レビー小体型認知症の幻覚の特徴と対応策は?

2021/2/18

山本 康博 先生

記事監修医師

東京大学医学部卒 呼吸器内科医

山本 康博 先生

レビー小体型認知症とは、脳の中にレビー小体という特殊なタンパク質が溜まっていくことで脳の機能が障害されて起こる認知症のことです。よく知られている認知症にはアルツハイマー型認知症がありますが、これとは起こる原因が違うのです。そのため、アルツハイマー型認知症とは症状の特徴や、対処法が違います。中でも、レビー小体型認知症に特徴的な「幻覚」について詳しく見ていきましょう。

レビー小体型認知症の症状の特徴は?

一般的に認知症というと、患者数の多いアルツハイマー型認知症でみられる「もの忘れ(記憶障害)」や「いま自分がどこにいるか、いつなのかなどがわからなくなる(見当識障害)」などを思い浮かべがちですが、レビー小体型認知症では初期の記憶障害は比較的軽度、見当識障害もあまり見られない傾向があります。

レビー小体型認知症の記憶障害の特徴は、既に脳内に記憶されていることを引っ張り出しにくくなることです。そのため、アルツハイマー型認知症の場合は、周囲の人が話のきっかけを伝えても全く思い出せないことが多いのに対し、レビー小体型認知症の場合はヒントを出すと思い出せることが多いです。

アルツハイマー型認知症ではほとんどみられない、レビー小体型認知症特有の症状として「幻視(幻覚)」があります。「○○さん(故人)が現れた」「家の中に泥棒が入ってきた」などといった妄想の混じったものもあれば、何もない空間を指して「あそこに人がいる」などと言うこともあります。このように、視覚系統の認知障害が起こりやすいのが、レビー小体型認知症の大きな特徴と言えます。

また、レビー小体型認知症に特徴的な症状としてパーキンソン病と同じような症状がみられることがあります。パーキンソン病は、神経伝達物質のひとつである「ドーパミン」が減少することで起こる疾患で、脳から指令が出ても神経がそれをうまく伝達できず、スムーズに体を動かせなくなります。そのため、動作がゆっくりになったり、筋肉がこわばったり、姿勢が崩れやすくなったり、手足がふるえたりといった症状がみられます。

レビー小体型認知症の幻覚の具体例は?

「幻視(幻覚)」はアルツハイマー型認知症をはじめとした他の認知症では見られにくい、レビー小体型認知症特有の症状です。見えるものは患者さんそれぞれによって異なりますが、いずれも何かが違うものに見えるということではなく、「実際にはないものが見えている」という点は同じです。

以下に、レビー小体型認知症に見られる幻覚の特徴をご紹介します。

  • 主に虫や小動物、人などが見えている(それらに動きがあることが多い)
  • 人が見えている場合、相手を特定できることもあるが、顔がはっきりしない、仮面をかぶっているらしいと言うこともある
  • 一般的に色彩ははっきりしていることが多いが、白黒で見える人もいる
  • 影になっている場所や、暗い隙間などにいると指差したり、覗き込んだりすることもある

実際に見えている幻覚として、以下のようなものがあります。

動物に関する幻覚
  • ネズミが壁を走っている
  • ヘビが天井を這い回っている
  • ご飯の上に虫が止まっている
人に関する幻覚
  • 知らない人が座敷に座っている
  • お婆さん、お爺さんがこちらを見て立っている
  • 子どもたちがベッドや布団の上で遊んでいる
  • 兵隊がぞろぞろとやってくる
  • ○○さん(知人や家族、故人の場合も)が遊びに来た
  • 誰かがベッドや布団で寝ている
  • 窓やドアから男の人が入ってくる
  • 幽霊が出てきた
環境に関する幻覚
  • 大きな川が流れている
  • 床が濡れている、水たまりができている
  • 光線が飛んでくる
  • きれいな花が咲いている
  • 物が吸い込まれていく

アルツハイマー型認知症でもこのような幻覚が見られることもありますが、それは「せん妄」と呼ばれる意識障害の状態に陥っているときだけです。さらに、レビー小体型認知症は記憶障害がアルツハイマー型認知症と比べて軽度なため、数日前の幻覚の様子を本人自身が正確に話せることも多いです。

せん妄も幻覚と似ていて、意識レベルが低下することで実際には存在しない人や物が見えたり、怖がったり、騒いだりするものです。しかし、レビー小体型認知症の幻覚と違うのは、本人はすぐにそのことを忘れてしまい、後で尋ねてみてもさっぱり覚えておらず、話せないという点です。なお、夜中に起こるものは夜間せん妄と呼ばれます。

幻覚を見ている人への対応は?

幻覚の症状が現れたとき、すぐに周囲の人が行うべきポイントを2つご紹介します。

否定せず、本人の話を聞く

認知症の人にとっては現実に体験していることなので、否定しないことが大切です。「そんなものはいない(ない)」と否定してしまうと、拒絶された、わかってもらえなかったと感じてストレスになってしまうためです。また、不安の表れや、体調が悪くなっていることもあるため、本人の話をじっくり聞いてあげてください。

一緒に確認し、安心してもらう

見えているものを間違いだと否定してはいけないのですが、肯定すると「じゃあお世話をしなくては」と新たな妄想につながってしまうことがあります。一緒に確認した上で「もういませんよ」「帰りましたよ」「追い払いましたよ」などと言い、安心してもらいましょう。「まだここにいる」などと言われた場合は、その場所をもう一度確認すると、本人から「もういない」と言ってくれることがあります。

次に、そもそも幻覚が起こりにくいようにできる対策を3つご紹介します。

見間違いにつながりやすい環境を改善する

高齢になって目が悪くなり、見間違いが増えたことが幻覚につながっていることもあります。特に、間接照明を使った部屋で影が多くなると幻覚を起こしやすいため、部屋を明るくしたり、足元にランプをつけたりしましょう。また、壁のシミや傷が虫に見えることもあるため、シミや傷を隠すことも大切です。

本人の体調や精神的な不調をチェックする

水分は足りているか、熱はないか、便秘していないかなどをチェックします。現状に対する不安が現れていることもあるので、話をよく聞き、気がかりなことを話してもらいましょう。

医師に相談する

幻覚は薬で改善することもあります。頻繁に幻覚が現れたり、幻覚と同時に興奮がみられるときは、医師に相談してみてください。もの忘れなどの症状がなくても、幻視の症状がひどい場合は早めに受診するのがおすすめです。

おわりに:実際にはないものが見える「幻覚」は、否定せず安心してもらうことが大切です

他の認知症では見られにくい、レビー小体型認知症に特徴的な症状として「幻覚」があります。この幻覚は「実際にはないものが見える」もので、主に動物・昆虫・人間などに関するものですが、ときには環境に関する幻覚が見えることもあります。

幻覚に対しては否定せず、「もう追い払いましたよ」などと、対処したとして安心してもらいましょう。影や壁の傷など、見間違いが起こりやすい環境を改善することも効果的です。

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