記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
2021/4/22
記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
高齢で足腰が弱っている人や、疾患などで足が麻痺している人は自分で歩けないため、移動するのに車椅子を使います。車椅子の介助は歩行介助と比べて大きな力が必要になるわけではありませんが、ブレーキをかけるタイミングや坂道での扱い方など、車輪ならではの注意も必要です。この記事では、車椅子の介助の方法について解説します。
基本的に、移動しないときは常にブレーキをかけておきます。被介助者が立ったり座ったりするとき、ブレーキをかけていないと転倒などの事故につながりやすいこと、また、地面の傾斜で動き出してしまう可能性もあるためです。かけ忘れが心配な場合は、自動でブレーキのかかる車椅子を利用するのも一案です。
車椅子の押し方、ブレーキのかけ方は以下の通りです。
車椅子の介助は歩行介助とは異なり、介助者と被介助者が触れ合ったり、呼吸やペースを合わせたりすることがありません。そのため、声かけなどのコミュニケーションが非常に重要です。また、介助者は立っているため速さを感じにくいのですが、車椅子に座っている人は、速さやアスファルトの凸凹による振動を感じやすいです。介助者が「少しゆっくりかな」と感じるくらいのスピードで押しましょう。
坂道を移動するとき、上り坂はそのまま前向きに進んで構いませんが、下り坂は前向きで進んでしまうと、被介助者は転がり落ちような感覚を味わってしまいます。そのため、基本的には後ろ向きで進み、ブレーキをかけ気味にしながら進みましょう。ただし、非常にゆるいスロープのような下り坂の場合は前向きのままで構いません。
砂利道や凸凹が多い道を通るときも、後ろ向きで進むと車輪がつっかえにくく、被介助者が落ちてしまうような不安を感じずに済みます。坂道や砂利道を進むときは、介助者は脇をしめ、歩幅を広げて一歩一歩ゆっくりと進みましょう。また、車両進入用の傾斜地などの場合は車椅子が車道側に傾きますので、介助者はグリップではなくアームサポートを持つと真っ直ぐに押しやすくなります。
以下のような手順で段差をのぼります。
後輪を段差にくっつけないまま持ち上げようとすると、前輪が横に動いてしまって危険です。段差を下りるときは、上るときとは逆に車椅子を後ろ向きにし、ティッピングレバーを踏んでキャスターを上げた状態で後輪をゆっくりと下ろしてから、キャスターを静かに下ろしてください。
もし、2段以上の段差を上るときは、2〜4人で車椅子を水平に保ちながら、ゆっくりと上げ下げを行いましょう。
車椅子の介助中は、以下のようなポイントに注意しましょう。
砂利道や砂地はできるだけ避けるのが基本ですが、どうしても通らなくてはならないときは、キャスターを上げて後輪だけで進む方法もあります。また、坂道は勢いがついてしまうため、絶対に坂の途中では止まらず、平らな場所に出てから車椅子を止めましょう。
長時間車椅子に座っていると、自重や車椅子の振動でお尻に床ずれができてしまうこともあります。床ずれの防止には、身体が滑らず体圧を分散しやすいクッションを使いましょう。
車椅子の介助を行う前は、必ず車椅子に問題がないか安全確認をする必要があります。また、定期的に故障がないかメンテナンスも行いましょう。具体的には、以下のようなポイントをチェックします。
特に、ブレーキの効き具合やタイヤの状態は非常に重要です。停車時にしっかりとブレーキが効いた状態でないと、少しの衝撃でも簡単に動いてしまい、思わぬ事故につながりかねないためです。ワイヤーが伸びていたり、カバーが折れていたり、タイヤが摩耗していたりする可能性がありますので、必ず修理を依頼しましょう。
タイヤの空気圧は、段差にぶつかったときのショックを吸収してくれたり、乗り心地に影響したりします。自転車と同じように、空気が十分入っているか定期的にチェックしましょう。また、タイヤの溝が減ってきたり、傷やひび割れがあったり、パンクしていたりする場合は修理を依頼しましょう。レンタル車椅子の場合は、レンタル元に連絡します。
また、車椅子のシートや背もたれは一般的に硬めの素材で作られていますが、長時間座ると腰を痛めたり、お尻に床ずれができたりする可能性があります。被介助者の身体への負担を減らすため、クッションを腰に当てたり、座面に低反発マットを敷いたりするとよいでしょう。
そのほか、以下のようなポイントにも注意しましょう。
車椅子の介助は、歩行介助などと異なり、介助者と被介助者が言語外のコミュニケーションを取りづらい状態にあります。そのため、こまめな声かけが重要です。また、座っている被介助者はスピードを感じやすいので、介助者が少し遅いかなと思うくらいのスピードで走りましょう。そして、車椅子は定期的なメンテナンスも重要です。ブレーキやタイヤの状態を定期的に確認し、パンクなどはあらかじめ修理しておきましょう。