ひどいときは足を切断!? 糖尿病患者に多い足の合併症

2017/7/7

山本 康博 先生

記事監修医師

MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長
東京大学医学部卒 医学博士
日本呼吸器学会認定呼吸器専門医
日本内科学会認定総合内科専門医
人間ドック学会認定医
難病指定医
Member of American College of Physicians

山本 康博 先生

糖尿病患者は足にさまざまな疾患をかかえる可能性があります。深刻な合併症につながる恐れもあります。糖尿病予備軍といわれる糖尿病の一歩手前の人も同様です。

気になる足の症状がある人のために、糖尿病の合併症についてまとめました。

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糖尿病の足の合併症その①:神経障害

足の疾患は神経に損傷があるときによく起こるのですが、これを神経障害といいます。神経障害は足の疼き、痛み(ひりひりした痛み、刺すような痛み)、脱力感などを引き起こします。また、足の感覚喪失の原因にもなりうるので、知らずして足を傷つけることがあるかもしれません。

一般の神経障害は痛みがあるかもしれませんが、糖尿病による神経損傷は痛みや熱を感じにくくすることがあります。感覚を喪失すると足に怪我をしてもわからなくなり、靴の中に画びょうや石が入っていても一日中歩き続ける、まめができても気づかない、ということが起こるかもしれません。皮膚が壊れ、感染症になってはじめて足の怪我に気づくかもしれないのです。

また、神経の損傷は足の形の変化につながりかねません。普通の靴を無理して履くのではなく、かかりつけの医療機関に行って、靴についても相談してみましょう。

糖尿病の足の合併症その②:皮膚の病変

糖尿病は足の皮膚を変化させることがあり、足が乾燥し皮がむけたりひびが入ったりすることがあります。その症状が出るということは、足の油分と水分を調節する機能が失われているサインです。お風呂あがりに足を乾かし、ハンドクリームなどを薄く塗り、保湿しましょう。なお、オイルやクリームを足の指の間に塗ってはいけません。余剰水分により感染症になってしまう可能性があります。また、保湿のしすぎは乾燥の原因となるので気をつけましょう。

糖尿病の足の合併症その③:まめ

糖尿病患者の方が健康な人よりもできやすい症状が、まめです。足には大きな圧力がかかるので、まめもできやすいのです。あまりにもまめが多いときは、治療用の靴などを履く必要があるでしょう。

まめは手入れをしないとどんどん分厚くなり、亀裂が入って潰瘍(開放創)になってしまいます。また感染症になる恐れがあるので、まめは決して自分で切ってはいけません。専門の医療機関で処理してもらいましょう。毎日皮膚を湿らせた上で軽石を使えばまめを管理できるでしょう。軽石を使用した後は、すぐにローションを塗りましょう。

糖尿病の足の合併症その④:足潰瘍

足潰瘍は足の裏の親指の付け根や親指の底面にできやすい、皮膚の欠損状態のことです。足の側面にできる足潰瘍はたいてい靴が自分に合っていないことが原因で起こります。たとえ痛みがなくても、足潰瘍ができたら直ちに医療機関を受診してください。足潰瘍を無視すると、指の切断につながる感染症にかかるかもしれません。

もし足潰瘍がなかなか治らず血の巡りが悪ければ、医療機関が血管の手術を勧めることがあります。糖尿病の治療も重要なので、血糖値が高いと感染症と闘うのが難しくなります。

なお、足潰瘍が治った後も、足のケアに気を配ってください。傷跡は簡単に開きます。傷口周辺の保護と再発防止を目的に特別な靴を履くとよいでしょう。

糖尿病の足の合併症その⑤:血液の循環不良

糖尿病にかかると、足全体の血管が狭まり硬化することがあります。このように血流が悪いと、感染症に対する抵抗力や治癒力が脆弱になる可能性があります。

しかし、血液の循環不良の原因の一部は自分でコントロールすることができます。例えば禁煙です。喫煙は動脈硬化を促進してしまいまうからです。あとはかかりつけの医療機関のアドバイスに従って血圧と血中コレステロール値をコントロールしましょう。

糖尿病の足の合併症その⑥:間欠性跛行(かんけつせいはこう)

早歩きのときや坂道を登るとき、あるいは硬い地面を歩いているときにふくらはぎに痛みを感じる症状を「間欠性跛行」といいます。痛みは少し休むとおさまります。この症状がある人は禁煙し、かかりつけの医療機関でウォーキングプログラムを始めましょう。投薬によって血液の循環を向上させることもあります。

糖尿病の足の合併症その⑦:切断

糖尿病患者は健康な人よりも足の切断手術を受ける可能性が圧倒的に高いです。多くの糖尿病患者は、足の血流を悪くする末梢動脈硬化症(PAD)や感覚を喪失させる神経症にもなっており、こうした病は足の切断手術につながる恐れのあるまめや感染症になりやすくします。

ただ、切断事例の大半は日々のケアで防げた可能性があるものです。足にとって最大の敵の1つは喫煙です。タバコは毛細血管に作用し、足の血流悪化や治癒力低下を招きます。現に、切断手術が必要になった糖尿病患者の多くは喫煙者というデータもあります。

おわりに:糖尿病の人が足に異常を感じたら医療機関へ

糖尿病予備軍を含め糖尿病の人は、自分の足をしっかりケアし、足に異常を感じたらすぐに医療機関に相談しましょう。また、医療用具としての靴についても尋ねてみましょう。まめなどが足にあるときは、必ず医療機関の指示に従ってください。早めのケアがあなたの足を守ります。

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