服薬介助をするうえでの注意点は?

2021/4/4

山本 康博 先生

記事監修医師

MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長
東京大学医学部卒 医学博士
日本呼吸器学会認定呼吸器専門医
日本内科学会認定総合内科専門医
人間ドック学会認定医
難病指定医
Member of American College of Physicians

山本 康博 先生

高齢者など、自力で薬を飲めない人や薬の管理が難しい人が薬を飲むのをサポートすることを「服薬介助」と言います。在宅介護でも訪問介護でも、高齢者では薬を飲んでいない人の方が少ないため、この介助は非常に重要です。この記事では、服薬介助を行う上での注意点をご紹介します。

服薬介助とは

高齢になるとかかっている疾患が増え、それに伴って薬の種類も増えてしまいがちです。その結果、飲み方が複雑になることも多く、服薬し忘れたり、面倒だからと飲んだふりをしたりする人が出てきます。このように、服薬に関する異常やトラブルをサポートし、きちんと医師に指示されたペースで薬を飲めているか確認するのが「服薬介助」です。

ただ一方で、介護士が服薬介助できないケースも存在します。介護士が服薬介助をしてはならないのは、以下のような場合です。

  • 本人の容態が安定しておらず、入院したり入所したりして治療を行わなくてはならない
  • 副作用のリスクや投薬量の調整のため、医師や看護師が連続的に容態を経過観察しなくてはならない
  • 内服薬の誤嚥の可能性、座薬の肛門からの出血の可能性など、専門的な配慮が必要である

これらはいずれも、服薬に際して医療行為が必要となる場合です。介護士の業務に医療行為は含まれていないため、介護士は医療行為を行うことができません。これらのケースに該当する場合は、看護師などの医療従事者が服薬介助を行います。

厚生労働省の見解では、「軟膏の塗布・湿布の貼付・一包化された内用薬の内服・座薬の挿入・点眼など」といった日常的な範囲の服薬に関しては、原則として医療行為に当たらない、となっています。したがって、たとえば内服薬でも誤嚥のリスクがごく少ない人や、肛門周囲に傷などがなく座薬を挿入しても問題ない場合などは、介護士が介助しても構いません。

服薬介助をするときに気をつけることは?

服薬介助を行うときは、事前にお薬カレンダーなどで服用する薬を分けておき、種類や量を絶対に間違えないようにしましょう。以下に、服薬介助のポイントである「飲み物・誤嚥・薬の種類や数・飲み込めたかどうか・飲んだ後の変化」についてみていきましょう。

飲み物

薬を飲むときの飲み物は水か白湯がおすすめです。飲みやすさを重視するなら白湯がおすすめですが、季節に応じて温度を調節するとよいでしょう。

どうしても水で飲むのが苦手な人はお茶でも構いませんが、玉露などのような濃度の濃いお茶は避けてください。また、飲み合わせによっては薬の効果を強めたり、逆に弱めたりして副作用が出てしまうこともあります。なるべく水で飲んでもらったほうが安心です。

誤嚥

高齢者は水を飲むだけでも誤嚥を起こしやすいですから、薬を上手に飲めるような工夫をすることも大切です。たとえば、そのまま飲んでもらうのではなく、粉末であればゼリー状のオブラートで包んだり、水に溶かしてとろみをつけたりするとむせずに飲み込みやすいです。錠剤だとどうしても飲み込みにくい場合、主治医に相談すれば口の中で溶けやすいタイプに変更してもらえることもあります。

薬の種類や数

服用する薬の種類が増えると、薬によって飲む頻度や回数が違うものもあるため管理が難しくなります。本人に任せっきりにせず、介助者が薬の種類や数を確認し、本人が正しく服用できるようチェックしましょう。たとえば「お薬カレンダー」など、ウォールポケットで日付ごとに分けられるものを使い、その日の分の薬を正しく飲みきれるようにしておくとよいでしょう。自宅で家族の服薬介助をする場合にも、用意しておくと便利です。

