認知症で起こる見当識障害の症状の特徴と対処法は？

見当識障害とは

現在地や時間、季節など自分が置かれている状況を総合的に理解する能力が欠如した状態を見当識障害と言います。認知症による代表的な中核症状のひとつで、レビー小体型認知症で最も現れやすい症状です。また、アルツハイマー型認知症でも、記憶障害に次いで起こりやすい症状です。

見当識障害は、理解できなくなる感覚ごとに以下3種類に分かれています。

時間の見当識障害

現在の年月日や季節、1日のうちどの時間帯にあたるのかなど、時間を理解する感覚に障害が起き、自分が置かれている状況がわからなくなるものです。時間がわからなくなることに伴い、食事をとったかどうかがわからなくなる人もいます。

場所の見当識障害

建物や風景の区別がつかなくなる街並失認、道順や方角がわからなくなる道順障害を伴い、いまいる自分の場所が理解できなくなるものです。外出の目的は覚えていても、目的地や自宅までの道・方角がわからなくなってしまいます。

人の見当識障害

自分が誰でどのような立場にあるのか、周囲の家族・友人とどのような関係だったのかを理解できなくなり、人とのつながりを失ってしまうものです。記憶はあるので、家族や友人の顔を認識できても、相手との関係性を思い出せなくなります。

見当識障害への対応方法は？

認知症による見当識障害を発症すると、外出先で迷子になったり、家族や知人を知らないと言ったり、排泄に失敗するなどさまざまなトラブルに直面します。見当識障害を発症している人に対しては、まずは認知症による症状であることを周囲が理解し、本人にストレスや怒りをぶつけないよう注意してください。

見当識障害による間違いやトラブルについて周囲が責めても、本人はなぜ怒られているのか、正しく認識できないためです。このため、「わけもわからず怒られている」と感じ、自尊心を深く傷つけられたり、神経が過敏になって興奮させてしまう可能性があります。

見当識障害の人の間違いには、怒るのではなくやさしく話かけて間違いを軌道修正するとともに、以下の方法で見当識障害を改善する工夫をしましょう。

見当識障害の改善に効果的な工夫・対応

時間の見当識障害がみられるとき

外の景色を一緒に見に行く、本人が見やすい時計を用意する、カレンダーに印をつけて予定を書くなどして、時間を可視化すると効果的です。あわせて、一緒にカレンダーや時計を見ながら「今日は〇月×日▽曜日」「いまは12時だから、お昼ご飯です」などと、声に出して時間を認識させるのもよいでしょう。

場所の見当識障害がみられるとき

迷子になるからと外出を制限してしまうと、ストレスから余計に症状が悪化する恐れがあります。本人が外出したがるようなら、迷子にならないよう散歩として一緒に外に出て、脳と体に適度な刺激と疲労を与えられるようにしましょう。またトイレを認識できず、排便に失敗するようなら、扉にイラストや文字で本人がトイレと認識できる表示を付けると効果的です。

人の見当識障害がみられるとき

リアリティオリエンテーション、日本語では「現実見当識訓練」と呼ばれるリハビリが有効です。現在の時間や季節、場所と一緒に自分の名前や年齢、家族との関係や物の名称を繰り返し質問し、本人に答えさせることで現実への認識を深めることができます。

おわりに：認知症の見当識障害は時間・場所・人がわからなくなる症状です

代表的な認知症の症状として知られる見当識障害は、現在の時間や場所、周囲の人との関係など、自分を取り巻く状況を理解できなくなる障害です。発症すると季節や年月日の他、目的地と自宅との道順や方角、自分や他者のことがわからなくなり、さまざまなトラブルに直面します。周囲としては怒りや戸惑いを感じるかもしれませんが、決して怒らず、やさしく軌道修正してあげてください。そのうえで、症状改善のための対応策を考えましょう。