授乳中に発熱と乳房の痛みがあるときのケアと相談の目安

2026/6/30

山本 康博 先生

記事監修医師

MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長
東京大学医学部卒 医学博士
日本呼吸器学会認定呼吸器専門医
日本内科学会認定総合内科専門医
人間ドック学会認定医
難病指定医
Member of American College of Physicians

山本 康博 先生

乳房の張りと乳腺炎の違いを整理する

授乳中は、母乳がたまって乳房が張る、しこりのように感じる、授乳時に痛むといった変化が起こることがあります。両側が全体的に張り、授乳後に軽くなる場合は、母乳の分泌と排出のバランスが一時的に崩れている可能性があります。一方、片側の一部が赤く腫れ、熱感と痛みがあり、発熱、寒気、だるさを伴う場合は、乳腺の炎症が進んでいることがあります。現在は、母乳のうっ滞から炎症、細菌性乳腺炎、膿瘍までを連続した状態として捉える考え方があります。症状の強さや経過には個人差があるため、強い痛みを我慢して授乳を続けるのではなく、早めに助産師や医師へ相談します。

症状が軽い段階でのセルフケア

授乳や搾乳は、赤ちゃんが必要とする量を基本とし、乳房を空にしようと過剰に搾り続けないことが大切です。強いマッサージやしこりを押しつぶすような刺激は、組織のむくみや痛みを悪化させる可能性があります。授乳前後に楽な姿勢を整え、赤ちゃんが乳房を深くくわえられているかを確認します。炎症と腫れが強いときは、布越しに短時間冷やすと楽になることがあります。休息と食事、水分を確保し、家族は授乳以外の家事や育児を分担します。乳首に傷がある、授乳のたびに強く痛む、赤ちゃんの体重増加が気になる場合は、母乳外来などで授乳方法を見てもらいます。搾乳器を使う場合は、乳頭に合うサイズを選び、強すぎる吸引を避けます。部品は製品の説明に沿って洗浄し、家族が準備を手伝うと休息を確保しやすくなります。

発熱があるときの授乳と薬

乳腺炎が疑われる場合でも、一般的には授乳を直ちに中止する必要はありません。ただし、母親の状態、乳房の傷、赤ちゃんの健康状態、使用する薬によって判断が異なります。国立成育医療研究センターは、母乳栄養の利点と薬による影響を理解したうえで、授乳の継続、一時中止、断乳を決めることを勧めています。鎮痛薬や抗菌薬の中には授乳中に使用できるものがありますが、市販薬には複数の成分が含まれる場合があります。成分名、服用量、赤ちゃんの月齢を医師や薬剤師へ伝え、自己判断で薬を重ねて使わないでください。授乳を一時中止する指示が出た場合は、再開方法も含めて相談します。

医療機関で行われる確認と治療

診察では、赤みの範囲、しこり、乳頭の傷、発熱の経過、授乳状況を確認します。細菌性乳腺炎が疑われる場合は抗菌薬が処方されることがあります。膿がたまる乳腺膿瘍では、超音波検査を行い、針や小さな切開で排膿することがあります。抗菌薬を開始しても改善しない、同じ場所で繰り返す場合は、菌の検査や画像検査が検討されます。赤みが長く続く、皮膚のくぼみや乳頭からの血性分泌がある場合などは、乳腺炎以外の病気との区別も必要です。受診先は産婦人科、乳腺外科、母乳外来など地域によって異なるため、出産施設へ連絡すると案内を受けやすくなります。受診時には、発熱の始まった時刻、赤みの広がり、授乳や搾乳の回数、使用した薬を伝えます。赤みの範囲を写真で残しておくと、広がっているかを確認しやすい場合があります。

早めの受診が必要な状態

三十八度以上の発熱、悪寒、強いだるさ、赤みや痛みの拡大、授乳や搾乳が難しいほどの痛みがある場合は、当日中を目安に医療機関へ相談します。水分がとれない、意識がぼんやりする、呼吸が苦しい、脈が速く立っていられない場合は、重い感染症の可能性があるため緊急対応が必要です。抗菌薬を飲み始めても一日から二日で改善しない、症状が急に悪化する場合も再診します。しこりが硬く大きくなる、波打つように触れる、同じ場所の炎症を繰り返す場合は、膿瘍や別の病変を確認するため、超音波検査などが必要になることがあります。赤ちゃんが哺乳できない、尿が少ない、ぐったりしている場合は、小児科への相談も必要です。

回復のために家族ができる支援

授乳中の発熱では、母親が休める環境をつくることが重要です。家族は食事と飲み物の準備、上の子の世話、受診の付き添いを担い、授乳以外の負担を減らします。乳房の状態を何度も確認することは本人の負担になるため、希望を聞きながら支えます。症状が軽くなっても、授乳時の痛みや過剰な母乳分泌が続く場合は、再発予防のために授乳姿勢や搾乳方法を見直します。強くもむことを基本にせず、炎症を落ち着かせながら必要な母乳移動を保つことが、現在のケアの考え方です。再発したときは、授乳間隔を極端に空けていないか、搾乳量が多すぎないか、乳頭の傷やポンプのサイズに問題がないかを専門職と確認します。

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