記事監修医師
東京都内大学病院眼科勤務医
渡辺 先生
2017/6/15 記事改定日: 2018/8/2
記事改定回数:2回
記事監修医師
東京都内大学病院眼科勤務医
渡辺 先生
糖尿病が進行すると、目がかすんだり、ぼやけたりと見え方が変化することがあることをご存知ですか。これは糖尿病網膜症と呼ばれる病気で、三大合併症のひとつに挙げられるものです。糖尿病網膜症が進行すると、最悪の場合失明することもあるといわれています。この記事では、糖尿病が原因で目に起こる症状や治療法について解説します。
糖尿病が進行すると、糖尿病網膜症を発症することがあります。糖尿病網膜症は糖尿病の三大合併症のひとつで、高血糖によって網膜の細い血管が傷ついたり、詰まったりすることが原因で発症する病気です。
最初は自覚症状がみられないのですが、症状が進行すると、目がかすんだり、出血が原因で黒いゴミのような影が見えたりします。以下のような症状がみられると、糖尿病網膜症である可能性が高くなります。
また、糖尿病特有の病気ではありませんが、緑内障や白内障を発症することもあります。
糖尿病を患っている人は、そうでない人よりも緑内障を発症するリスクが高いと言われています。糖尿病歴が長い人ほど緑内障を発症しやすく、また、年齢を重ねるにつれて発症のリスクが高くなります。
緑内障を発症すると、網膜と神経の損傷によって視野が欠け、視力が徐々に失われていきます。
白内障は糖尿病患者特有の症状ではありませんが、糖尿病の方で白内障を発症することが多いと言われています。また、糖尿病になると、若くても白内障を発症する可能性があります。
白内障を発症すると、眼球の透明な水晶体が濁って光をさえぎってしまい、視力に大きな影響を与えます。
糖尿病網膜症は完治させることができないため、治療は症状の進行を抑えるために行います。
初期の段階で治療する場合は、食事療法や運動療法で血糖値をコントロールすることが大切ですが、症状がある程度進行した段階で治療する場合はレーザー治療か手術が行われます。
レーザー光凝固術は、網膜にレーザーを照射して新生血管が新たに発生するのを防いだり、既にできてしまった新生血管を焼ききって出血を防いだりする方法です。
この方法は通院治療で行うことができ、点滴麻酔だけで安全に行うことができます。また、治療にかかる時間も数分から15分程度で終わります(治療が必要な部分が複数ある場合は、何回かに分けて治療します)。手術後の痛みが少ないというメリットがありますが、色の識別(特に夜間)が難しくなる可能性があるというデメリットがあります。
レーザー光凝固術では進行を抑え切れなかった場合や、網膜症が進行していて硝子体出血や網膜剥離が起こっている場合、硝子体手術を行います。
この手術は、新生血管から出血した血液を取り除くとともに、出血の原因となっている場所を電気で固め、かつ、はがれた網膜を元に戻して出血や網膜剥離の再発を予防するためにレーザーを照射します。
手術によって血液を取り除くので、手術後に視界がよくなることが多い反面、レーザー光凝固術と比べると大掛かりな手術になります。症状にもよりますが、手術にかかる時間は1~3時間ぐらいかかり、全身麻酔または眼球全体の局所麻酔が必要です。また、1~3週間程度の入院が必要になります。
どちらの治療法が選ばれるかは、目の状態によって変わります。医師と相談しながら、自分に合った治療法を選びましょう。
手術はガスを眼球内に注入して膨らませた状態で行いますが、稀に術後数時間以内に眼球内に残ったガスによって膨張することがあり、激しい目の痛みを生じる場合があります。このような場合には、速やかに眼球の圧を下げる処置が必要となります。
また、術後は手術によって眼球内に注入されたガスや生理食塩水などによって視界が揺れて動くように感じることもありますが、一般的には数日で改善します。結膜の切開部位を縫った場合には、目の異物感や充血が生じつことがありますが、これも一か月ほどで改善するものですので心配ありません。
視力の安定には半年から一年はかかるといわれています。また、術前の状態が悪い場合には手術から一年以上経過しても視野が暗く見える、歪んで物が見えるなどの症状が残ることも少なくありません。
術後は、眼球の傷跡に感染が起こりやすくなりますので、一週間ほどは洗顔、入浴などを控えて目の中に水が入らないようにする必要があります。また、風に舞ったゴミやほこりなどが入らないように傷口の状態が落ち着くまでは眼鏡をかけるなどの対策がすすめられます。
すでに糖尿病にかかっている人は主治医の指示に従うことが一番望ましいですが、糖尿病にかかっていない人も、目の病気になるリスクを考慮して生活習慣を見直すことは大切です。
目の病気を防ぐために大事なポイントとして、以下のようなものがあります。
健康診断などの機会を利用して血糖値や血圧を把握し、生活習慣を見直すのはもちろん、定期的に眼科で検査を受けることもおすすめです。特に、糖尿病を原因とする目の病気の中には、自分では気づきにくい初期の症状を持つものもあります。年に1度は眼圧や眼底の検査を受けましょう。
また、視界がぼやけたり、物が二重に見えたり、以前よりも視界が狭くなったように感じるなど、気になる症状がみられたら、健康診断の結果が良かったとしても早めに病院で検査を受けてください。
糖尿病を治療中の方は、よりご自身の「目」の状態に気を配ることが大切です。また、糖尿病でない方も、糖尿病による目の病気があることを知り、糖尿病を予防する生活習慣を心がけましょう。また、病気の予防や症状の進行を抑えるためには、定期的な眼科の受診もおすすめです。日ごろから予防に気を配りながら、目の健康を保ちましょう。