出産の痛みはどんな痛み? 無痛分娩は怖くないの?

2017/9/11 記事改定日: 2018/4/3
記事改定回数:2回

前田 裕斗 先生

記事監修医師

前田 裕斗 先生

二宮 英樹 先生

記事監修医師

東大医学部卒、セレオ八王子メディカルクリニック

二宮 英樹 先生

出産は痛みを伴います。妊婦の子宮はリズミカルに収縮して産道の中を赤ちゃんを流し下げていかねばならないからです。
では、無痛分娩で出産の痛みの怖さは解消できるのでしょうか。この記事では、無痛分娩について詳しく解説していきます。また、出産中のリラックス法や産後の痛みの対処法についても紹介しているので参考にしてください。

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出産の痛みや怖さは無痛分娩で和らげられる?

無痛分娩とは、背中の神経が通っている管の中に細いチューブを挿入して、そこから麻酔薬を投入することで、陣痛や会陰切開などの痛みを軽減する出産方法です。
無痛分娩には、自然な陣痛が始まってから麻酔を導入する方法と、あらかじめ出産日を決めておき、麻酔を導入してからバルーンや陣痛促進剤で出産の進行を促しなす方法があります。また、病院によっては、出産が長引き、妊婦さんの体力が限界にあると判断された場合に緊急的に無痛分娩に切り替えることもあります。

無痛分娩は陣痛の痛みが軽減されるため、出産に対する恐怖やストレスが軽減されるだけでなく、出産で消費される体力が最小限に抑えられ、産後の回復が早くなるというメリットがあります。

しかし、「無痛」とはいっても、完全に痛みを取り除くことはできません。特に自然な陣痛が始まってから麻酔を導入する方法では、初期の陣痛の痛みを体験することになります。また、麻酔薬の効果には個人差があり、急速に分娩が進行した場合には麻酔の効果が十分ではないために痛みを感じることもあるようです。

無痛分娩のリスクも知っておこう

無痛分娩は、麻酔や陣痛促進剤を使用するため、当然ながら自然分娩よりもリスクが増えます。
自然分娩より多量の陣痛促進剤を使用するため、薬量の調節が合わなければ過強陣痛や子宮破裂のリスクが高まります。また、麻酔薬によるアレルギーでお母さんの血圧が急激に低下したり、発熱するなどの副作用が出現することがあります。
さらに、分娩がうまく進行せずに、鉗子や吸引を用いた器械分娩、帝王切開などの率も高くなるといわれています。

まれに麻酔の管が神経の管の奥に入りすぎてしまうことで、神経が直接麻酔の作用を受け、意識消失や呼吸停止などの重大な症状を引き起こすことがあります。結果として高度な意識障害などの後遺症が残り、最悪の場合、死亡するケースもあります。

このように無痛分娩には様々なリスクがありますので、無痛分娩を希望する場合には医師からの説明をよく聞き、パートナーや家族とよく話し合って決定するようにしましょう。

出産時の痛みでパニックにならないためのリラックス法

出産は「鼻からスイカを出す痛み」と例えられているように、出産時には想像を絶する痛みを感じることも多いといわれています。今まで体験したことのない痛みに襲われると、恐怖心からパニック状態になってしまう人もいるでしょう。

出産は赤ちゃんとお母さんの初めての共同作業です。痛みを受け入れていきむべきところでいきみ、我慢するところでは我慢をしないと出産が終わることはありません。また、お母さんがパニック状態になって酸欠になると赤ちゃんへ送られる酸素も減少し、赤ちゃんも苦しい思いをすることになります。

陣痛の痛みはずっと続くものではなく、赤ちゃんの誕生と同時に消えるものですが、少しでも痛みを和らげるようにリラックスして陣痛を乗り切りたいものですね。
そのためには、好きな音楽を流したり、パートナーや母親などの安心できる人に近くにいてもらうことがおすすめです。どのような出産にしたいかを事前によく考え、万全の態勢で赤ちゃんの誕生に備えましょう。

