記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
2021/4/24
記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
介護を行う上で、利用者本人の身体的負担はもちろんのこと、介護者の身体的負担は非常に大きな問題です。そこで、介護者の身体的負担を軽減するため、さまざまな福祉用具が開発されています。介護移動用リフトもそのひとつで、主にベッドから車椅子への移乗などの際に使われます。この記事では、介護用リフトを使うメリットやリフトの種類を解説します。
介護移動用リフトとは、ベッドから車椅子への移乗などの際、要介護の利用者の身体を持ち上げて移動するために使うものです。要介護の人でも自分で起き上がれたり、支えがあれば立ち上がれたりするようなら特に使わなくても構いませんが、自分でベッドから降りて車椅子に移乗できない場合、介護者が抱えて車椅子へ移乗することになります。
抱えて移乗する動作は、介護者の身体、特に腰に大きな負担をかけてしまい、ときに腰痛を引き起こす恐れがあります。一般的に、無理をせず人間が持ち上げられるのは20〜30kg程度とされており、介護者が一人で利用者の身体を持ち上げ、車椅子へ移乗させる、という動作は介護者の身体に大きな負荷がかかっていることになります。
これは、介護者の身体的な問題だけではなく、持ち上げるときに無理をするということは、持ち上げられる利用者にとっても「ベッドから転落する」「車椅子に安全に移乗できない」といった問題が起こりかねないため、非常に危険な状態と言えます。特に、在宅介護で介護者がケガをしてしまうとお互いのQOL(生活の質)が大きく低下することになり、自宅で安全に生活しにくくなってしまいます。
そこでおすすめなのが、介護移動用リフトです。介護移動用リフトを導入すると、以下のようなメリットがあります。
介護保険の適用となる介護移動用リフトには、床走行式・天井走行型・据置式の3種類があります。
介護移動用リフトの中でも、最も手軽なのが床走行式リフトです。上下の動きは油圧・空気圧・水圧を使ったポンプの動きによってコントロールされ、水平方向の移動は台車についたキャスター輪を介護者が押すことで行います。床などに固定する必要がないため取り付け工事が要らず、さまざまな場所で利用できます。
とはいえ、「畳の上では使いづらいため、フローリングの床にする」「移動する範囲の段差をなくす」「ベッドの脇に、回転させられるだけのスペースを確保する」という点を満たすため、自宅で利用する場合は必要に応じて室内をリフォームする必要があります。
また、床走行式リフトは安定性を維持するため台車の面積が比較的大きく、移動のためのスペースもその分広く必要です。そして、入浴時に使用する場合は浴槽までの移動経路を平坦にしたり、浴槽の下にキャスター輪が入るスペースも必要です。
シート状の吊り具は「敷き込み(水平状態に保つ)」が難しく、使用方法について指導を受けなくてはならないだけでなく、そのスキル獲得までも時間がかかります。しかし、ベッドから車椅子への移乗を介護者一人で行えますし、介護者が高齢な場合や腰痛がある場合、介護者と利用者の体格差が大きい場合には特に有効な道具です。
天井走行型リフトとは、天井にレールを設置し、レール状を走らせて移動するクレーン型のリフトです。電動または手動で、ベッドからの昇降動作やレールに沿った移動が簡単に行えます。日本では比較的狭い部屋が多かったり、畳の生活だったり、天井の高い家屋が少なかったりするため、床走行式リフトよりも適していることがあります。
しかし、使用場所までのレールを設置しなくてはならないため大がかりな住宅の改造が必要となり、費用の負担が非常に高額となります。中には、レールを設置するため、新たに柱を立てるケースもあります。
据置式リフトとは、寝室のベッド上にやぐらを組み、本体部分が上のレールに沿って移動するタイプのリフトです。取り付けられたハンガーで身体を吊り上げ、車椅子へ移乗したり、簡易トイレに座ったりと部屋の中を移動できます。部屋の内部に取り付けを行いますので、家屋そのものを改造する必要がなく、簡単に取り付けられるため必要な場所にすぐ取り付けられるという大きなメリットがあります。
しかし、ベッドを中心とした位置にレールが固定されてしまうことから、移動できる範囲は限られます。あくまでも、ベッドからベッドサイドの車椅子や簡易トイレへといったごく短い距離の移動に使いましょう。
据置式リフトの中には、やぐらの脚を部屋の四隅に経て、リフト本体がレールに沿って横に移動する動きと、レール自体が縦に移動する動きができるタイプのものもあります。このタイプの場合は部屋の中で4方向の移動ができるため、移動範囲が部屋全体に広がります。
要介護認定を受けていて介護保険の対象となっている人であれば、介護保険を利用して1割負担でレンタルすることができます。ただし、65歳以上でも一定の所得がある場合は2〜3割負担となります。
また、介護保険の適用となるのは介護移動用リフトの「本体」のみで、「吊り具」の部分は別に用意しなくてはなりません。「吊り具」の部分は別途「特殊福祉用具」として、介護保険を使って購入できますので、利用者の体格とレンタルするリフトのタイプに合わせて用意しましょう。
介護移動用リフトは、ベッドから車椅子へ移乗するなどの際、利用者の身体を安全に持ち上げて移動するために使われます。移乗介助は介護者の身体に大きな負担になってしまいますが、リフトを使えばお互いに安全に移動できます。介護移動用リフトは床走行式・天井走行型・据置式の3タイプがあり、いずれも介護保険を使ってレンタルできます。吊り具のみ購入が必要ですので、利用者の体格やリフトのタイプに合わせて用意しましょう。