記事監修医師
東京大学医学部卒 医学博士
顔の目立つところにできると、気になって仕方ない「ニキビ」。このニキビを治すには、どんな方法が効果的なのでしょうか?高校生のニキビ、大人ニキビ、男ニキビなど種類別に詳しく解説します。
高校生や中学生など思春期の頃にできるニキビは、ホルモンバランスの影響が関連しています。第二次性徴期のこの時期、男の子は男性ホルモン(アンドロゲン)が増えたことでニキビが発生し、女の子は女性ホルモンのプロゲステロンが皮脂の分泌を活性化させるためにニキビができます。
そんな思春期ニキビを治す方法として、以下のことを心がけてみてください。
ニキビを治すには、正しい洗顔をすることが非常に大切です。ニキビが大量にできるために洗顔の回数を増やす子もいますが、洗顔は1日2回に留めてください。肌表面のバリアが壊れ、ニキビができやすくなってしまいます。
洗顔の際は、洗顔料をしっかり泡立て、肌の上で泡を転がすように優しく洗いましょう。こするように洗顔したり、スクラブ入りの洗顔料を頻繁に使うのはNGです。洗顔後は洗い残しがないようよくすすぎ、きちんと保湿してください。
ファストフードやスナック菓子、揚げ物、ケーキなどの脂っこい食べ物や糖分の多いお菓子は、ニキビの原因である皮脂の分泌を誘発します。なるべく野菜中心の栄養バランスのとれた食事を心がけましょう。
肌のターンオーバーを促すホルモンは、夜の22時〜深夜2時にかけて分泌されると言われています。この時間には就寝しましょう。
高校生くらいの時期は見た目を非常に気にするため、「ニキビができると潰す!」という子も少なくないようですが、これは炎症の原因となるのでNGです。特に指で潰した場合、指の雑菌が入ってしまう恐れがあります。
大人のニキビは、高校生の頃のニキビとは発生メカニズムが違います。高校生のニキビは過剰な皮脂分泌が原因で起こるため、おでこや鼻、頬など皮脂分泌の多いところにできますが、大人ニキビは口周りやあご、首などの皮脂分泌の少ないところにできる傾向にあります。これは自律神経やホルモンバランスの乱れによるニキビで、基本的に治す方法は以下になります。
高校生くらいの時期のニキビは丁寧な洗顔で改善することが多いですが、大人のニキビは乾燥肌や男性ホルモンの増加が根本的な原因です。しつこい大人ニキビを治すためには、女性ホルモンの分泌を促し、男性ホルモンの量を抑制するホルモン療法が最も効果的な方法となっています。
大人ニキビの原因であるホルモンバランスや自律神経の崩れは、主に生活習慣の乱れが原因で起こります。脂っこい食事や糖質の多い食事はもちろん、お酒の飲み過ぎによって肌を守るビタミンが届かなくなることも、主要因と考えられています。なるべく1日3食規則正しく摂り、栄養バランスも振り返ってみましょう。また、ストレスの溜めすぎや睡眠不足、過度なダイエットも体内のバランスを崩す原因となります。
男性ホルモンの分泌量の多い男性は、女性よりもひどいニキビに悩まされる傾向にあります。そんな男のニキビを治す方法としては、以下がポイントになります。
やり方は高校生のニキビの場合と同じです。綺麗に手を洗ったら、洗浄力の強すぎない洗顔料を使い、しっかり泡立てて泡で洗ってください。その後はよくすすぎ、清潔なタオルで拭きましょう。洗顔のしすぎはNGです。
男性は女性よりも保湿をおろそかにしがちですが、乾燥もニキビ悪化の原因となります。洗顔後は低刺激の化粧水をつけ、クリームで水分を閉じ込めましょう。
日焼け止めを塗らない男性は多いですが、紫外線はニキビを悪化させます。紫外線を浴びると活性酸素が発生し、皮脂が酸化して毛穴に詰まりやすくなるからです。外出時はしっかり日焼け止めを塗りましょう。
特に男性は脂っこい食事を好む傾向にありますが、これまでお伝えしてきたように、油分の過剰摂取はニキビの原因とされます。日々の食事に野菜を取り入れ、しっかりビタミンを摂取しましょう。
また、タバコを吸っている方は禁煙してください。タバコに含まれるニコチンは、ニキビを改善する作用があるビタミンCを破壊すると言われています。
