更年期の眠りの乱れと自律神経を整える生活習慣とは

2026/6/10

山本 康博 先生

記事監修医師

MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長
東京大学医学部卒 医学博士
日本呼吸器学会認定呼吸器専門医
日本内科学会認定総合内科専門医
人間ドック学会認定医
難病指定医
Member of American College of Physicians

山本 康博 先生

更年期に眠りが浅くなりやすい理由

更年期に入ってから、寝つきが悪い、夜中に何度も目が覚める、朝起きても疲れが残ると感じる人は少なくありません。更年期とは、閉経前の5年間と閉経後の5年間を合わせた時期のことを指します。日本人女性の閉経は一般的に50歳前後とされていますが、時期には個人差があります。

この時期は、卵巣の働きが少しずつ低下し、エストロゲンという女性ホルモンが大きくゆらぎながら減っていきます。エストロゲンの変化は、ほてり、発汗、動悸、気分の落ち込み、眠れないといった不調に関係するとされています。夜間に急なほてりや汗が出ると、眠りが途中で途切れやすくなります。また、眠れない日が続くことで、寝床に入ること自体が不安になり、さらに眠りが浅くなることもあります。

ただし、更年期の不眠は女性ホルモンだけで説明できるものではありません。加齢による睡眠の変化、仕事や家事、親の介護、子どもの独立、夫婦関係などのストレスも影響します。介護職や家族介護者の場合、夜間の見守りや緊張感が続き、自分の休息が後回しになることもあります。まずは「気のせい」と片づけず、体と生活の変化が重なって起こる不調として受け止めることが大切です。

眠りの乱れと自律神経の関係

睡眠には、体を活動モードにする交感神経と、休息モードにする副交感神経の切り替えが関わっています。日中に緊張が続いたまま夜を迎えると、体は疲れているのに頭が休まらず、寝つきにくくなることがあります。更年期には、ほてりや発汗、動悸など自律神経の乱れに似た症状が出ることがあり、これが睡眠の質を下げる一因になります。

また、眠れないことで日中の集中力が落ちたり、気分が沈みやすくなったりすると、さらにストレスが増えることがあります。このような悪循環を防ぐには、睡眠時間だけでなく、朝起きたときに休めた感覚があるか、日中に強い眠気がないかを確認することが役立ちます。

介護の場面では、本人が不眠を訴えなくても、昼間にぼんやりする、食欲が落ちる、ささいなことで不安が強くなるなどの変化として表れることがあります。本人も周囲も「年齢のせい」と決めつけず、生活リズムや夜間の症状を一緒に振り返ると、対策の糸口が見つかりやすくなります。

まず見直したい睡眠環境と日中の過ごし方

更年期の眠りを整えるためには、特別なことを一度に始めるより、続けやすい生活習慣から整えることが現実的です。成人では6時間以上を目安に睡眠時間を確保し、眠って休めた感覚も大切にするとされています。ただし、必要な睡眠時間には個人差があるため、数字だけにこだわりすぎないようにしましょう。

朝は、起きたらカーテンを開けて光を浴び、体内時計を整えます。日中は、息が少し弾む程度の散歩や軽い体操など、無理のない運動を習慣にすると、寝つきや睡眠の深さを助けることがあります。介護中でまとまった運動時間が取れない場合は、買い物の行き帰りを少し歩く、家の中で肩回しや足踏みをするなど、小さな動きを積み重ねてもよいでしょう。

夜は、就寝直前のスマートフォンや明るすぎる照明を控え、寝室を暗めで心地よい温度に整えます。入浴は、熱すぎない湯にゆっくりつかり、体のほてりが落ち着いてから寝床に入ると眠りに入りやすくなります。カフェイン、飲酒、喫煙は眠りを妨げることがあるため、夕方以降のとり方を見直します。夜間介護がある家庭では、家族内で担当を交代する、訪問介護やショートステイなどを相談するなど、眠る時間を確保する工夫も大切です。

食事と体調記録で不調のパターンをつかむ

更年期のセルフケアでは、食事を極端に制限するより、欠食を避け、主食、主菜、副菜を組み合わせることが基本です。たんぱく質を含む魚、肉、卵、大豆製品、乳製品を適量とり、野菜や海藻、きのこ類も取り入れると、日中の活動を支える食事になります。夜遅い食事や食べ過ぎは眠りを妨げることがあるため、夕食の時間が遅くなる日は量を軽めにするなど調整しましょう。

体調記録も役立ちます。眠れなかった日だけを細かく反省するのではなく、就寝時刻、起床時刻、夜中に目覚めた回数、ほてりや発汗、気分の落ち込み、飲酒やカフェイン、介護で起きた回数などを簡単に書きます。数週間続けると、暑さ、緊張、夜遅い食事、介護の予定など、眠りを乱しやすい条件が見えやすくなります。

記録は、医療機関に相談するときにも役立ちます。症状を正確に伝えようとすると負担になりますが、メモがあれば「週に何回くらい眠れないか」「ほてりで起きるのか、不安で眠れないのか」を説明しやすくなります。

医療機関に相談する目安と治療の選択肢

生活を整えても不眠が続き、日中の仕事、介護、家事に支障が出る場合は、産婦人科や内科、睡眠を扱う医療機関に相談しましょう。更年期症状としての不眠だけでなく、甲状腺の病気、貧血、うつ状態、睡眠時無呼吸症候群、むずむず脚症候群などが関係していることもあります。大きないびきや呼吸が止まるように見える、脚の不快感で眠れない、気分の落ち込みが強いときは、早めの相談が安心です。

更年期障害の治療では、まず生活習慣の見直しや心理的な支援を行い、症状に応じて薬物療法が検討されます。ホルモン補充療法、漢方薬、睡眠薬や抗不安薬などが選択肢になることがありますが、持病や既往歴、症状の種類によって向き不向きがあります。自己判断で市販薬やサプリメントを増やす前に、医師や薬剤師へ相談しましょう。

胸の痛み、強い動悸、呼吸困難、意識が遠のく、急な片側の手足の動かしにくさ、激しい頭痛などがある場合は、更年期だけと考えず、速やかに医療機関へ相談してください。更年期の眠りの乱れは、我慢するしかないものではありません。生活を少しずつ整え、必要に応じて医療につなげることで、日中の過ごしやすさを取り戻しやすくなります。

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