記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
2021/4/10
記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
足腰の衰えや筋力の低下によって、ベッドから自力で立ち上がれない人は、ベッドから車椅子に移動するための「移乗介助」を受けなくてはなりません。そのため、介護職の人や在宅介護を行っている人にとって、非常に多い動作のひとつと言えます。ただ、移乗介助は頻繁に行うにも関わらず、介護者への負担も大きい動作です。そこで、移乗介助をうまく行うために重要なポイントをまとめました。
移乗介助は、ベッドから車椅子へ、そして車椅子からベッドへの移動の際に行うため介助者の身体的な負担が多い動作です。移乗介助が原因で腰痛になったと訴える人も多く、さらには転倒などのリスクも伴うため、ある程度のスキルが必要です。したがって、まずは腰への負担を軽減することを心がけることが大切です。
まず「長時間、20度以上の前かがみの姿勢で作業しない」というポイントを押さえましょう。前かがみのまま作業を行うと、腰への負担が大きくなって腰痛の原因となります。特に自分の腰より低い位置で作業するときは、背中は伸ばしたまま、ひざを曲げて作業するのがよいでしょう。ベッド上で行う作業の場合は、ベッドの高さを上げて前かがみにならないようにするのがおすすめです。
背筋を伸ばしたまま介助するためには、ときに利用者のベッドにひざをつく必要がありますが、これを可能とする施設はまだ少ないようです。利用者宅に訪問して行う訪問介護の場合はさらに難しいですから、前かがみになる動作の時間をできるだけ少なくすること、ひざを曲げることで代替できる作業は背筋を伸ばしてひざを曲げて行うことから始めましょう。
また、腰痛予防のためには、介護を行っている以外のとき、日常生活全般の動作で腰に負担をかけないことも重要です。皿洗いや掃除などの家事、パソコンの作業など、さまざまな動作で背筋を伸ばし、腰を曲げないよう気をつけましょう。
移乗介助は大きな動作になりますから、周辺の環境や車椅子の準備をしっかりしましょう。環境では、ベッド上で介助を行う範囲のサイドレールを外したり、布団をベッドの外に置いたりして、移乗介助の邪魔にならないようにしておきます。また、利用者の足が滑らないよう、リハビリシューズを履いてもらいましょう。
車椅子の準備も重要です。介助の邪魔にならないよう、アームサポートを上げ、フットサポートを外し、ブレーキをしっかりかけておきます。ただし、お尻が車椅子に当たらないくらい立ち上がれる利用者の場合は、アームサポートはそのまま、フットサポートとブレーキの準備だけで構いません。
これらの準備を介助中に行うのは難しいだけでなく危険なため、必ず介助前にすべての準備を終えておきます。また、毎回でなくても構いませんが、ブレーキの効きやタイヤの空気が抜けていないかも適宜チェックしましょう。
以下に、できるだけ腰に負担がかからないような方法をご紹介します。
まずは、ベッドから車椅子への移乗方法をご紹介します。
ベッドに起き上がってもらった後、座り直しができるようなら、以下のような手順で浅く座り直してもらいましょう。
車椅子からベッドへの移乗は、前述のベッドから車椅子への手順を逆に行うのが基本です。具体的には、以下のように行いましょう。
全介助で移乗介助を行う場合、「利用者を前傾姿勢にする」「足をしっかり開き、ひざを軽く曲げて立つ」という2つのポイントが重要です。まず、利用者を前傾姿勢にするのはお尻の圧を減らすためで、前方へ滑り出したタイミングでスライドするように移乗すれば、持ち上げる動作が必要なくなるので介助者の負担が大きく軽減されます。
また、「足をしっかり開き、ひざを軽く曲げて立つ」のは、腰への負担を軽減するためです。前かがみの姿勢では腰に大きな負担がかかりますので、背筋をまっすぐにした状態で足をしっかり開き、腰を落としてひざを軽く曲げて立ちましょう。また、前かがみにならないことを意識しすぎて背中が反った状態になるのも腰への負担となるので気をつけてください。
移乗介助は、介護者にとって非常に大きな身体的負担がかかる動作でありながら、日常的に頻繁に行われる動作のひとつです。まずは腰に負担をかけないよう、できるだけ福祉器具を使ったり部分介助にしたりするのが良いでしょう。
どうしても全介助を行うときは、前かがみにならないよう足をしっかり開き、ひざを軽く曲げて背筋を伸ばして立ちます。また、背中が反ってしまうのも腰痛の原因となりますので注意してください。