介護保険って、どんな制度なの?

2021/4/6

山本 康博 先生

記事監修医師

東京大学医学部卒 呼吸器内科医

山本 康博 先生

介護保険は2000年から施行された、比較的新しい制度です。少子高齢化が進んできたことを受け、増える高齢者に対する介護負担を社会全体で支えるために作られました。この記事では介護保険の概要や利用できる人、受けられるサービスについてご紹介します。

介護保険とは?

介護保険とは、介護を必要とする人が適切なサービスを受けられるように、社会全体で支え合うことを目的とする制度です。少子高齢化や核家族化が進んだ現代では、介護を必要とする人を家庭内だけで支えることが難しくなっています。そのため、被介護者の自立を支援したり、介護する家族の負担を軽減できるようサポートしたりすることで、介護者も被介護者も双方が安心して生活できる社会を目指して「介護保険法」が制定され、2000年4月から施行されました。

介護保険は単に身の回りの世話をする介護だけでなく、被介護者の自立をサポートする「自立支援」、被介護者本人が自由に選択して介護サービスを総合的に受けられる「利用者本位」、納めた保険料に応じてサービスや給付金を受けられる「社会保険方式」の3つを基本の柱として成り立っています。すべての高齢者が人間としての尊厳を保ち、自立した生活を送れるよう、地域社会で支え合いながら介護サービスの充実を目指すことが介護保険制度の基本理念と言えます。

介護保険は、40歳になった月からすべての人が加入します。年齢によって区分が分かれていて、65歳以上は「第1号被保険者」、40歳〜64歳は「第2号被保険者」となります。そのため、たとえ要介護状態になったとしても、39歳以下の人は介護保険を利用できません。第1号被保険者と第2号被保険者の違いは、以下の通りです。

第1号被保険者
要介護認定を受けると、その程度によって、日常生活の支援や介護サポートを受けるときに介護給付を受けることができます。市区町村から納付通知書が届いて保険料を納めるか、年金からの天引きで保険料を支払います。保険料は住んでいる地域や所得に応じて基準額が異なるため、市区町村の公式サイトを確認するか、問い合わせる必要があります。
第2号被保険者
末期がん・関節リウマチ・脳血管疾患などを含む全16種類の特定疾病のいずれかに該当し、要介護認定を受けた人は、介護給付を受けることができます。厚生労働省が一人当たりの介護保険料の負担率を設定し、それに基づいて計算した保険料額を、健康保険組合や共済組合などの医療保険者に通知します。通知を受けた医療保険者が、第2号被保険者から医療保険料と一緒に介護保険料を徴収するという仕組みです。

健康保険に加入している人の介護保険料額は、被保険者の給与の月額を全50等級に分けた区分(標準報酬月額)によって算定され、健康保険料と同じく給与から天引きされます。ただし、被保険者と折半する形で、事業主も介護保険料を負担することになります。一方、国民健康保険に加入している人は、医療保険料に上乗せする形で請求されます。

市区町村ごとに計算方式が異なるため、所得や固定資産額を考慮する場合もあれば、それらに関係なく加入者一人ひとりに均等に保険料を賦課される場合もあります。これらの納めた保険料と、国や市区町村の公費を1:1の比率で合わせ、介護の費用に充て、利用者が実際に支払う介護サービスの負担額は全体の1割程度に抑える、という仕組みです。

介護保険で受けられるサービスの種類は?

実際に介護保険で受けられるサービスは、「在宅系サービス」「施設系サービス」「地域密着型サービス」「その他のサービス」の4種類です。それぞれのサービス内容について解説します。

在宅系サービス

自宅で暮らす高齢者が受ける介護サービスです。ポピュラーなものとしては「訪問介護」「通所介護」があります。

訪問介護
ホームヘルパーが自宅を来訪し、掃除・洗濯・調理・買い物代行・病院への付き添いなどを行います。主に独居高齢者、または高齢者のみが暮らす世帯が利用するサービスです。
通所介護(デイサービス)
平日または土曜日中の間、高齢者を預かってくれるサービスで、食事や入浴、レクリエーションなどが提供されます。リハビリメニュー中心で機能回復に重点を置いたもの、認知症患者さんへの対応を専門としたものなど、さまざまな特徴があります。家を留守にしがちな家族にとっても、安心して利用できるサービスです。

そのほか、一定の期間だけ高齢者が施設に入居する「短期入所生活介護(ショートステイ)」なども含まれます。何らかの事情で家族が数日間家を空けなくてはならないときや、介護疲れをリフレッシュしたいときなどに役立つサービスです。