出産の痛みのピーク

出産時の痛みの感じ方は人によって異なりますが、一般的な痛みのピークは子宮口が全開大になる前後であるといわれています。
分娩には大きく分けて3つのステージがあり、陣痛が10分間隔になってから子宮口が全開大になるまでを第一期、子宮口が全開大になってから赤ちゃんが生まれるまでを第二期、胎盤など子宮の内容物が全て排出されるまでを第三期といいます。

最も長いのは第一期ですが、初産婦では約12時間、経産婦では約6時間といわれています。第一期は陣痛が徐々に強くなり、子宮口が開く時期ですが、第一期の終了前後に激しい痛みを感じることが多いです。また、無性にいきみたくなる感覚に襲われるでしょう。
しかし、第一期は完全に子宮口が開いていないため、強い陣痛があってもいきむことができず、「いきみ逃し」を行います。多くの妊婦さんは、この「いきみ逃し」が出産の中で最も辛いと感じるようです。

そして、子宮が全開大になる第二期を迎えると、いきみを行って赤ちゃんを娩出する行為に移りますが、この頃にはいきむことに必死で、強い陣痛があっても痛みを忘れている妊婦さんもいるといわれています。

しかし、痛みの感じ方や分娩の進行は人それぞれです。陣痛が起こり始めた時が一番痛いと感じる人もいれば、赤ちゃんが生まれて会陰切開の傷を縫うときが一番痛いと感じる人もいます。思わぬ時に激し痛みが生じても、パニックにならないように心しておきましょう。

出産時の痛み軽減で使われる薬剤

出産時の痛みの軽減効果が期待できる薬剤をいくつかご紹介します。事前知識として知っておきましょう。

麻酔

麻酔は部分的、あるいは完全に感覚を麻痺させる物質で、分娩・出産のためにも使われる鎮痛剤です。麻酔には全身麻酔、部分麻酔があります。全身麻酔は一部の帝王切開にのみ用い、経腟分娩には使いません。全身麻酔を受けた直後はぼんやりしている他、気管の中にチューブを入れていたため、喉の痛みを感じるかもしれません。

硬膜外麻酔法

硬膜外麻酔法とは、部分麻酔の一種で脊髄を包む硬膜の外側に注射される麻酔で、運動神経の麻痺は起こらず、鎮痛のみが得られ、血流への移行も少なくお腹の赤ちゃんに対する安全性が高いとされる麻酔です。これは病院で出産を行う全女性の半数が選ぶといわれています。経腟・帝王切開の両方で鎮痛目的に用います。

脊髄くも膜下硬膜外併用麻酔

硬膜外麻酔法に追加して脊髄くも膜下麻酔を用いることもあります。通常の硬膜外麻酔より効果を早く得ることができ、急速に分娩が進行する場合に適しています。

陰部神経ブロック

陰部神経ブロックとは、分娩の第二ステージ初期で発生する痛みを和らげるために時々使用することがあります。陰部神経ブロックは、経腟分娩のために用意されます。この薬剤は吸引・鉗子経腟分娩の際に有効とされます。

脊髄麻酔・サドル麻酔

これらの局所麻酔が経腟分娩に用いられることは稀ですが、一般的には出産直前に単回投与で与えられます。(言い換えれば、分娩中に硬膜外麻酔法は受けなかったが出産の際には痛み止めが欲しい、という人はこの即効の脊髄麻酔を使用します)脊髄麻酔はしばしば帝王切開で用いられる一方、サドル麻酔は吸引・鉗子経腟分娩の際に使用されます。

鎮痛薬

麻酔を受けたくないという場合は、痛みがやわらいだり、痛みが気にならなくなったりする鎮痛剤を選ぶのもよいでしょう。ただし効果は限定的で、鎮痛効果は麻酔に劣ります。

出産後の痛みにも備えておこう!

