黒色表皮腫の原因は肥満!?どんな症状に気をつければいい?

2017/2/20 記事改定日: 2019/8/6
記事改定回数:4回

佐藤 典宏 先生

記事監修医師

産業医科大学第1外科

佐藤 典宏 先生

黒色表皮腫(こくしょくひょうひしゅ)は、脇の下、そけい部、頸部周辺に発生する、皮膚が黒ずんでごわごわしてくる角化症(皮膚の最表層の部分が厚くなる病気)で、良性型、悪性型、仮性型の黒色表皮腫の3種類に分けられます。
この記事では、黒色表皮腫の特徴や症状、原因について解説します。

黒色表皮腫の症状の特徴とは?

黒色表皮腫のほとんどは深刻な疾患の徴候でないことが多く、原因疾患が治療されると同時に時間とともに消えることがほとんどです。
遺伝による黒色表皮腫の皮疹は徐々に大きくなりますが、最終的に成長する前の状態になるか消えてしまうことが多いため、心配しすぎる必要はないと考えられます。

ただ、悪性の場合はがんではないかどうか注意する必要があります。悪性型黒色表皮腫に合併する悪性腫瘍の大部分は腺(せん)がんであり、なかでも胃がんが多くみられます

悪性腫瘍の場合、皮疹(ひしん)が先行する場合と、同時に発生する場合の両方があります。
腫瘍を取り除ければ黒色表皮腫は消えるかもしれませんが、残念なことに黒色表皮腫を引き起こすがんのタイプは急速に広がる傾向があるため、基本的に治癒は難しいとされています。

関連記事:悪性腫瘍(がん)と良性腫瘍って、何が違うの!?

代表的な症状

黒色表皮腫を発症すると、皮膚に黒褐色の(それ以外の場合もある)色素沈着と角質の増殖が見られます。症状は身体中に発生する可能性がありますが、特に以下の場所に多くみられます。

  • 乳房下部
  • 腋窩(えきか:わきの下のこと)
  • うなじ
  • 腕の関節の屈曲部
  • 膝関節の後面
  • 肛門の周囲

患部周辺には乳頭腫(にゅうとうしゅ)と呼ばれる多数の盛り上がりと、小さな肌色または色素が沈着した疣贅(いぼ)が存在することがあります。
また、全身の皮膚にびまん性や褐色~黒褐色の色素沈着がみられたり、毛髪が薄くなる、毛が抜けやすくなるといった症状も現れます。

肥満が原因で黒色表皮腫になるって本当?

黒色表皮腫の原因は、その種類によって異なります。
良性型の黒色表皮腫は内分泌障害や先天異常によって、悪性型は内臓の悪性腫瘍によって、仮性型の場合は肥満や異常なホルモン値が原因で生じることが多いです。

肥満の人の場合、血中のインスリンが正常値よりも高い状態(インスリン抵抗性)になることが原因で血液中のインスリン濃度が高くなり、その状態が皮膚細胞に影響を及ぼすために黒色表皮腫が生じると考えられています。
また、インスリン抵抗性は2型糖尿病の原因となることもあるので、黒色表皮腫は糖尿病の徴候として現われることもあります。

関連記事:膵臓から分泌される「インスリン」ってどんな働きをしているの?

肥満による黒色表皮腫の治療法

上の項目で説明したように、黒色表皮腫は原因となっている病気を治すことで治療することができます。そのため、肥満が原因で生じた黒色表皮腫に適した治療法は体重を減らすことです。医師に相談した上で、外観の治療と同時に減量に取り組んでみてください。

現在のところ皮疹そのものを取り除く方法はありませんが、皮膚科でクリームや錠剤などの肌の外観を改善する治療を受けることができます。
黒色表皮腫自体は基本的には無害ですが、がんや糖尿病が隠れている可能性もあるので、身体に症状があらわれた場合はすぐに皮膚科専門医の診察を受けましょう。

子供の皮膚の黒ずみは、糖尿病のサインのことも

子供の2型糖尿病は、黒色表皮腫を合併しやすいことが知られています。
近年、日本でも肥満の子供が増えており、9~17歳の10%が肥満であるとのデータもあります。それに伴って2型糖尿病を罹患する子供もかつてよりは増加しており、年間で200~250人が新たに2型糖尿病と診断されています。

2型糖尿病は進行するまで自覚症状がないことが多く、発見が遅れるケースや見過ごされているケースが非常に多い病気です。
肥満傾向の子供で、首や脇、肘、膝などの皮膚に黒ずみが目立つような場合には早めに病院を受診して検査を受けることをおすすめします。

関連記事:子供の糖尿病、どんな症状が出る? 遺伝することはある?

子供の肥満の基準

子供の肥満は、成人に対するBMIのように「肥満度」という指標を算出して評価されます。
「肥満度」は、「(実測体重―標準体重)/標準体重×100(%)」の式で算出されます。
つまり、「肥満度」は実測体重が標準体重より何%重いのかを示した数値です。

幼児では、この数値が15%以上は太り気味、20%以上はやや太りすぎ、30%以上は太りすぎと評価されます。一方、小学生以降では20%以上を軽度肥満、30%以上を中等度肥満、50%以上を高度肥満と評価します。

なお、標準体重は母子手帳や学校保健統計サイトなどに記載されていますので、算出する際に身長や年齢などから調べてみましょう。

近年、子供の肥満が深刻化しており、糖尿病などの肥満による生活習慣病を発症する子供が増えています。また、子供の頃に肥満になると将来的に様々な生活習慣病を発症するリスクが高くなるので、日頃から肥満度をチェックし、太り気味である場合には食生活や運動習慣を改善するような生活づくりを心がけましょう。

おわりに:皮膚の変化に気づいたら、できるだけ早く病院に行こう

肥満や糖尿病が原因となって生じるケースもある黒色表皮腫。基本的には問題が無いことが多いものの、中にはがんになる危険性が高い場合もあります。
また、2型糖尿病の子供の大半に黒色表皮腫がみられるといわれています。肥満気味の子供の皮膚に、黒ずみや多数の盛り上がり、皮膚表面が厚くなっているなどの症状が見られたら、できるだけ早く病院で検査を受けましょう。

関連記事

この記事に含まれるキーワード

肥満(82) 黒色表皮腫(1) がん(94) 皮膚(20)