オフィスや室内の作業場の熱中症は意外と多い?予防のためにできる対策は?

2020/8/1

山本 康博 先生

記事監修医師

東京大学医学部卒 呼吸器内科医

山本 康博 先生

熱中症は、屋外だけで発症するものではありません。気温・湿度が高くなる季節には、本来リスクが低いとされるオフィスや屋内の作業場でも熱中症を発症する可能性があります。

今回は、オフィスで熱中症が起こる原因について解説します。個人での対策、会社全体での対策が必要になりますので、この機会にきちんと理解しておきましょう。

屋内で熱中症になる人はどれくらいいるの?

総務省発表の「熱中症による救急搬送者の内訳(平成25~平成30年合計)発生場所別」を参考に、熱中症で救急搬送された人の発生場所別の割合を見てみると、以下のようになります。

熱中症による救急搬送者の内訳(平成25~平成30年合計)発生場所別

住居
39.4%
道路
13.4%
不特定者が出入りする場所の屋外部分
13.1%
仕事場(道路工事現場、工場、作業所など)
10.9%
不特定者が出入りする場所の屋内部分
8.9%
教育機関
6.9%
仕事場(田畑、森林、海、川など)
2.3%

上記の情報だけで正確な数字を導き出すことはできませんが、熱中症になった人の4割程度が、住居や屋内作業場など「屋内の職場」から救急搬送されていることが想像できるでしょう。

熱中症は直射日光の当たる屋外で発症しやすいことは確かですが、室温・湿度管理や水分補給がおろそかになってしまえば、オフィスや屋内の作業場でも熱中症になる可能性はあります。

屋内で熱中症が発生する原因で多いものは?

熱中症は、「環境」「体の状態」「そのときのどのような行動をとっていたか」という3つの要因が複合的に絡み合うことで引き起こされます。

屋内での熱中症の原因のおもな具体例としては、以下が考えられます。

屋内での熱中症の「環境要因」

  • 気温と湿度が高くなっていた
  • 窓や出入り口などから、直射日光が差し込み続けていた
  • 閉め切っていて風が入り込まない環境で、換気をしていなかった
  • エアコンや扇風機などを使っていないため、空気が還流していなかった
  • 季節の変わり目で急激に気温が変化したが、油断して室温管理を怠ってしまった
  • 猛暑で気温が急上昇し、室温管理が追いつかなかった

屋内での熱中症の「体の状態」に関する要因

  • 熱に弱い(子供・高齢者・肥満の人など)
  • 生活習慣病などの持病がある、または特定の薬を服用していた
  • 下痢や二日酔い、インフルエンザなどで、もともと脱水状態だった
  • 寝不足や疲労で、体温調節機能が一時的に低下していた
  • 低栄養状態で体力が低下していた など

屋内での熱中症の「行動要因」

  • 慣れない作業・労働や激しい運動をしていた
  • 長時間ほとんど水分補給をしないまま過ごしていた

オフィスでできる熱中症予防対策

オフィスや室内の作業場でできる熱中症予防策としては、以下が挙げられます。

自分でできる対策
  • 通気性と速乾性に優れた、体の熱を逃しやすい服を着る
  • 1時間に1回など、タイミングを決めて水分と塩分を補給する
  • 直射日光の当たる場所への長時間の滞在を避ける
  • 睡眠不足や暴飲暴食を避ける、感染症対策をするなどして体調を整える
  • 毎日3食規則正しく食べ、バランスの良い食事を心がける
  • 屋外へ出る前にストレッチをして、屋外に出るときは日傘や帽子を使う
会社全体でできる対策
  • エアコンの設定温度は、時間帯や従業員の体感温度を考慮し柔軟に変える
  • ブラインドやカーテンを設置するなどして、直射日光による室温上昇を防ぐ
  • 電子機器が密集しているエリアでは、常にエアコンをつけ室温管理を徹底する
  • 窓を開けたり、サーキュレーターを使うなどして室内の風の通りをよくする
  • 使っていない電子機器や家電の電源は落とすようにルール化する

まずは自分でできる対策から始めていくことになると思いますが、室温・湿度管理や空気のよどみ、直射日光の環境などは個人での対応が難しいです。

業務中の熱中症は労災認定になることがあり、企業は「安全配慮義務」を怠っているとみなされてしまう場合があります。働く人全員が安全に快適に仕事ができるよう、会社全体で職場環境を整えていきましょう。

クールビズに熱中症予防の効果は期待できる?

