まだら認知症の原因にはどんな特徴がある?

2021/2/20

山本 康博 先生

記事監修医師

MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長
東京大学医学部卒 医学博士
日本呼吸器学会認定呼吸器専門医
日本内科学会認定総合内科専門医
人間ドック学会認定医
難病指定医
Member of American College of Physicians

山本 康博 先生

認知症と言うと「もの忘れ」を思い浮かべますが、これは認知症の中でも患者数の多い「アルツハイマー型認知症」の症状です。タイプの違う認知症のひとつに「まだら認知症」があります。この記事では、まだら認知症を引き起こす原因と症状を解説します。

まだら認知症はなぜ起こる?

「まだら認知症」とは、認知機能の低下という症状が日によって、あるいは時間帯によって波があり、昨日できていたことが今日はできなくなる、もの忘れは激しいけれど難しい計算や本を読むことはできる、などの落差が非常に大きい状態のことを言います。

認知症になったからといって、すべての認知機能が同時に同程度ずつ低下していくわけではありません。このことは、「認知症の症状には個人差が大きい」と言われる理由のひとつでもあります。まだら認知症は、その波が非常に顕著な状態である、とも言えます。

しかし、この波によって「朝はできたのに今できないのは、単に怠けているのだろう」「こんなに難しい本を読めたり、計算ができるのだから、認知症ではないのでは」などと、周囲の人々から誤解を受けたり、本人も周囲の人も混乱してしまうことがあります。このような波が生じるのは、以下のような原因によると考えられています。

脳のダメージに偏りがある

まだら認知症の多くは「脳血管性認知症」から生じています。脳は部位によってさまざまに機能が異なるため、脳血管性障害によってダメージを受けた部分の機能は低下するものの、ダメージを受けなかった部分の機能は比較的残っています。このため、記憶機能はダメージを受けたけれど、言語理解や計算能力にはダメージがない、というような「まだら」の状態になります。

脳の血流が変化している

低血圧の人が朝ぼんやりしやすいように、人間の脳の血流は寒暖差や1日の中でも変化します。起床直後・食事後・入浴や暑さで体温が上昇した後・水分不足のときなど、脳の血流が低下するタイミングでは一時的に認知症の症状が強まったように感じられます。ただ、この現象は脳血管性認知症に限らず、他のタイプの認知症でもみられます。

自律神経が乱れている

レビー小体型認知症や、パーキンソン症状を併発している場合に多い原因です。意識の覚醒や血圧の調整を司る自律神経が失調しやすいため、夕方や食後に一時的に認知症の症状悪化(食後にぼんやりして反応が鈍くなる、幻覚を見る、せん妄[意識が混濁・混乱する]状態になるなど)が見られることがあります。

体調不良など、その他の原因による

体調不良で認知症の症状が出現することもあります。認知症の人は自分の身体の異常を正確に把握し、伝えられないことがあるため、数日おきに認知症症状の悪化と改善を繰り返し、まだら認知症と思われていた人が、便秘の不快感のために症状が現れていたというケースもあります。

まだら認知症の症状の特徴は?

前述のように、まだら認知症は脳梗塞や脳出血などの血管障害が原因となって起こる、脳血管性認知症のひとつです。そのため、障害された脳の部位に応じた認知機能が低下するという特徴があります。ある機能は正常なのにある機能は低下している、またはその低下具合も日によって変化するため、本人も家族も認知症とは気づかず、単に調子が悪いだけだと思ってしまうことも少なくありません。

また、まだら認知症に特徴的な症状として「記憶力や遂行機能に障害が目立つが、判断力や専門知識は正常に残っていて、人格も大きく変化しない」こともあります。たとえばアルツハイマー型認知症の場合、記憶力や遂行機能の低下とともに、判断力や専門知識・理解力なども低下するのが一般的です。しかし、まだら認知症の場合、記憶力の低下がアルツハイマー型認知症より軽度で、忘れたことの自覚もある場合が多いです。

身体的な症状としては、「頭痛・めまい・耳鳴り・手足のしびれ・つまずきやすくなる・言葉が出にくくなる・ろれつが回らなくなる・嚥下障害・やる気が出ない・感情のコントロールがしにくい」などの症状がみられることがあります。

おわりに:まだら認知症は症状の程度も変化も「まだら」な認知症

まだら認知症は、脳梗塞や脳出血など、脳の血管に障害が起こることで引き起こされる認知症です。そのため、他の認知症と少し異なり、障害された部位だけに機能障害が起こり、他の部位はたいてい正常に保たれていることが特徴です。失われやすいのは記憶力や遂行機能で、逆に判断力や専門知識、理解力は残る傾向があります。本人も家族も混乱しやすい認知症ですので、症状が疑われる場合は早めに医療機関を受診してください。

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