記事監修医師
東京大学医学部卒 医学博士
依存症を起こす違法薬物には、さまざまなものがありますが、これは絶対に使用してはいけません。これは薬物依存症を完全に治すことは難しく、治療後も長く苦しむことになるからです。
この記事では、薬物依存症について詳しく説明しています。違法薬物の恐ろしさを今一度心に刻みこみましょう。
学校の授業やニュース、ドキュメント番組でも伝えられているように、麻薬や覚せい剤は、使っているうちに、やめたくてもやめられない状態になります。
薬物使用をやめたくてもやめられない病気、それが薬物依存症です。鎮痛剤のように病気治療に必要な薬でも、誤った使い方をしてしまうことで、やめたくてもやめられない状態をつくり出してしまうものもあります。
「自分は意志が強いから大丈夫」「やめようと思えばいつでもやめられるから大丈夫」という考えは、薬物依存症には通用しません。
薬物依存症は、シンナーをはじめ、大麻や覚せい剤、危険ドラッグなどの薬物は、「遊び半分で」「一度だけのつもりで」と始めてしまうと、いつの間にか依存症となり、取り返しのつかない事態になってしまいます。
最初から真剣に薬物を使おうと思う人はいないでしょう。きっとだれでも、軽い気持ちで始めてしまい、依存症へと至るのです。
生活に支障をきたすようになってしまえば、今度は薬物を手に入れるためには、なりふりかまわずなんでもするという状況に陥りかねません。「一度だけなら大丈夫」という甘い考えは捨てましょう。
薬物依存症の症状として、まず、薬の効果が切れてくると薬に対する強い欲求が起きる精神的依存と禁断症状が出る身体的依存があります。
例として、以下の症状が挙げられます。
また、体が薬物に慣れてくるために薬物「耐性」ができ、同じ効果を得るために使用する量も増えていきます。
薬物依存症は脳内の神経伝達に異常が生じることによって引き起こされます。
薬物を長期間に渡って使用すると、薬物が脳内に作用して、神経伝達物質を過剰に分泌する状態が生じます。ドーパミンは神経を興奮させる作用があり、本来なら幸福感や快感、意欲などを引き起こす働きを持ちます。
しかし、薬物によってドーパミンが過剰に分泌される状態が続くと、このような興奮を感じるのにより多量のドーパミンが必要となり、薬物による効果が切れたときに脳がドーパミンを渇望して、薬物を摂りたいという非常に強い欲求が生まれるのです。これが、薬物依存症のメカニズムです。
薬物を初めて摂取してから依存状態になるまでの時間は、薬物によって異なり、覚せい剤などでは一度の摂取でもこのような脳内のドーパミン分泌に異常が生じて依存症に陥るケースも少なくありません。
残念ながら、薬物依存症に対する特効薬は存在しません。一度、依存状態となった脳は永久に元に戻らない可能性が高く、いかにして「薬物を使用しなくてもよい生活」を続けることができるかが大切になります。
薬物依存症に陥る人は、ほとんどが生活環境に問題がある人であるため、精神科や心療内科でのカウンセリングや認知行動療法などが行われます。これらの治療は単独で行うのが困難な場合もあり、薬物依存者同士の自助活動や集団生活などがすすめられることもあります。
また、禁断症状が強い場合には、精神科へ入院して鎮静剤投与などの医学的な介入が必要となるケースも少なくありません。
薬物依存症を引き起こす薬物は覚せい剤だけではなく、シンナー、大麻、脱法ドラッグ、コカインなど様々なものがあります。
これらはどの薬物であっても一度も使ってはいけません。
依存症になった人の多くは「ちょっと試しに」「一度だけなら」という軽い気持ちで始めてしまったために、取り返しのつかないことになっているのです。
そして、薬物依存症には特効薬はないので、治療後も長く苦しむことになります。
薬物の恐ろしさを常に頭に置きながら、他人から誘われても毅然とした態度で断りましょう。