足の痛みに注意! 糖尿病患者に多い動脈硬化症とは?
2017/5/18
末梢動脈硬化症(PAD)ってご存知ですか? 50歳以上の糖尿病患者の3人に1人にこの症状が出ているそうです。
糖尿病患者は、足にさまざまな疾患をかかえる可能性があります。深刻な合併症につながる恐れもあります。
足の症状が気になる人のために、糖尿病に併発することの多い末梢動脈硬化症についてまとめました。
末梢動脈硬化症とは?
末梢動脈硬化症(PAD)は、足の血管の狭窄、閉塞、または、動脈の内腔にコレステロールが沈着することによって下半身の血流が悪くなったときに発生します。
PADに罹患すると、心筋梗塞や脳卒中のリスクが高まることが知られています。
50歳以上の糖尿病患者のうち3人に1人はこの症状があると言われています。しかし、危険信号の出ている人の多くが、自分がPADに罹患していると気づかず治療を受けていないのです。
糖尿病とPADの関係性は?
糖尿病にかかると、PAD、心筋梗塞、脳卒中のリスクが高くなります。これらのリスクを減らすためには、血管に特別なケアを施すことが必要となります。
PADのリスクが高いか知る方法は?
糖尿病に罹患しているだけでPADのリスクは高まりますが、以下の項目に当てはまるとさらにリスクが高まります。
・喫煙
・高血圧
・血中コレステロール値異常
・肥満
・運動不足
・50歳以上
・過去に心臓病になった、または心筋梗塞や脳卒中になったことがある
・親族に心臓病、心筋梗塞、脳卒中になった人がいる
年齢や遺伝は変えられませんが、糖尿病とそれに付随する症状の改善でPADになるリスクを下げることができます。
PADの危険信号は?
糖尿病とPADの患者は多くの場合、何の症状もありません。一部の人は多少足の痛みを感じたり、歩きにくくなると感じることがありますが、老化によるものだろうと思い込んでしまいます。
その他の人は、以下のような症状が出るかもしれません。
・数分間の休憩後になくなる足の痛み、特に歩いているときや運動しているときの痛み
・足先の痺れや痛み
・足の炎症および感染症の治りが遅い
PADの診断方法は?
最も簡便な診断方法は脈拍の触診です。苦痛もないため有用な検査です。検査は、股の付け根、膝の裏、足首、足背にある動脈を直接触れ血流の状態をみます。
動脈に狭窄部があると、脈が触れなくなったり、聴診器で血管雑音が聞こえたりします。
また、PADを診断するときに使われる検査の1つに足関節上腕血圧比(ABI)があります。
この検査では、両側の足首と上腕の血圧を比較しますが、足首の血圧の方が低いとPADの可能性があります。
ほかにも以下のような、PADの診断方法も使われています。
・血管造影検査:カテーテルを用いて血管に造影剤を注入し、X線で血管が狭窄あるいは閉塞していないかを見る検査
・超音波診断:音波を用いて血管の様子を画面に映し出す検査
・磁気共鳴画像法(MRI):特殊なスキャン技術で血管内の障害物を検知する検査
PADの予防法は?
PADの患者は心筋梗塞と脳卒中のリスクが高いので、血管のリスク要因にうまく対処することが非常に重要になってきます。
以下のような予防法をとるとよいでしょう。
禁煙
禁煙しましょう。医療機関に相談すると、サポートしてくれます。
HbA1C(NGSP)検査
HbA1C7.0%未満をめざしましょう。HbA1C検査は過去1~2ヵ月の平均血糖値を測定する検査です。
血圧
血圧を130/85 mmHg未満まで下げましょう。
LDLコレステロール値
LDLコレステロール値を100 mg/dL未満に下げましょう。
投薬
抗血小板薬の投与を医療機関に相談してみましょう。この薬は、脳・心血管のイベントのリスクを減らすというデータも出ています。
ウォーキングなどの運動はPADの治療および予防に有効になりうるということが研究によって示されました。医薬品も症状を和らげるかもしれません。
手術
血管形成術(バルーン血管形成術)による手術が行われることもあります。
この手術では、バルーンのついたカテーテルを動脈に挿入します。その後、バルーンを膨らませ、狭まっていた動脈を広げます。動脈を広げたままにするため、ステントと呼ばれる金属のチューブを留置するかもしれません。
冠動脈バイパス手術もあります。
この手術では、体の他の部位からとってきた血管をつなぎ、閉塞している血管をバイパスします。
おわりに:不安に思ったら検査を
糖尿病が疑われる人も、糖尿病の人も、足に痛みがあったら、要注意です。この記事に書かれている症状が気になったら、医師に相談しましょう。心筋梗塞や脳卒中のリスクを減らすためにも、速やかに対処しましょう。