オフィスには、プリンターやPCなどのように「発熱する機器」があります。昨今は、勤務する人数分のPCが用意されているのが一般的であり、人間とPCの両方が密集するオフィスは室温が高くなりやすいです。一般家庭の住居に比べると、熱中症が起こりやすい環境といえるでしょう。

室温管理が徹底されていればリスクを下げられますが、エアコンをつけていても空気がうまく還流しない状態であれば、熱がこもる場所での発症リスクは下げられません。

クールビズだけで熱中症を完全に予防できるわけではありませんが、上記で紹介した自分でできる対策「通気性と速乾性に優れた、体の熱を逃しやすい服を着る」対策の一環として考えると、熱中症の予防に役立つ可能性はあるでしょう。

環境省が発表した「2020年度のクールビズ資料」では、単にノーネクタイ・ノージャケットの軽装をすすめるだけでなく、適切なエアコンの使用に役立つ対策として、西日よけのブラインドやグリーンカーテン、省エネ型エアコンへの買い替え、フィルターの定期清掃なども推奨しています。

クールビズで涼しい服装をしているからエアコンを使わなくていいと考えず、室温が上がりにくくなる工夫や空気が還流しやすい環境を整えることも忘れないようにしましょう。

エアコンは設定温度を28℃にすればいいの?湿度管理は?

熱中症予防のための室温管理では、1954年にアメリカで提案された暑さ指数(WBGT:Wet Bulb Globe Temperature)を参考にすることを推奨されています。
WBGTは人体の熱収支に着目した指標であり、気温だけでなく湿度や周辺の熱環境(直射日光、輻射熱など)も取り入れて表しています。

日本気象学会は2013年に発表した「日常生活における熱中症予防指針Ver.3」では、室温と熱中症の関係を以下のように示しています。

暑さ指数(WBGT)に基づく室温と熱中症の関係
  • 室温が25~28℃になると、定期的な休憩なく運動や激しい作業をすると熱中症の危険がある
  • 室温が28~31℃になると、室内であってもすべての生活活動において熱中症の危険がある

ここから考えると、室温が28℃以上になると、室内で座って事務作業していても熱中症になるリスクがあるということになります。
熱中症予防のためには、オフィスの室温は28度以下を保てるようにしましょう。

なお、大切なことは「エアコンの設定温度を28℃にすればいい」わけではないことです。
日光の当たり方や輻射熱、熱気のたまり方によっては、28℃に設定していてもそれ以上の室温になってしまうことがあります。オフィスには複数温度計を置き、室温が28℃以下を保てているかきちんと確認しましょう。

28℃以上になっている場合は、サーキュレーターや換気で空気を還流させたり、カーテンやフィルムなどで輻射熱の対策を行うなどで対応し、それでも室温が下がらない場合はエアコンの設定温度を下げてください。
ただし、室温が24℃以下になると気温差の影響で体に負担がかかるので注意が必要です。

熱中症予防と湿度管理

熱中症を予防するには、湿度を50~60%に保つ必要があります。これは、湿度が高いと汗が蒸発しにくくなり、体温調節がうまくできなくなるからです。
また、人間の体感温度は、湿度が10%増えると2度上昇するといわれています。例えば、室温が28℃であっても湿度が60%から80%に上がってしまえば、体感温度は4℃上がるということになります。

オフィスや室内の作業場では、人間が快適に過ごせて熱中症のリスクも下げられる「50~60%の湿度」を保つようにしましょう。温度と湿度を測れる温湿度計を用意することをおすすめします。

エアコンを適切に使用し、換気やサーキュレーターでうまく空気を還流させれば、ある程度湿度を管理できます。うまく湿度が下げられないときは、除湿機などで対応しましょう。

おわりに:服装やオフィス環境を見直し、勤務中の熱中症を予防しよう

一般家庭に比べ発熱する機器が多いオフィスでは、気温が上がりやすく熱中症発症リスクも高くなります。使っていない機器や家電の電源は落とし、ブラインドなどを設置して直射日光を防いで、熱中症のリスクを低減しましょう。

クールビズの取り組みも効果的な熱中症予防策となりますが、室温・湿度管理や空気の還流、輻射熱の対策は必要です。湿度は50%〜60%、室温が28度になるように、会社全体できちんと管理していきましょう。

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