記事監修医師
前田 裕斗 先生
2017/7/19 記事改定日: 2018/4/24
記事改定回数:1回
記事監修医師
前田 裕斗 先生
ロタウイルスをご存知ですか?感染すると腹痛や下痢などの症状を引き起こしますが、ノロウイルスと違い、主に乳児や幼児が感染する可能性が高いのです。この記事ではロタウイルスの症状や感染した際の対処法、ワクチンについてご紹介していきます。
ロタウイルスの症状は発熱、嘔吐、水っぽい便を伴う下痢、腹痛などで、中でも水のような多量の下痢便が特徴的です。また便の色も白っぽくなることから、白色便性下痢ともいわれます。
下痢や嘔吐により脱水症状になることがあり、合併症として、けいれん、肝機能異常、急性腎不全、脳症、心筋炎などが起こることもあります。意識の低下やけいれん等の症状が見られたら、速やかに、近くの医療機関を受診しましょう。
しかし、症状はだいたい3~8日間で治まり、多くの場合は重症化せず、乳児がかかっても死亡する可能性は極めて少ないといわれています。
脱水症状を示す兆候には以下のようなものがあります。子供や自分の症状を判断するときの参考にしてください。
症状が続く、もしくは悪化した場合は医師の診察を受けましょう。また、症状が軽度でも赤ちゃんや高齢者が感染してしまった場合は、症状の悪化を防ぐためにも医師に相談することをおすすめします。
現在、ロタウイルスに効果のある抗ウイルス剤はないため、脱水を防ぐための水分補給や体力を消耗したりしないように栄養を補給することなどが治療の中心になります。
ロタウイルスは、胃や呼吸器の疾患を引き起こすレオウイルス科のウイルスの一種で、ウイルスが流行するのは3月から5月の春先にかけてです。
ウイルスは、付着したものに触れたり、それらを食べたりすることで感染します。またウイルスに感染した人やその人が使ったものに触れることでも感染し、人が多く集まる場所(学校、病院、空港、駅など)では感染する確率が高くなります。
もし自分や子供がロタウイルスにかかったら他人にうつさないように、人ごみを避けて生活しましょう。感染を広げないために、オムツを交換するときには使い捨てのゴム手袋などを使い、捨てる場合はポリ袋などに入れます。
手洗いするときは指輪や時計をはずしてから、せっけんで30秒以上もみ洗いしましょう。また、ロタウイルスにはアルコールなどの消毒薬ではあまり効き目がありません。衣類が便や吐物で汚れたときは、次亜塩素酸ナトリウム(家庭用塩素系漂白剤)でつけおき消毒した後、他の衣類と分けて洗濯しましょう。
そして、脱水症状が深刻な場合は病院で点滴をうけたり、入院が必要になる場合があります。脱水症状を予防するためにこまめな水分補給が大切です。スポーツドリンクや経口補水液などを飲むとより効果的ですし、子供の場合はアイスキャンディーなどを食べさせても良いでしょう。
ただし、水分補給時には利尿作用のあるカフェインやアルコールの摂取は避けるようにしてください。
大人であれば、発熱や腹痛の痛みを和らげるためにアスピリンやイブプロフェンなどの市販薬を使用してもかまいませんが、薬の使用はなるべく医師の許可をもらってからにしましょう。
赤ちゃんの場合はワクチンの投与が有効です。日本では、2種類のロタウイルスのワクチン(単価と5価)が承認されていて、任意で接種を受けることができます。
接種期間は、単価ロタウイルスワクチン(2回接種)の場合は生後6~24週の間、5価ロタウイルスワクチン(3回接種)の場合は生後6~32週の間です。ただし、どちらのワクチンも1回目の接種は14週6日までが推奨されます。詳細については、医療機関にご相談ください。
ワクチンは少量のロタウイルスを含んでおり、これらが体内に取り込まれ免疫が形成されます。ワクチンのロタウイルスは弱体化されており、乳児はワクチンを打っても感染することは通常ありません。
ワクチンによる副作用はそれほど多くはみられませんが、接種を受けてから落ち着かなくなったり、過敏になったり、軽い下痢を発症したりする赤ちゃんもいます。
たとえワクチンを打っても100%ウイルスの感染を予防できるわけではありませんが、ワクチンを打っておくことで、感染してもワクチンを接種しなかった場合に比べて症状を軽くすることができます。
※ロタウイルスワクチンは、2020年10月1日から定期接種となります。
▼ 厚生労働省 ロタウイルスワクチンQ&A(2020年8月出生の方についての注意事項)
ロタウイルスワクチンを接種する際、下記のようなワクチンを同時接種をすることで予防接種の手間を減らすことができます。
肺炎球菌によって罹る細菌性髄膜炎や菌血症などの重い感染症を予防するためのワクチンです。90種類以上の肺炎球菌の中でも、子供に重い病気を引き起こす可能性の高い種類を選別して作られています。
生後2ヶ月から接種できます。肺炎球菌による髄膜炎は5歳くらいまでは罹る可能性があり、約半数が0歳代で罹るといわれています。費用は一般的に4万円程度かかりますが、各自治体から助成金が出る場合もあるので、事前に確認してみましょう。
B型肝炎ウイルスに感染することで起きるB型肝炎を予防するためのワクチンです。B型肝炎が慢性化すると肝臓癌や肝硬変などを引き起こす可能性があり、日本肝臓学会によると、年間約1万人が新しく感染しているとされています。
B型肝炎ワクチンの接種は合計3回行い、1回目を生後2ヶ月、2回目を生後3ヶ月、3回目は生後7~8ヶ月に受けます。日本ではB型肝炎ワクチンの接種は、2016年10月から任意接種から定期接種に移行しており、WHO(世界保健機関)もB型肝炎の予防接種をすべての乳児が受けることを推奨しています。そのため、平成28年4月1日以降に生まれた0歳児の場合、費用は基本的にかかりません。
ロタウイルスは衛生環境の差に関係なく、世界中の人々に広く感染しています。ロタウイルスを予防する方法は、普段の生活においていくつかのポイントに気をつけることと、病院でのワクチンの接種があります。家族に感染者がいる場合や外出の際にも、以下の予防法を実践するとよいでしょう。
春先は風邪だけでなく、ロタウイルスの感染にも注意しましょう。手洗いを徹底し、赤ちゃんの場合はワクチンを接種することをおすすめします。ロタウイルスに感染した場合は、医師の診察を受け、自宅で安静にし水分補給を忘れないようにしましょう。感染を広げないために、周囲にいる人たちも上記の予防策を行うようにしてください。