のときに多く発生しています。
アキレス腱断裂が起こった場合、治療には手術療法と保存療法(非手術療法)の2つがありますが、いずれも治療期間に大きな差はありません。
どちらの治療法であっても、装具が取れた後は両足つま先立ちの練習や、軽いジョギングなどのリハビリを行います。ダッシュなど、受傷の原因となった動作を行うときには再断裂が起こらないよう十分注意しなくてはならず、こうした動作を行う際はリハビリテーションの最終段階で行います。
また、ギプスや装具が外れて1カ月以内は、再断裂が起こりやすい期間ですので注意が必要です。とくに、1週間以内はこれまでギプスで固定されていたものが外れ、行動範囲も広がったことにより、転倒したり階段を踏み外したりして再び断裂してしまうことが多いのです。日常生活の動作に十分注意していれば、再断裂は防げます。
スポーツの前には、アキレス腱だけでなく頚椎や四肢、全身のストレッチを入念に行いましょう。とっさのときに、アキレス腱だけにすべての力がかからないよう、全身の筋肉に柔軟性が必要です。また、動脈硬化や痛風、高脂血症なども腱の変性につながるとされていますので、生活習慣病そのものの治療も予防として効果的です。ぜひ、日頃からの生活習慣にも気をつけましょう。
アキレス腱はふくらはぎの後ろの「腓腹筋」「ヒラメ筋」が合流したもので、約1トンの牽引力にも耐えられる強度を持つ、人体で最も大きな腱です。そのため、この腱の断裂は前十字靭帯断裂と並び、スポーツ外傷の中では最も重症の部類に入ります。
治療には手術療法と保存療法の2つがあり、いずれも約半年〜1年程度の治療期間を要します。予防のためにも、再断裂防止のためにも、スポーツ前には入念なストレッチを行いましょう。