出産後の体は出血から体の痛みまで、様々な症状を6週間にわたり経験します。産後の6週間は産後回復期として知られるもので、赤ちゃんを作り外の世界に送り出すという偉業から回復する時期を指します。ほとんどの場合、症状は一時的なもので、一週間以内に徐々に癒えてくるでしょう。症状によっては(腰痛、乳首のひりひり、あるいは会陰部の痛みなど)何週間か続くものもありますが、一般的な鎮痛剤(アセトアミノフェンやロキソプロフェン)で対処できるでしょう。

よくある産後の痛みの症状と解決法

産後の症状は出産の仕方(安産か難産か、自然分娩か帝王切開か)と妊娠時の体型と初産かどうかなど、要因によって違いがあります。産後に現れる可能性のある症状と、その解決法を以下にまとめました。

性器出血

いわゆる悪露です。6週間程度まで排出される可能性がありますから、パッドや出血に浸すための生理用ナプキン(生理用タンポンではありません)をたくさん用意しましょう。

子宮収縮に伴う腹部疝痛(せんつう)

子宮が普通の大きさに縮むのに通常6週間かかります。痛みを感じることも多いですが、その際はアセトアミノフェンやロキソプロフェンを服用するようにしましょう。

会陰部の不快、痛みや無感覚

会陰部を清潔に保ちましょう。冷やしたパッドや冷たい湿布を使ってみたり、温かいお湯に浸かりましょう。局部麻酔スプレー、クリーム、軟膏やパッドを使い、寝るときは体の横を下にして寝るようにしてください。ゆったりした服を着て、アセトアミノフェンを服用しましょう。ケーゲル体操も循環を良くし回復プロセスを早めるといわれています。

帝王切開部周辺の痛み

医師の指示通りに処方された痛み止めを服用しましょう。医療機関で処方される薬と同等の成分の痛み止めを、薬局で買うことも出来ます。もし痛みが何週間も続くようなら、服用量や痛み止めの種類について、お医者さんと相談してみましょう。手術後の数週間は重いものを持ち上げるのは避けましょう。

排尿困難

産後何日かは排尿がしづらいと感じるかもしれませんので、飲み物をたくさん飲んで歩いてみましょう。尿意がなくても定期的にトイレへ行ってみるのもいい方法です。会陰部に温水を注ぎ、腰湯に浸かるか、お手洗いに行きたくなるようにアイスパックを会陰部周辺に使ってみましょう。排尿しようとしているときに、水を飲んでもよいでしょう。

出産時の圧迫は痔につながりやすいです。ですから腰湯や局部麻酔、ウィッチヘーゼルパッド、座薬や温かい、あるいは冷たい湿布を試してみましょう。

全身の痛み

アセトアミノフェンを摂り筋肉を温かいお風呂やシャワー、あるいは温かい湿布で癒します。また、マッサージを試してみてもいいでしょう。

授乳で乳首がひりひりしたり、ひび割れてしまう

乳房が正しい位置にあるか確かめ、授乳位置を変えましょう。授乳後少し乳首を空気にさらし、乾いた状態を保ち、下着や布の刺激から守るようにしましょう。医療用軟膏を乳首に塗るか(石油が素材のものは避けてください)、冷水に浸したティーバッグを乳首の上に置いてください。授乳の前にアセトアミノフェンを摂取すると痛みが和らぐかもしれません。

背中の痛み

赤ちゃんを持ち上げるときに、腰を丸めるのではなく、股関節と膝関節を使ってしゃがんむようにしましょう。授乳するときや座るときに足を持ち上げるのに足置きを使いましょう。

おわりに:無痛分娩で出産の痛みはある程度抑えられるが、リスクもある。医師と相談しながら納得のいく方法を選ぼう

出産の痛みは誰にでも起こるものです。無痛分娩である程度痛みを抑えられますが、完全に痛みがなくなるとは限りません。また、無痛分娩にはリスクもあります。
メリットとデメリットをきちんと理解し、医師と相談しながら納得のいく出産方法を選びましょう。

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