糖尿病の人、予備軍の人に~日常生活に取り入れやすい身体活動~

2017/6/15

山本 康博 先生

記事監修医師

MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長
東京大学医学部卒 医学博士
日本呼吸器学会認定呼吸器専門医
日本内科学会認定総合内科専門医
人間ドック学会認定医
難病指定医
Member of American College of Physicians

山本 康博 先生

運動や身体活動とは、歩く、踊る、庭仕事をするなど、体を動かすものすべてのことを指します。定期的な身体活動(運動)は、すべての人にとって重要ですが、糖尿病患者や糖尿病リスクのある人にとっては特に重要です。

ここでは、糖尿病やその予備軍の人にオススメの、運動が苦手な人でもできる、日常生活に取り込みやすいアイデアをご紹介します。

冷凍宅配食の「ナッシュ」
冷凍宅配食の「ナッシュ」

運動とはスポーツだけではない!?

ここでいう運動は、マラソンを走ったり、100キロのベンチプレスを挙げたりする必要はありません。

目標は体を動かすことなので、ガーデニングからテニス、友人とのウォーキングまで、あなたが楽しめることを積極的に行い、それを続けることが大切です。どのくらいの活動をすれば良いのでしょう? また、どんな選択肢があるのでしょうか? ここでそれをお伝えします。

糖尿病の人にとって運動は重要!!

日常的に体を動かすことは、適切な食事計画、処方された医薬品の服用、ストレス管理とともに、糖尿病を管理するうえで重要な部分です。

なぜ運動がそれほど重要なのでしょうか? それは、血糖値を下げるのに加えて、たくさんのメリットがあるからです。

運動を行うと、細胞はインスリンに対してより敏感になる(インスリンが効きやすくなる)ので、より効率よく働くことができるようになります。また、細胞は、運動中にインスリンから完全に分離されたメカニズムを使用して、血液の中からぶどう糖を除去します。

したがって、運動を継続すると、血糖値を下げてHbA1C(ぶどう糖と結合する血液中のヘモグロビンの割合)を改善することができます。 結果として糖尿病の内服薬やインスリンの量を減らすことができます。

定期的な運動のメリットには、以下のようなものがあります
・血圧とコレステロールを下げる
・心臓病や脳卒中のリスクを下げる
・カロリーを燃焼して、体重を減らしたり維持したりするのに役立つ
・日常生活のためのエネルギーを増やす
・よく眠れるようになる
・ストレスを和らげる
・心臓を強化し、血液循環を改善する
・筋肉や骨を強化する
・関節を柔軟にする
・転倒を防ぐためにバランスを改善する
・うつ病の症状を軽減し生活の質を改善する

糖尿病の人にとってオススメの運動は?

糖尿病の人にオススメの運動と、日常生活の中に運動を取り入れる方法を紹介します。

まずは、安全に始めることが重要です。一度も運動をしたことがない、しばらく運動から離れていた人は、軽い運動から始めましょう。

糖尿病の管理のために、2種類の運動(有酸素運動と筋力トレーニング)が効果的です。

有酸素運動

血糖値や血圧を下げ、コレステロール値を改善することになり、心臓や骨を強くし、ストレスを和らげ、血液循環を改善し、心疾患のリスクを減らします。

有酸素運動をどのくらい行う?

適度な強さの有酸素運動を30分(少なくとも1週間に5日、1週間あたり150分間)行うことを目標にしましょう。

適度な強さとは、運動中に話すことができるものの、歌うことはできないくらい動いている状態のことです。

1週間に少なくとも3日間は上記の有酸素運動を行います。

有酸素運動を開始するときは?

もし、あなたが最近あまり運動をしていなかった場合、1日に5分から10分の運動から始めるてみましょう。その後、毎週ごとに数分ずつ運動時間を増やしましょう。時間が経つにつれて、運動が改善され、より多くのことができるようになっていることに気づきます。

有酸素運動の時間を見つけるには?

忙しくて、1日のうちに30分の運動ができない場合、10分以上の運動に分けて取り組んでも良いとされます。研究によると、分割して運動に取り組んだときと、30分連続して運動したときとで、健康上のメリットはあまり違わないことが明らかになっています。

例えば、毎食後10分くらい早歩きすることはできませんか。あるいは、仕事に行く前に朝15分間有酸素運動をし、帰宅後さらにもう15分間することでもいいでしょう。

体重を減らし、その体重を維持したいと考えている場合、ほとんどの人は1日あたり60分間の有酸素運動を行う必要があります。

有酸素運動にはどんなものがある?

以下は、有酸素運動の例です。
・早歩きする
・自転車/屋内でのエアロバイク
・踊る
・負荷の軽い有酸素運動
・水泳もしくはアクアビクス
・テニス
・階段を登る
・ジョギング/ランニング
・ハイキング
・ボート漕ぎ
・アイススケートまたはローラースケート
・クロスカントリースキー
・ガーデニング

筋力トレーニング

筋力トレーニング(ウエイトトレーニングとも呼ばれる)は、インスリンに対して体をより敏感にし、血糖値を下げることができます。強い筋肉や骨を維持するのに役立つとともに、骨粗鬆症や骨折のリスクを軽減します。

体の筋肉量が多ければ多いほど、安静にしているときでも燃焼するカロリーが増えます。

筋力トレーニングで筋肉の衰えを防ぐことで、年齢を重ねても自立した生活を維持し続けることができます。

筋力トレーニングをどのくらい行う?

1週間につき少なくとも2回、有酸素運動に加えて筋力トレーニングを行いましょう。

以下に、オススメの筋力トレーニングの具体例を紹介します。
・ジムのウエイトマシンもしくはフリーウエイト
・家庭にある缶詰や水のボトルなど軽量の物を持ち上げる
・自分の体重を使って筋肉に負荷をかける健康体操や運動(腕立て伏せ、腹筋運動、スクワットなど)

おわりに:糖尿病の改善のために運動を続けることが必要

糖尿病やそのリスクのある人は、運動の苦手な人も多くいます。まずは、運動できる時間を見つけて、少しずつ行いましょう。そのとき、好きな活動を選ぶことも大切です。

運動が楽しいと思えることが継続の鍵になります。

関連記事

この記事に含まれるキーワード

運動(175) 糖尿病(273) 有酸素運動(61) 筋力トレーニング(8) 1型糖尿病(26)