医師の治療を受ければ、ひどいニキビも治療可能です。皮膚科の医師と相談して、体質に合った治療法を見つけてもらいましょう。
ニキビがひどくなると、赤み、腫れ、ニキビ痕などが目立つようになります。こういった重度のニキビは、皮膚科での治療が必要です。適切な治療を受ければ、ニキビ痕も予防することができます。
皮膚科では、まず経口の抗生物質と塗り薬が処方されます。ひどく炎症を起こした囊胞は、注射によって、赤み、腫れ、刺激を和らげ、治癒を促します。ただし、大きな囊胞の場合は薬が効かないものもあります。その場合は切除が必要ですが、自分の手で潰したりつついたりすることで無理に取り除こうとしてはいけません。炎症を起こしたり、ニキビが悪化し、痕として残ってしまう原因になります。
ニキビ治療の多くは、効果が出るまでに2~3か月かかることも珍しくありません。すぐに効果が出なくても、辛抱強く待って、病院で推奨された治療を続けていくことが大切です。同じ治療を2か月続けてみても肌に変化がなければ、治療方法についてもう一度医師と相談してみてください。
ニキビの治療法は、ニキビの度合いによって異なります。症状が改善されるまでには、何か月も治療を続けなければならない場合があります。
病院で処方されるニキビ治療に使われる処方薬には、以下のようなものがあります。
・こう薬レチノイド
・塗る抗生物質
・錠剤の抗生物質
こう薬レチノイドは、肌の角質を肌の表面から取り除く働きをするもので、毛包に角質が詰まるのを防ぐ働きがあります。ジェルタイプとクリームタイプがあり、通常1日に1回、夜寝る前にニキビができている箇所に塗布します。こう薬レチノイドを塗布するときは1度にたくさん塗らないようにし、太陽の光や紫外線を浴びすぎないようにしましょう。
なお、こう薬レチノイドは、出生異常のリスクがあるため、妊娠中は推奨されていません。また、一般的な副作用として、皮膚の軽いチクチク感が起きたりします。通常は6週間投与しますが、薬の使用頻度を減らした治療がそれ以上続く場合もあります。
塗る抗生物質は、詰まった毛包に感染させる恐れのある細菌を殺す働きをします。ローションやジェルタイプが一般的で、1日に1~2回塗布します。通常、6~8週間続けることが推奨されます。これを過ぎると、通常治療は終了します。顔についた細菌が抗生物質耐性を持ってしまう恐れがあるからです。こうなると、ニキビが悪化し、ほかの感染症の原因にもなってしまいます。
副作用は通常あまり出ませんが、以下のような副作用が出るケースもあります。
・皮膚のヒリつき
・皮膚が赤くなったり、熱を持ったりする
・皮膚が剥ける
錠剤の抗生物質(経口の抗生物質)は、通常、重症のニキビの治療の際に、塗り薬と併用で用いられます。ほとんどの場合、テトラサイクリン系抗生物質と呼ばれる抗生物質が処方されますが、妊娠中または授乳中の場合は服用できません。妊娠中または授乳中の女性は、エリスロマイシンというより安全な抗生物質を服用することがすすめられます。
錠剤の抗生物質によってニキビが改善するまでには、おおよそ6週間程度かかります。治療によってどの程度効果が現れるかによって異なりますが、抗生物質の服用は、4~6か月続くことになるでしょう。
テトラサイクリン系抗生物質は、太陽の光や紫外線に敏感になったり、治療を始めてから数週間は避妊ピルの効き目が弱まる可能性があります。この期間中は、コンドームなどの他の避妊方法を検討しましょう。
高校生の頃にできるニキビと、大人になってからできるニキビは、発生メカニズムが違うため、治す方法も少しずつ異なっていきます。いずれにしても生活習慣とニキビは密接な関係にあるので、皮膚科での治療を進めつつ、日々の食事や肌ケアの方法などを見直すことをおすすめします。
※抗菌薬のうち、細菌や真菌などの生物から作られるものを「抗生物質」といいます。 抗菌薬には純粋に化学的に作られるものも含まれていますが、一般的には抗菌薬と抗生物質はほぼ同義として使用されることが多いため、この記事では抗生物質と表記を統一しています。