記事監修医師
東京大学医学部卒 医学博士
2017/3/14 記事改定日: 2019/8/27
記事改定回数:4回
子宮摘出手術を受けた女性は、腟乾燥や性欲の減退など、セックスにかかわるさまざまな問題に悩まされることがあります。さらに、「セックスを再開できるようになるのはいつ?」「感度が下がるの?」など、人には聞きづらいギモンもたくさんあるでしょう。この記事では、子宮摘出が術後の性生活にどのような影響を与えるかや、その対処法を解説します。
子宮摘出後、「女性らしさが減ったのではないか」「性的魅力が失われたのではないか」と心配になったり、喪失感や悲しみを感じたりする女性は多いです。
こうした喪失感が出てくるのは女性として自然なことです。気分を変えなきゃ…と焦るのではなく、悲しみは悲しみとして受け入れ、まずは術後の回復に集中しましょう。健康的な食事をしたり、運動をしたりして(運動量については医師の指示を受けてください)、自分の気持ちをパートナーや友人に話しましょう。
もし悲しみに対処しきれないと感じた場合は、医師に相談してください。カウンセリングを受けるのもおすすめです。
手術内容にもよりますが、子宮摘出から約2~3カ月はセックスを控えるのがおすすめです。手術跡が癒え、腟から膿や血が出なくなり、セックスによっても縫合部が破れない状態になるまでに、このくらいの時間が必要なためです。もし、子宮摘出直後の人だけなく、過去に子宮を摘出している人も、セックスの後に出血していることに気付いたら、医師の診察と治療を受けて様子を見てください。
子宮摘出をしたからといって、感度が下がったり、オルガスムに達することができなくなるわけではありません。
「子宮頸部を摘出すると、オルガスムに悪影響が出る」という説もありますし、「悪影響は出ない」という説もあります。実際、閉経前に部分的な子宮摘出手術を受けた女性と受けなかった女性を比べた結果、性機能については両方とも同じような結果が出ています。子宮頸部がオルガスムに対してどのような役割を果たすかは、まだ明らかになっていないのです。
ただ、外科的観点から比較すると、多くの女性にセックスでの感度が減少したことが判明しています(「パートナーが挿入したときにあまり感じなくなった」「腟が乾燥した」「以前ほどオルガスムが鮮烈ではなくなった」など)。もし、子宮摘出の前はオルガスムに達したときに子宮が収縮するのを感じていたとしたら、術後はそのような感覚がなくなるかもしれません。
子宮摘出後に腟が以前よりも乾燥すると感じる場合は、ローションを使ってみるのがおすすめです。薬局やインターネットで購入できます。また、骨盤体操で腟の筋肉を鍛えることで感度を高める方法もあります。
なお、腟乾燥や感度の低下など、セックスへの悪影響を紹介してきましたが、手術で痛みがなくなり幸福感が増した人もいます。
子宮摘出後、セックスに関心が薄くなる女性もいます。回復するにつれて性欲が戻ることもありますが、しばらく経っても性欲の減退が続いているようでしたら、らパートナーと話し合いましょう。専門医やカウンセラーからのサポートを受けることもできます。
また、性欲減退はうつや人間関係の問題、ストレスでさらに悪化する可能性があります。このような要因は一時的なことが多いですが、もし抑うつ感が続く場合は、医師の診察を受けてください。
なお、子宮を摘出しただけでは更年期症状が起こることはありませんが、子宮と一緒に卵巣もすべて摘出した場合は更年期症状が起こる可能性があります。その場合、更年期症状に対する治療を行うと性欲減退や抑うつ感が改善する可能性があります。
子宮を摘出したあと、落ち込んだり、セックスのことで悩んだりする女性は決して少なくありません。もし苦しんでいることがあれば、恥ずかしがらず専門医やカウンセラーに打ち明けてみてください。