記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
2020/4/28
記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
薬局やドラッグストアなどで売られている商品のパッケージを確認すると、「医薬品」「医薬部外品」「化粧品」などと記載されているものがあります。口紅やファンデーションのように、明らかに化粧品と分かるものはともかく、石鹸やヘアケア用品などは医薬部外品と表記されていることも、化粧品と表記されていることもあります。この記事では、これらの表記の違いがどのように定められているのかを解説します。
「医薬品」「医薬部外品」「化粧品」の表記を決めているのは、薬機法と呼ばれる法律です。正式名称は「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律」で、名前の通り医薬品や医療機器などの品質と有効性、安全性を確保することを目的として製造・表示・販売・流通・広告などを細かく規定した法律です。そのほか、「保健衛生上の危害の発生及び拡大を防止する」「指定薬物を規制する」「医薬品、医療機器及び再生医療などの製品の研究開発を促進する」といった目的もあります。
薬機法はもともと「薬事法」という法律が改正されたもので、2014年11月の改正時に、その内容とともに名称も変更されました。医薬品や医療機器を取り巻く環境の変化や、再生医療の実用化に向けた動きに対応するための改正で、具体的には「医療機器の承認等について、その特性を踏まえた制度の創設」「再生医療などの製品の新設」「安全性に関する規制の強化」の3つが重点的に改正されています。薬機法という名前から、医薬品や医療機器に限った法律かと思いがちですが、医薬部外品や化粧品の定義、健康食品の規制などにも関わっています。
医師の処方や薬剤師の説明を受けてようやく購入できる医薬品とは異なり、健康食品やサプリメントは「食品」と分類されています。健康食品やサプリメントを規定する法律は「食品衛生法」で、医薬品や医薬部外品のように効能や効果の表示はできません。
このため、食品衛生法では「保健機能食品」という制度を設け、特定保健機能食品(略称「トクホ」)と栄養機能食品の区分を設定しています。この制度により、特定保健用食品では高コレステロール血症や高血圧などのリスクを低減させる効果、お腹の調子を整える効果など、栄養機能食品ではミネラル類やビタミン類など、定められた栄養素の機能を表示できるようになりました。
医薬品とは、販売の際に医師の処方や薬剤師の助言が必要なものです。効果・効能は医師の処方が必要な「医療用医薬品」が最も高いのですが、言い換えれば間違った使い方をしたときに副作用が生じるリスクも高いです。このため、必要な人が必要な分だけ購入できるよう、医師の診断と処方がなければ購入できないようになっています。
一方、医師の処方がなくても購入できる「OTC医薬品」は、薬局やドラッグストアで市販されています。OTC医薬品はさらに「要指導医薬品」と「一般用医薬品(第1類〜第3類)」に細分化されています。このうち、「要指導医薬品」は薬剤師による対面・書面での情報提供が、「第1類医薬品」には薬剤師による書面での情報提供が義務づけられています。
このような義務付けがされているのは、医療用医薬品ほどではないものの、効果が高い分、間違った使い方をしたときの副作用のリスクが高いからです。ただし、第2類医薬品の場合は販売者からの説明は努力義務とされ、第3類医薬品の場合は法的に説明の規定はありません。ですから、第2類医薬品と第3類医薬品に関しては、必ずしも説明を受けなくても消費者が自由に選び、購入できます。
例えば、肌の荒れやかさつきを保護するための物質として具体的に医療用医薬品とOTC医薬品の違いを挙げると、以下のようになります。
医薬部外品は、販売の際に医師の処方箋や薬剤師・登録販売者の助言が必要なく、自由に購入できるものです。医薬品よりも人体に及ぼす効果・作用がおだやかなものを指しますが、化粧品よりは効果が高いものと言えます。
医薬部外品には用途が規定されており、以下のいずれかの用途で使うものだけが「医薬部外品」と表示できます。
特に、1の用途のうち整腸剤・ビタミン剤・のど清涼剤など、厚生労働大臣が指定した一部のものは「指定医薬部外品」と呼ばれ、4の用途のうち殺虫剤・殺鼠剤など、厚生労働大臣が指定した一部のものは「防除用医薬部外品」と呼ばれることがあります。また、医薬部外品であるスキンケア製品を通常の化粧品と区別する意味で「薬用化粧品(薬用化粧水、薬用シャンプーなど)」と呼ぶこともあります。
化粧品は、医薬部外品よりもさらに作用が穏やかなもので、「人の体を清潔にし、美化し、魅力を増し、容貌を変え、または皮膚や毛髪を健やかに保つため」に使われます。薬局やドラッグストアに限らず、販売している小売店であれば誰でも自由に購入でき、スキンケア用品・ヘアケア用品・メイクアップ用品・歯磨き剤などが該当します。
スキンケア製品には、医薬部外品と化粧品の2種類があります。一見、その表示以外に大きな違いがあるように見えませんが、「医薬部外品」と表示するためには厚生労働大臣の承認が必要で、そのため表示できる効能・効果の範囲も異なります。たとえば、医薬部外品は以下のような表示が可能です。
このように具体的な表示ができるのは、医薬部外品の場合、厚生労働大臣が効能・効果を認めた有効成分が一定の濃度で配合されているためです。一方、化粧品で同様の効果を記載しようとすると、以下のような表示になります。
このように、化粧品になるとより穏やかな表示になることがわかります。もちろん、医薬部外品でも化粧品でも「ニキビが治る」「シミが消える」「シワがなくなる」など、まるで劇的な治療効果があるかのような表現をすることは禁じられています。
医薬品と医薬部外品、化粧品の違いを簡単にまとめると、効果や副作用が高い順になっている、と言えます。効果が高い分副作用のリスクも高い医薬品は、基本的に医師の診断と処方や薬剤師・登録販売者の助言がなくては購入できません。
一方、医薬部外品や化粧品は効果や作用がおだやかな分、処方箋や助言がなくても自由に購入できますが、医薬部外品は厚生労働大臣が効果・効能を認めた成分に関して詳細な表示が可能です。