自宅で治療やケアが受けられる「在宅医療」とは

2020/7/4

山本 康博 先生

記事監修医師

MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長
東京大学医学部卒 医学博士
日本呼吸器学会認定呼吸器専門医
日本内科学会認定総合内科専門医
人間ドック学会認定医
難病指定医
Member of American College of Physicians

山本 康博 先生

医療機関の受診が必要なのに通院が難しい場合があります。そんな中、自宅で診療や処置を受けられる「在宅医療」は介護や高齢者の医療ケアなどでニーズが高まっています。この記事では在宅医療について、対象者や在宅医療のメリット・デメリットなどを紹介します。

冷凍宅配食の「ナッシュ」
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在宅医療とは

在宅医療とは、通院が困難である場合に、自宅などの住み慣れた場所で、かかりつけ医の訪問による診療や治療を受けることです。以前は治療のために病院へ行く必要がありましたが、現在は医療技術や医療機器が発展し、患者さんの自宅などでも必要な処置が受けられるケースが増えてきました。

在宅医療では、訪問診療と往診を組み合わせて24時間体制で患者さんをサポートします。在宅医療を受けながら、病院での治療や検査を受けることもできます。

訪問診療
患者さんの状態に基づき、診療計画を立てて定期的に自宅などを訪問し、治療や診療の医療的管理を行う。頻度は患者さんによって異なるが、1~2週間に一度など。
往診
患者さんの求めに応じて、自宅などを訪問して治療や診療を行う。往診を求める理由は体調不良、症状の急変など。

訪問診療と往診の違いは?

訪問診療と往診では費用が異なり、下記のような違いがあります。

訪問診療
概要:診療計画をもとに医師が定期的に訪問
回数:基本的に週3回まで(疾患や病状によって変化)
往診
概要:患者さんの求めによって訪問
回数:制限なし

在宅医療を受けられる人は?

在宅医療は通院が困難な患者さんを対象としています対象者は大きく分けて三群に分けられます。下記の三群の患者さんたちは比較的病状が安定している場合がみられますが、通院するには虚弱であることや病気が重度であること、本人が自宅での治療を希望していることなどを総合的に判断して決定されます。

①日常生活の行動性が低下した高齢者
寝たきりなど、日常生活を送る上で自分で行動することに困難がある患者
小児・若年の障がい者
子供や若者で、神経難病や外傷後遺症を患っている患者
悪性疾患末期の患者
がんなどの悪性疾患末期にあり、通院困難や自宅での治療を希望している患者

在宅医療に関わる人は?

在宅医療は、医師、訪問看護師、薬剤師、歯科医師、栄養士、理学療法士など医療関係者がチーム体制をとり、患者さんの治療やケアの計画を立てて取り組む治療です。それぞれの医療関係者が下記のような治療に当たります。

医師
定期的に患者さんの全身状態や疾患を診療して治療を行います。必要に応じて医療関係者に指示を出します。
訪問看護師
在宅患者さんのケアを実際に行います。
薬剤師
在宅患者さんの服薬において、用法用量を守って治療を進められているか、薬の飲み合わせや副作用の問題がないかなどを確認し、薬剤管理指導を行います。
歯科医師
口腔ケアを実施して口腔内を清潔に保ち、嚥下障害や誤嚥性肺炎の予防をします。
栄養士
在宅患者さんに適した栄養指導を行い、栄養障害を防ぎます。在宅医療の患者さんでは、嚥下障害などで栄養障害を引き起こしていることも多く、栄養士による栄養管理は大切です。
理学療法士
座る、立つ、歩くなどの基本動作能力の回復や維持、障害悪化の予防を目指します。運動療法や物理療法で、在宅患者さんの自立した日常生活を目指します。

在宅医療のメリット・デメリットは?

在宅医療を希望する場合、在宅医療が持つメリットとデメリットの両方を理解してから判断することをおすすめします。

在宅医療のメリット

住み慣れた環境で治療を受けられる
入院での共同生活とは異なり、患者さんにとって住み慣れた自宅などで治療を受けられます。リラックスした環境で、ストレス軽減が期待されます。家族や友人との距離も近くなるので、安心感を得られる患者さんもいます
入院生活の制限がなくなる
病院では消灯時間などの制限がありますが、在宅医療ではそういった制限がなくなるのも特徴です。食事も病院食以外を食べられるなど、入院よりも自由を感じられる患者さんがいます

在宅医療のデメリット

自宅にたくさんの人が訪問する
医師のほか、看護師や薬剤師など多くのい医療係者が頻繁に訪問します。同居している家族などに相談して在宅医療を検討しましょう
急変時の対応
病院に入院していると、急変したときにナースコールを押して医師や看護師をすぐに呼ぶことができます。しかし、在宅医療では医師がかけつけるまでにある程度時間がかかります。在宅医療は24時間体制をとっていることがありますが、夜間の電話対応などについて確認しておくと安心です。急変したときのことを考慮し、準備を整えておくことも大事なことです。
在宅医療を受けられない場合がある
MRIや造影剤を使用する特殊な検査、抗がん剤の点滴治療や放射線治療など、在宅での治療が難しいと判断される治療があります

在宅医療にかかる費用の目安は?

一般的には、在宅医療は外来通院と比較すると高額に、入院治療と比較すると低額になる傾向があります。

75歳以上の在宅患者さんの一例

月6,000円程度(1割負担想定、※健康保険の種類や質秒によって変わります)かかります。さらに、検査料や処方箋の料金が別途加算されます。臨時で行われる往診は別途加算されます。

通常は月額12,000円が上限額となります。高額医療費という制度があります。費用に不安や疑問がある場合は、病院の患者相談室、地域包括支援センター、かかりつけ医などに相談しましょう。

在宅医療を受けるには?

在宅医療を受けるためには手続きなどが必要となります。まずは自宅などに訪問診療、往診してくれる医師を見つけましょう。

通院している病院にかかりつけ医がいる場合
かかりつけ医にご相談ください。
かかりつけ医がいない場合
訪問診療をお願いしたい医療機関に相談してください。

おわりに:在宅医療はメリットとデメリットを把握してから検討しましょう

在宅医療には慣れた環境で治療を受けられるなどのメリットがあります。しかし病状や必要な治療にとっては通院や入院での治療の方が適しています。在宅医療を希望したい場合は担当の医師や家族などを相談しながら検討するのがおすすめです。

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