記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
2020/5/23
記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
慢性的な低血圧は、病院などで計測した時にも正常範囲より低いのが特徴ですが、それ以外にも一時的な低血圧がめまいやふらつきを引き起こすことがあります。この記事では、一時的な低血圧のひとつである起立性低血圧について解説します。
起立性低血圧とは、動作を起こす前と起こした後の収縮期血圧(最高血圧)が20mmHg以上、または拡張期血圧(最低血圧)が10〜15mmHg以上低くなるもので、高血圧の人でも起こることがあります。「脳貧血」の一種で、安静の状態から起き上がったり立ち上がったりしたときに一時的に血圧が急激に下がり、脳に必要なだけの血液が回らず、酸素不足になってしまうために起こります。罹患している難病などの影響を受けたり、一時的に自律神経の調節がうまくいかなかったりすることで起こる場合もあります。
起立性低血圧でみられる症状として、以下のようなものがあります。
血圧が低下し始めると冷や汗が出ることがあるため、そのときに気づけばその場にしゃがむなどして転倒を防ぐことができます。ただ、あくまでも一時的な低血圧なので、病院で検査をしても貧血の診断は出ず、血圧を検査しても正常血圧で日常生活にも支障が出ない場合が多いです。
起立性低血圧の原因として、特発性と二次性の2つが考えられます。
起立性低血圧のうち、原因となる疾患が明らかでなく、何らかの神経系の障害によって起こるとされるものです。めまいや立ちくらみ、嘔吐などの脳症状を起こし、症状がひどい場合には失神することもあります。また、体重が減少するにつれて起立性低血圧の程度も強くなることも特徴です。
特発性起立性低血圧は、起立性低血圧の約20%を占めるとされ、よく思春期に学校の朝礼などで倒れる子どもの多くはこの血圧調節障害による特発性起立性低血圧と考えられています。このため、過度に心配する必要はありませんが、あまりにも頻繁に起こる場合は、てんかんや心疾患が原因で発症している恐れもあります。一度、脳波や心電図などの精密検査を受けるとよいでしょう。
起立性低血圧のうち、原因となる疾患が明らかなものです。起立性低血圧の約80%を占めています。原因疾患は糖尿病が最も多く、そのほか内分泌疾患、心臓弁膜症、心筋症などが隠れていることがあります。また、服用している薬(精神安定剤・精神刺激剤・レボドパなどのパーキンソン病治療薬・降圧剤など)が影響する場合もあります。
立ちくらみやめまいが頻繁に起こったり、その症状がひどく出たりしてしまう場合、起立性低血圧かどうかを明らかにするために早めに病院を受診しましょう。検査の結果、起立性低血圧と判明した場合、原因が特定できれば、その原因を取り除くための治療が必要です。また、薬剤の影響が原因と考えられる場合は、薬の変更で症状がおさまることもあります。薬を飲み始めてから明らかに起立性低血圧の症状が増えた場合は、かかりつけの薬剤師に相談してみるのも一案です。
起立性低血圧の治療では、生活習慣の見直しも重要と考えられています。規則正しい生活リズムを作り、睡眠不足やストレス、過度の飲酒などを極力避けましょう。また、十分な量の水分や食塩を摂取し、血管内の血液量や血圧を正常範囲内に保てるようにすることも大切です。突然動くときに毎回立ちくらみやめまいが起こるなら、動作を意識的にゆっくり行うのが良いでしょう。弾性ストッキングを使って、下肢に血液が溜まるのを避け、上半身へ血液が循環するのを助けるのも有効です。
まずはこのような日常的な対処法で解決できるよう指導や治療を行いますが、これらの方法で症状が良くならない場合は、薬物療法で血液量を増やしたり、血圧を上げたりする方法を検討することもあります。
起立性低血圧の治療では、その症状によって日常生活に大きな支障をきたすとき、頻繁に転倒や失神がみられるときなどに薬物療法が選択されることもあります。具体的には、以下のような薬剤が使われます。
そのほか、自律神経を整え、体質改善を促すことを目的として漢方薬が処方されることもあります。いずれの場合も、処方にあたっては医師の診断が必要です。
起立性低血圧とは、起き上がったり立ち上がったりするときに一時的に血圧が下がって貧血に似た症状を引き起こすもので、思春期の血圧調節障害などを含む原因がはっきりしないものが2割、原因となる疾患が特定できるものが8割を占めます。
原因となる疾患がある場合は疾患を治療しますが、疾患がない場合は生活習慣の指導をメインに、症状がひどい場合には薬物療法を行うこともあります。いずれの場合も、医師の指導を基に行うことが大切です。