記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
2021/3/1
記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
若年性認知症という言葉は、その漢字のイメージから非常に若い人、例えば20代〜30代で起こる認知症というイメージも多いでしょう。その年代でもゼロとは言い切れませんが、いわゆる高齢者に分類されない年齢の人が発症した場合は、すべて若年性認知症と呼ばれています。
若年性認知症は、高齢者の認知症と比べてどんなことが違うのか、また、早期発見のためのポイントを知り、いざというときに備えましょう。
若年性認知症とは、一般的には65歳以上の高齢者で見られる認知症が65歳未満で発症したものです。若年性認知症を発症するのは主に40〜50代の働き盛りの世代ですから、患者さん本人はもちろん、家族や周囲の人のショックや、生活に与える影響が大きいことは想像に難くありません。
たとえば、若年性認知症のために仕事に支障が出たり、退職を余儀なくされてしまった場合、まず経済的に困難な状況になります。子どもが成人していなければ、精神的にショックを受けることはもちろん、学費などの問題から教育や就職、または結婚などの人生設計に大きく影響することも考えられます。また、本人や配偶者の両親の介護問題などが重なる時期でもあり、家族や周囲の人に対して負担が大きくなります。
このように、若年性認知症は高齢者が発症する認知症よりもさらに大きな社会的問題であることは間違いないのですが、実態もまだ十分に明らかにされておらず、医療・介護の現場でも、企業でもまだまだ認識が広まっていないため、支援も不十分であるというのが現状です。
若年性認知症は、原因疾患によって「血管性認知症」「アルツハイマー性認知症」「前頭側頭型認知症」「レビー小体型認知症」などに分けられます。それぞれ、以下のようなことが原因で起こる認知症です。
高齢者ではアルツハイマー型認知症が圧倒的に多いのに対し、若年性認知症では血管性認知症がもっとも多いことがわかっています。そのほか、頭部外傷の後遺症、感染症、脳腫瘍など、若年性認知症は非常に原因が多様であるという特徴があります。近年注目されている「前頭側頭型認知症」は、若年層で多いことも知られています。
そのほかに分類される「慢性硬膜下血腫」や「正常圧水頭症」など、可逆的な病態で一時的に認知症が起こっている場合、原因となっているこれらの疾患を治療すれば認知症の症状も改善することがあります。
若年性認知症と高齢者の認知症は、原因以外にも以下のような点で異なります。
このように違いを把握しておくことで、理解や対応の仕方を考えることができます。ただし、発症年齢が違うことで社会的に問題が大きい疾患ではありますが、症状そのものは高齢者の認知症と変わりません。
働き盛りの年齢で発症してしまうと、経済的な打撃を受けることはもちろん、本人や周囲の人が精神的ショックから抑うつ状態になってしまうこともあります。体力やスキルは残っているのに、記憶障害や見当識障害などによってミスが増えてしまい、悔しさや歯がゆさを抱えてしまうことも少なくありません。
さらに、高齢者と比べて発症する人数が少ないことから、専門のサービスや支援がほとんどありません。すると、高齢者向けや障がい者向けのサービスを利用せざるを得ないことになります。ここでの大きな問題は年齢層のずれで、他の利用者さんと話が合わなかったり、家族も介護家族会などに参加しても高齢者介護とは課題が異なるなど、ミスマッチとなってしまうことが多いのです。
若年性認知症も、基本的な症状は高齢者の認知症と変わりません。そこで、やはり高齢者の認知症と同じように、早期発見・早期治療が重要です。現在ではアルツハイマー型認知症であっても進行を遅らせる薬がありますので、早期発見して治療を始めれば、日常生活の動作やQOL(生活の質)を維持することができます。
また、早期発見して症状の進行を抑えられれば、周囲の人の介護負担が減り、理解力や判断力がある程度残った状態なので病気のことを本人が受け入れやすくなります。すると、今後の人生設計なども自分で考えられることが多いです。さらには、社会的に医療費や介護費も減ることになりますので、社会貢献としても重要なことなのです。
そこで、職場・家庭・自動車関連・性格・行動の5つの面から、早期発見のためのチェックポイントをご紹介します。
職場でのチェックポイントは以下のようなことです。
いずれの場合も、「今までは難なくこなしていたことができなくなる」ということがポイントです。また、認知症の場合は「もの忘れ」に関連したミスが多いことも特徴です。
家庭では以下のようなことに気をつけて見てみましょう。
家庭では「何度も同じことをする」「怒りっぽくなる」などのポイントに焦点を当ててチェックしていきましょう。また、身だしなみに無頓着になる場合、精神疾患の可能性もありますので、注意して観察し、他の認知症や精神疾患の予兆が見られるようなら専門医に相談しましょう。
自動車に関連した場面でも、認知症の影響は出やすいです。
自動車関連の認知症は、「見当識障害」と呼ばれる、自分が今どこで何をしているのか、次に何をすれば良いのかといった判断能力の低下がポイントです。このような状態が続くと、やがて大事故にもつながりかねません。できるだけ早く専門家に相談してみるのが良いでしょう。
認知症では、性格に変化が起こることもあります。
認知症の1つの症状として、感情がコントロールできなくなったり、猜疑心が強くなるというものがあります。これらの症状が見られたら、他にもチェックポイントに該当するものがないかよく観察しましょう。また、暴言や暴力などの面が強く出るようなら、早めに専門家に相談しましょう。
最後に、行動面からのチェックポイントをご紹介します。
行動面では、もの忘れと見当識障害が多いのですが、ポイントなのが「財布や鍵をどこに置いたかわからなくなり、家族や身近な人に盗られたと思い込む」という被害妄想です。これも認知症のよく知られた症状の1つですので、何度も繰り返す場合は認知症を疑って良いでしょう。
若年性認知症は、働き盛りの40〜50代が発症することが多く、発症すると本人も周囲の人にも精神的・経済的・社会的な打撃が大きい状態です。未成年の子どもがいた場合、その子の精神的なショックはもちろん、その後の教育や結婚などにも影響を与えかねません。
そこで、早期発見できるよう、今までと違うことがあったらチェックポイントを意識して観察してみましょう。早期発見・治療できれば、進行を抑制することもできます。