記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
2017/6/16
記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
糖尿病の合併症を予防するためには、血糖値の管理・コントロールがとても重要です。
しかし、自分だけの力で血糖値や血圧を計り、食事に気をつけ、体の調子を整え、改善していくのはとても大変です。
今回の記事で、血糖値の管理に関する基本的な知識を身につけましょう。
血糖値を目標値に近い状態に保つことは、糖尿病の人の命を守ります。正しく血糖値を管理することは、糖尿病の合併症の予防と、生活の質(QOL:quality of life)を保つうえで大切なことです。
血糖値をきちんと管理するためには、次のことに気をつけましょう。
・適切な食事(メニューや時間、回数など)と適切な運動
・血糖値を頻繁に測定する
・インスリンの使用量と注射スケジュール
自分ひとりですべてを即座に記憶する必要はありません。医師や栄養士、その他のヘルスケア専門家が、時間をかけて教えてくれます。糖尿病チームが作ってくれた、インスリンの投与量と投与時期の計画や食事や運動のためのガイドラインに従いましょう。
厳しい管理プログラムをずっと続けていくと、モチベーションが下がってしまう日もあると思います。そんなときはモチベーションをどのように保てばよいでしょうか。
毎日何度も血糖値を調べることは大変です。まずは血糖値の測定に慣れることから始めましょう。その後、注射に慣れ、新しい運動プログラムを追加して食生活を変えるというように、少しずつでいいのでゆっくり習慣化するようにしてください。
糖尿病と診断されたときに、信じられないと現実逃避をしてしまったり他人事のように感じてしまうこともあります。このような心理状態のときは、厳しい管理を続けることが難しいかもしれません。もし糖尿病になった自分に対して怒っていたり、糖尿病を患っていることにうんざりしているようであれば、現実を受け入れ始めている可能性があります。「自分は糖尿病だ」という現実を受け入れ、嫌なことにもしっかり向き合うことが大切です。
どんなに厳しく管理しても、血糖値の数値が目標通りにいかない日もあります。しかし、血糖値が目標値から外れることがあまりにも多い場合は、治療計画を調整する必要があるかどうかについて医師に相談しましょう。
たまに目標から外れる程度であれば問題ないことがほとんどです。少しずつ目標が達成できる割合を高めていきましょう。
医師と相談しながら、必要に応じて治療を休んでもいいでしょう。休みを取ることで、治療を再開したときにモチベーションを保ちやすくなるかもしれません。
血糖値の厳格なコントロールに関する研究として、「DCCT(糖尿病管理と合併症の試験)」があり、これにより厳格な血糖コントロールを行った患者は合併症を起こしにくいことがわかっています。
これはアメリカで約9年行われた研究です。1,441人の1型糖尿病患者のうち、半数の人は標準的な糖尿病治療を継続、残りの半分は集中管理プログラムに従うように指示され、血糖値が比較されました。
集中管理を受けている患者は、平均値がまだ正常値を上回っていたものの、標準的な治療を受けていた人よりも血糖値を低い状態を保ったという結果が出ています。
また、厳格な管理をしたグループと標準的な治療をしたグループとを比べた結果、その他にも以下のようなことが判明しました。
・糖尿病性眼疾患は、全体の4分の1しか発症しなかった
・腎臓病は全体の半数で発症した
・神経病は全体の3分の1で発症した
・すでに上記の三大合併症の初期形態を発症していた人の数はさらに少なくなっている
血糖値のコントロールが合併症の発症を抑えることが知られ、さまざまなタイプのインスリンも使えるようになってきました。
血糖値を管理することは大変ですが、生活の質を保ち、合併症を防ぐためには必要なことです。医師と相談しながら、より生き生きとした生活をおくれるように楽しく努力していきましょう。