施設系サービス

自宅で暮らすことが困難な高齢者が利用するサービスです。介護保険法では「特別養護老人ホーム(特養)」「介護老人保健施設(老健)」「介護療養型医療施設」があります。

特別養護老人ホーム(特養)
身体の機能の衰えが激しく、認知症も進んでいる高齢者が入所する施設です。多くの高齢者がこの施設で最期を迎えます。現在の介護保険法では、要介護3以上と認定されていることが入所の条件です。
介護老人保健施設(老健)
理学療法士や作業療法士らの指導のもと、リハビリテーションによる機能回復を目指しながら生活する施設です。交通事故や長期入院などの影響で、すぐに社会復帰できない高齢者が一時的に生活する場所です。原則として3カ月で退去します。
介護療養型医療施設
高度な医療を必要とする高齢者向けの施設で、実際に病院と併設されていることが多いです。長期入院が慢性化して介護保険の財政を圧迫しているため、2018年の法改正で廃止が決まりました。今後は「介護医療院」へと方向転換を図ることになっています。

地域密着型サービス

高齢者が住み慣れた地域で末永く自分らしく暮らしていけるよう、その地域の特性を活かし、介護事業者のほかボランティアなども含めた協力を得ながら提供される介護サービスです。主に「要支援」の高齢者を対象とした介護予防サービスとして、身体を動かすエクササイズや、脳機能維持のトレーニングなど、さまざまな専門家を招いた取り組みが各自治体によって行われています。

ほかにも、在宅系の介護サービスで、通常のデイサービス機能に加えて訪問介護や夜間の宿泊にも対応する「小規模多機能型居宅介護」や、認知症高齢者が集団で生活し、コミュニケーション構築や機能訓練などに努める「認知症対応型共同生活介護(認知症グループホーム)」などのサービスも提供されています。

その他のサービス

その他、車椅子・杖・昇降機能がついたベッドなどの介護器具をレンタルしてくれる「福祉器具貸与サービス」や、移動式浴槽を積んだ車で身体の不自由な高齢者の自宅にお風呂を提供する「訪問入浴サービス」などがあります。

また、自宅の階段や廊下に手すりを取りつけたり、トイレを和式から様式に交換したり、といった住宅改修費も最大20万円まで介護保険が適用されます。もちろん適用範囲は高齢者用のリフォームのみですが、個人負担が1割の場合、わずか2万円の出費となりますので、高齢者とその家族の負担を大きく減らすことができます。

介護保険を利用できる人は?

最初にも軽くご紹介したとおり、介護保険を利用できるのは以下のような人です。

第1号被保険者
65歳以上で、原因を問わず介護が必要であると認定された人
第2号被保険者
40〜64歳で、老化が原因とされる特定疾病により介護が必要となった人

第1号被保険者である65歳以上の人には、介護保険被保険者証が郵送されます。一方、第2号被保険者にはこの保険者証は届きません。第2号被保険者が介護保険の対象となるための特定疾病とは、以下の16種類の疾患です。

  • 末期がん、脳血管疾患(脳出血・脳梗塞など)、筋萎縮性側索硬化症(ALS)
  • パーキンソン病関連疾患、脊椎小脳変性症、多系統萎縮症(シャイ・ドーレガー症候群)
  • 糖尿病性腎症(または網膜症、神経障害)、閉塞性動脈硬化症
  • 慢性関節リウマチ、後縦靭帯骨化症、脊柱菅狭窄症
  • 骨粗鬆症による骨折、早老症(ウェルナー症候群)
  • 初老期における認知症(アルツハイマー病、ピック病、脳血管性認知症、クロイツフェルト・ヤコブ病など)
  • 慢性閉塞性肺疾患(肺気腫・慢性気管支炎・気管支喘息・びまん性汎細気管支炎)
  • 両側の膝関節や股関節に著しい変形を伴う変形性関節炎

このように、40〜64歳の人は介護保険を利用できる疾患が非常に限られています。これらの症状はまず検査を受け、医師の診断を受ける必要があるため、被保険者証を持たなくても介護保険が適用となるかどうかの判断を公的に行います。一方、65歳以上の人は、原因を問わず要介護認定を受けた時点で、介護サービスを利用するときは介護保険が適用されます。ここが第1号被保険者と第2号被保険者との大きな違いです。

おわりに:介護保険制度は、高齢者が社会で生きやすくするための制度です

介護保険制度は、2000年から始まった比較的新しい制度で、少子高齢化が進む日本で、高齢者の負担を家族だけに背負わせず、地域社会全体で支えていくことを目的としています。被保険者は40〜64歳の「第2号被保険者」と、65歳以上の「第1号被保険者」に分けられます。受けられるサービスは、デイサービスなどのよく知られたものを始め、訪問入浴サービスなども含まれます。高齢者向けのリフォームも、20万円までは適用となります。

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