自宅に設置する介護用の手すり、どうやって選べばいい?

2021/3/11

山本 康博 先生

記事監修医師

東京大学医学部卒 呼吸器内科医

山本 康博 先生

自宅に介護を必要とする高齢者がいる場合、いつも介助者が高齢者の側についているわけにはいきませんし、高齢者自身も一人で移動したいと思うことがあると思います。そのときに役立つのが、介護用の手すりです。この記事では、介護用の手すりの種類や選び方のポイントを解説します。

自宅に手すりを設置すると、介護にどう役立つの?

手すりは、被介護者が安全かつ快適な生活を送るために必要なものです。手すりの主な役割として、以下の3つがあります。

歩行の手助け
加齢とともに筋力や関節の機能が低下するため、素早く歩けなくなります。手すりにつかまることで、足腰にだけかかっていた体重を上半身にも分散することができます。全身のバランスを保ち、歩行しやすくする手助けになります。
動作の補助
椅子やベッドから起き上がるとき、階段を上り下りするときなどの上下移動になります。このような動作は、足腰の弱った高齢者にとって大きな負担になりがちです。手すりにつかまって上半身を支えることで、一連の動作のときに身体に負担がかかりにくくなります。また、手すりを使って自力で立ち上がったり、手すりを持ったまま方向転換したり、姿勢を保ったりすることもできます。
転倒・転落の防止
高齢者は、運動機能や筋力の衰えから、ちょっとしたことでバランスを崩しやすいです。若い人に比べて転落や転倒のリスクが高く、衝撃の度合いや打ちどころによっては骨折したり、後遺症が残ったりすることもあります。こうした怪我を防ぐためにも、手すりが有効です。多少ふらついても、手すりにつかまれば転倒や転落しなくて済みますし、長さのある手すりであれば、持ったまま前に進めるのが移動が楽になります。

加齢とともに徐々に身体機能が衰えてくる高齢者にとって、ベッドや椅子から立ち上がったり階段を上り下りしたりといった上下移動は大きな負担です。うまく身体を支えることができず、転倒や転落すれば大怪我につながることもあり、さらに若い人に比べて傷の治りが遅く、後遺症になる可能性もあります。

手すりは、こうした負担やリスクを軽減し、多少身体がふらついても手すりによって転倒や転落を防ぐことができます。また、手すりがあれば高齢者が一人で移動することもできますので、介助する人も楽ですし、高齢者自身のQOLの向上・維持にもつながります。

介護用の手すりの種類は?

屋内用として使われる手すりにはたくさんのタイプがあります。形状で大まかに分けると、だいたい以下の6つのタイプに分けられます。

水平型
地面に対して水平に設置するタイプです。「据え置き型」「据え置き組み合わせ型」などの形状があり、用途に合わせて使用します。屋外でもよく見られます。
玄関や廊下、トイレ、浴室など、さまざまな場所に設置され、短い距離の歩行や動作補助に適しています。手すりの位置が低すぎると、つかまる際に不安定な体勢になってしまうため、要介護者の体格を考慮して使いやすい高さに設置します。
I型(縦型)
いわゆる「突っ張り棒」のようなタイプの手すりです。床に対して垂直に設置するため、アルファベットの「I」のように見えます。上の方をつかみ、引っ張る力で立ち上がる動作を助けるため、玄関・トイレ・ドアなどに設置されています。また、壁のない場所にも家屋を傷つけることなく自由に設置できます。力を入れて握るため、素材や太さにはしっかりこだわりましょう。
L字型
水平型+I型で、アルファベットの「L」のように見える手すりです。立ち座りなど、上下の動作を多く行うトイレや浴室に最適です。手すりの位置が便座や浴槽に近すぎると、重心の移動が難しくなって立ち上がりにくくなるため、配置に注意が必要です。また、トイレにつける場合は、ペーパーホルダーの位置も考慮しながら設置場所を検討しましょう
階段用
階段の上り下りをスムーズにし、転落や転倒を防止する手すりです。自由に曲がるタイプの手すりであれば、利用者の握力や階段に合わせて角度を変えられて使いやすいです。製品によって、1個所だけ曲がるもの、複数個所が曲がるものなどさまざまありますので、住環境に合わせて選びましょう。
可動型
必要なときだけ手すりを引き出して使う手すりです。浴室やトイレの壁に設置することが多いです。同居の家族が使うときや、車椅子に移乗するときに邪魔にならず便利です。ただし、要介護者が手すりを引き出す・しまうという動作を毎回行わなくてはならない点に注意しましょう。
床置きタイプ
独立した、移動できる手すりです。要介護者が自分で好きな場所に置くことができます。壁に手すりを設置できない場合や、ベッドや布団・椅子などの側で使いやすい場所に設置できます。業者からのレンタルができ、購入しなくても良いというメリットがある反面、やや安定しにくいため、使うときに注意が必要です。

