記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
2021/3/3
記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
「介護疲れ」は、高齢者や障がい者などの介護をしている人が文字通り介護に疲れてしまうことを言います。介護疲れが重くなると、「介護うつ」といううつ病の一種に進行してしまうことがあります。この記事では、介護うつを招く原因とともに予防法を解説します。
「介護うつ」とは、高齢者や障がい者などの介護をしている人がうつ病を発症することを指しています。正式な病名ではないものの、うつ病の一種ですので症状の程度によって治療が必要です。一般的なうつ病と同じように、初期の状態では本人も周囲も気づきにくく、気づかないうちに症状が進行してしまうことが多いため注意が必要です。
介護うつでみられる症状として、以下のようなものがあります。
上記のような症状が1日中、そして連続して2週間以上続くようであれば、うつ病の可能性が高いと考えられます。症状が進行すればするほど日常生活に支障が出てしまうので、気になる兆候があれば早めに対策を取りましょう。
介護うつになってしまう原因として、経済的な負担や認知症の人を相手にする負担なども考えられますが、最大の要因は身体的・精神的負担であると考えられます。
介護者は、要介護者との関係だけでなく、他の家族・親族との関係や介護スタッフとの関係など、さまざまな人間関係の間で板挟みになりがちです。こうした人間関係が煩わしくなると介護者は介護を一人で抱え込むことになり、どんどん孤立していきます。また、要介護者との関係では、よかれと思ってやったことが伝わらずいらだったり、要介護者の言動を受け流せず怒鳴ってしまったりして、そのたびに自己嫌悪に陥る、といった問題が考えられます。
そんなとき、他の家族・親族が非協力的だと、介護者は「自分だけが介護することを強いられて自由がない」と、さらにストレスを抱えます。介護に関わるヘルパーやケアマネジャーとの相性が悪いため、介護サービスに不満があってもなかなか言い出せない人もいて、それが精神的な負担となるケースもあります。
一般的に、介護うつになりやすい人には以下のような特徴がみられると言われています。
在宅介護者のほとんどは介護の専門的な知識も経験も少ないのに、突然大変な重労働をこなさなくてはなりません。しかも、要介護者が認知症だった場合、せっかく世話をしてあげても感謝の言葉がないばかりか、罵声を浴びせられることもあり、大きなストレスを感じやすくなります。
高齢者や認知症の場合、献身的に介護しても症状がよくなったり、体力が元に戻ったりするわけではありません。この点も虚しさを感じてしまう要因となり得ます。介護が長期化するにつれてこうした介護者の負担が増加し、「いつまで続くのか」と終わりが見えない不安にもつながっていきます。
また、家族や親戚の介護をするにあたり、誰か一人に介護の負担が集中してしまうことも介護うつにつながります。作業を分担することはもちろん、介護について相談できる相手を持たないと、介護者は抱え込んで精神的にも身体的にも孤立していき、本人も周囲も気づかないうちにうつ病が進行してしまいかねません。
頑張りすぎから燃え尽き症候群を発症する例もあります。心身が限界に達したとき、突然やる気を失い、何もかも嫌になって投げやりな思考になったり、現状への怒りや不満がつのったりするものです。介護の最中にも起こりますが、要介護者が亡くなった後、一気にやることがなくなって燃え尽き症候群になってしまうケースもありますので、注意が必要です。
毎日の起床介助、座る場所や寝る位置を変える移動介助・体位介助、衣服の着脱、トイレや入浴の介助など、介護者は要介護者の身体を1日に何度も持ち上げたり、支えたりといった重労働を行わなくてはなりません。そのため、腰・膝・腕などに過剰な負担がかかってしまいます。また、散歩や通院に付き添うことによる疲れも発生します。
夜、しっかり眠って疲れを取ろうと思っても、夜中に何度もトイレ介助やおむつ交換で起こされ、十分な睡眠がとれない介助者も多くいます。このような状態が続くと、当然介護者の身体には非常に大きな負担が積み重なります。さらに介護者が仕事をしている場合、過労から体調不良を引き起こし、それがうつ病の引き金となるケースもあります。
その他の負担として、経済的な負担や認知症介護の負担が挙げられます。
経済的な負担として、在宅介護のために直接かかる紙おむつ・防水シーツ・介護食品などの負担があります。また、介護をするために仕事を辞めたり、仕事量を減らしたりすると、貯蓄や要介護者の年金に頼らざるを得ず、経済的な不安を抱えることもあります。
デイサービスなどの介護サービスは介護保険の支給がありますので、限度額内で使うという方法もありますが、支給までの間は先に払うことになるため、一時的に経済的な問題が生じる可能性もあります。
また、認知症の介護は認知症でない人の介護よりも介護者の負担が大きくなりやすいです。認知症でない人の場合、夜中に起きるのはせいぜいトイレぐらいですが、認知症の場合は徘徊や探しものなど、予想もつかないことで何度も起きて物音を立てることもあります。そのため、認知症介護の人は睡眠不足の問題も起こりやすい傾向があります。
また、要介護者が朝から晩まで同じことを繰り返したり、夜中に起きて探しものをするなど歩き回ったり、失禁が増えたり、介護者に暴言や暴力をふるったり、といったさまざまな症状に対応しきれず、介護者がどんどん疲弊してしまうケースは少なくありません。
介護うつを防ぐには、できるだけ上記のような原因を取り除くか、軽減することが大切です。以下にご紹介する5つのポイントに気をつけて、介護うつを予防しましょう。
介護うつはうつ病の一種で、高齢者や障がい者の介護をしている人が介護疲れののちに発症する疾患です。一般的に真面目で責任感が強く、几帳面な完璧主義者が発症しやすい傾向にあります。介護うつを防ぐためには、介護を一人でなく複数人ですることや、ストレスを上手に発散すること、介護サービスを上手に利用することなどが重要です。介護に関する情報を集め、行政の支援などを活用しましょう。