飲み込めたかどうか

高齢者の場合、薬を口に入れたからといって、薬をきちんと飲み込めるとは限らないため、飲み込めたかどうかの確認が必須です。介助したときにこれに気づかずに残ったままになっていると、その後誤嚥してしまうリスクがあるためです。麻痺のある人は薬を飲み込むのが難しく、口の中に残りやすいので注意が必要です。

また、飲んでいる最中に誤嚥を起こしてしまうこともありますので、飲み終えるまで目を離さず、本人の様子をよくみましょう。

飲んだ後の変化

高齢になるほど、薬の成分に対して反応しやすくなるため、副作用の起こるリスクも高くなります。それまでずっと飲んでいて問題なかった薬でも、体調が悪いときに突然副作用が出ることもありえます。薬を服用した後、しばらくしても変化がないかどうか様子を見ておき、なんらかの異常など変化が見られた場合には早めに主治医に相談しましょう

認知症の服薬介助で、特に気をつけるべきことは?

認知症の人に服薬介助するとき、通常の服薬介助よりも配慮することが増えます。具体的には、以下のような7つのポイントに気をつけましょう。

服薬に納得してもらう
  • 病気の治療や体調管理に薬が必要なことを説明し、本人が納得してから介助を行う
  • 認知症の人は説明しても忘れてしまうことが多いため、繰り返し説明する
  • 説明しないと薬が必要なことがわからず、服薬しなくなってしまうこともある
服薬を本人の生活タイミングに合わせる
  • 薬を飲むのを拒否したときに無理やり飲ませても、状況が悪化してしまう可能性がある
  • 前もって医師に服薬時間をずらしても良いか確認しておき、服薬できそうなタイミングを狙うのも一案
薬を食事に混ぜない
  • 食べ物に混ぜてしまうと味が悪くなり、毒を混ぜられたと被害妄想が強まることがある
  • 食事を食べなくなる可能性もあるため、薬の服用はなるべく単独で行う
薬をゼリーやオブラートに包む
  • 通常の服薬介助と同じく、薬の量や味・形状によってはオブラートやゼリーに包むと飲みやすい
介助の方法と確認
  • 口腔内に水を含ませる
  • 嚥下反射で飲み込んでもらうため、スプーンで舌の上の奥の方へ入れる
  • 薬が口腔内に残っていないかも確認する
薬の形状が変えられるものは、飲みやすいものに変える
  • 唾液や少量の水でも溶ける「口腔内崩壊錠(OD錠など)」が増えてきている
  • 口から服用してもらうのが難しい場合、剤型の変更ができれば貼付薬・座薬などに変更してもらう
服薬を手伝ってもらう
  • 介護保険サービスを利用し、訪問看護師や訪問ヘルパーに服薬介助をしてもらったり、デイサービス中に服薬介助を行ってもらったりする

認知症の人は自分が飲む薬を忘れたり、どうしてこの薬を飲まなくてはならないのかを忘れたりしやすいです。服薬介助をする人は大変だと思いますが、「あなたにはこういう症状がありますので、治療のためにこの薬を飲みましょう」などと声をかけ、本人の納得を得てから服薬介助を行う必要があります。

もし、どうしても薬を飲んでくれない場合、介護保険サービスで訪問看護師などを呼んで説明してもらうなど、第三者を挟むことも効果的です。こうしたサービスを上手に活用しながら、本人が正しく薬を飲めるようサポートしていきましょう。

おわりに:服薬介助では、飲み込めたかどうかきちんと確認しましょう

服薬介助は、本人が管理しきれない服薬スケジュールや服薬の量を確認したり、オブラートやゼリーで包んで飲みやすくしたり、誤嚥や副作用がないか観察したりするといった細やかな配慮が必要です。特に、飲み込んだつもりでも、口の中に残っていたため後で誤嚥したり、服用後に突然副作用が出たりすることもあります。薬を飲んでいる間は本人から目を離さず、慎重に観察しましょう。

関連記事

この記事に含まれるキーワード

介護(19) 高齢者介護(6) 服薬介助(1)