また、I型と水平型の組み合わせで、L型ではなく「突っ張り組み合わせ型」と呼ばれるタイプのものもあります。突っ張りタイプのI型を設置し、その間を水平型でつないだもので、壁のない場所でも自由に手すりを設置できます。

手すりを選ぶときにチェックすることは?

介護で使う場合、使う人が決まっているため、屋外にある誰でも使うタイプの手すりとは異なり、主に使う要介護者の身体状況や体格、住環境に合わせて選びます。具体的には、以下の5つのポイントを意識しましょう。

素材
木やステンレス、プラスチック、アルミなどがあるので、設置場所によって選びましょう。屋外のスロープなら錆びにくく丈夫なステンレス、水濡れしやすい浴室には樹脂がおすすめです。製品によっては、滑り止め加工や防水加工がされているものもあります。また、蓄光やLFD電球が内臓されたものなら、階段など室内の暗い場所でも見やすいです。
高さ
被介護者の身長や体重など、体型に合わせて選びます。歩行できるかや、車椅子を利用しているかなど、本人の状態によって最適な手すりの高さは異なります。特に、両手で握れる手すりなら姿勢が安定しやすいので、必要に応じてI型や水平型、バータイプを組み合わせて使うのがおすすめです。また、歩行補助のために手すりを設置する場合、一般的には地面から手すり上部までの高さは約75〜85cmがよいと言われています。
太さと形状
本人が握りやすい太さや形の手すりを選びましょう。目安としては約2.8〜3.5cm、手すりを握ったときに指先が軽く触れる程度の太さがよいと言われています。公共の場にある手すりは比較的太めに作られているので、自宅に設置する場合はやや細めと考えておくとよいでしょう。
一般的には上記のような円形の手すりが主流ですが、麻痺やリウマチなどで手すりを上手くつかめない場合、テーブルなどに手のひらや腕を置いて支えられるものがおすすめです。また、楕円に近いフラットなハンドレールなどを選ぶのも一つの方法です。
要介護者の身体状況
「手すりにつかまれば自力で移動できる」「介助があれば階段の上り下りができる」など、身体状況を考慮して手すりの設置場所や種類を決めます。玄関・階段・トイレ・浴室はもちろん、洗面所や居間などにも設置を検討しましょう。場合によっては、手すりのほかに踏み台やベンチを設置したほうがいいこともあります。また、要介護者が「どのように動くか」にも注目し、「押して立つ」「引いて立つ」などによっても異なります。設置にあたっては、ケアマネジャーなどの専門家に相談しながら決めるのも一つの方法です。
家の構造
自宅に手すりを取りつけるリフォームを行う場合、家の構造によっては十分な広さを確保できないこともあります。トイレに手すりを設置する場合も、手すりの位置やサイズによっては、逆に使いづらくなることもあります。家の広さが不十分な場合は、移動の邪魔にならないよう、跳ね上げ式や高さ調節機能などがあるタイプの手すりがおすすめです。

要介護者自身の体格や身長、握りやすさを考えて設置することが大切です。特に、握る動作が難しい麻痺やリウマチなどの疾患を抱えた人なら、テーブルタイプ、ハンドレールなどフラットなタイプのものを選ぶ必要があります。そのほか、住環境や室内の広さ、高さ、素材などを十分に考慮して選びましょう。

おわりに:自宅に設置する介護用の手すりは、使う人に最適なものを選びましょう

自宅に設置する手すりの場合、使う人に合わせたものを選ぶことが大切です。手すりの太さ、高さ、形状なども身長や体格に合わせて選びましょう。また、設置場所によって材質を選ぶのも大切です。屋外なら錆びにくく丈夫なステンレス、浴室なら樹脂など、長持ちして使いやすいものを選びましょう。住環境によっては、跳ね上げ式や引き出し式のものも検討してみてください。

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