要注意!高齢者の食中毒の原因と予防方法

2017/8/18

山本 康博 先生

記事監修医師

MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長
東京大学医学部卒 医学博士
日本呼吸器学会認定呼吸器専門医
日本内科学会認定総合内科専門医
人間ドック学会認定医
難病指定医
Member of American College of Physicians

山本 康博 先生

食中毒は、細菌や、ウイルス、食べ物によって、胃腸管に炎症や感染が起こることです。
食中毒は、誰にでも起こる可能性がありますが、今回は特にかかりやすくリスクの高い、高齢者の食中毒について解説します。

冷凍宅配食の「ナッシュ」
冷凍宅配食の「ナッシュ」

食中毒とは

食中毒とは、有害な細菌、寄生虫、ウイルス、あるいはそれらの微生物の放出する化学物質などにより、汚染された食べ物や飲み物を飲食することで起きる感染症、もしくは消化管の炎症のことです。ほとんどの食中毒は突然起こり短時間で治まる急性症状であり、ほとんどの人が何の治療も受けなくても回復します。稀ですが、食中毒が深刻な合併症につながることもあります

食中毒の原因

食中毒の主な原因となるものは、有害な細菌とウイルスです。また、寄生虫や毒素が原因で起こることもあります。
健康であれば、ほとんどの人が治療をしなくても自然回復します。しかし、65歳以上の人は免疫システムが若い人ほど強くないため、身体が細菌を撃退できずに重度の食中毒に悩まされるケースもあるので注意が必要です。

高齢者の食中毒

高齢者は食中毒のリスクがより高くなります。そして、食中毒を引き起こすリスクが高い食品もあります。65歳を過ぎたときに、避けるべき食品や慎重になるべき食品を下記で紹介しましょう。

高齢者が避けるべき食品

注意が必要な食品は次のとおりです。
(健康状態が悪い人、妊娠中の女性、乳児および幼児を含む免疫力が低下している人にも適用されます。)

チーズ

ブリーチーズやカマンベールチーズなどの低温殺菌されていないチーズや、殺菌されていないブルーチーズを食べるときは注意しましょう。
これらのチーズは、酸性度が低く、硬いチーズよりも多くの水分を含むことがあるため、食中毒のウイルス、特にリステリアの成長にとって理想的な環境になるため、免疫力が低くなっている高齢者にとってリスクが高いです。熱処理で細菌は死滅するので、加熱調理されたチーズであれば問題ないでしょう。

パテ

リステリアを含むことがあるので、野菜のパテを含め、すべての種類の冷たいパテを避けるようにしましょう。缶詰めに関しては熱処理をされているので問題ありませんが、開封後は早く食べきるようにしましょう。

生卵や半熟卵

自家製マヨネーズなど、生や半熟の卵を含む食品は、サルモネラ菌の食中毒リスクが高いので食べるときに注意してください。リスクを完全に避けたい場合は、白身と黄身がきちんと固まるまで加熱調理するようにしましょう。

生または生焼けの肉、鶏肉

バーベキューには注意しましょう。特に鶏肉やソーセージ、生焼けの肉は、サルモネラ菌、カンピロバクター属、大腸菌などの食中毒ウイルスを含んでいることがあります。
ピンクの部分や血がなくなるように、肉は十分に加熱調理しましょう。また、生肉を調理した後は、有害なウイルスが広がらないようにするために、調理台や包丁と同様に、手を洗うことが重要です。

生の甲殻類

カキは避けましょう。生の甲殻類(例えば、ムール貝、ロブスター、カニ、エビ、ホタテ貝など)は、食中毒を引き起こす有害な細菌やウイルスを含む可能性があります。 甲殻類を食べるときは、加熱調理されたものを食べましょう。

寿司

寿司や刺身など、生魚を使った料理を自宅で作るときは、アニサキスに注意しましょう。購入時は新鮮なものを選ぶように注意して、丸ごと1匹の魚を買ったときはすぐに内蔵を取り除き、内臓は食べずに捨ててください。

アニサキスは-24℃で24時間以上冷凍すると死滅しますが、一般家庭の冷凍庫のほとんどは-24℃で冷凍することができません。また、酢や塩、醤油、ワサビで死滅させることも不可能です。調理時は目視で確認しながら、アニサキスを処理しましょう。

【出典: 厚生労働省ホームページを編集して作成 http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000042953.html

牛乳

低温殺菌されていない牛乳は避けましょう。代わりに、低温殺菌牛乳または超高温殺菌牛乳にしましょう。ロングライフミルクとも呼ばれます。
実際、店やスーパーで売られている牛乳はすべて低温殺菌牛乳か超高温殺菌牛乳です。低温殺菌されていない牛乳は、農場、作業場、登録された農産物直売所から直接買うことしかできません。

食中毒の症状

65歳以上の高齢者の症状は、若年者よりも悪化することが多く、脱水などの危険な合併症を引き起こす可能性があります。 また、高齢者は回復にも時間がかかるので、以下のような食中毒の症状がある場合は、すぐに医師の診察を受けましょう。
・嘔吐
・下痢、血便
・腹痛
・熱
・寒気
・頭痛
・肌のチクチク感や無感覚
・視野がぼやける
・衰弱する
・めまい
・麻痺

食中毒の合併症

高齢者は食中毒の症状が重くなりやすく、脱水症状や溶血性尿毒症症候群のような合併症を起こすリスクも高いです。また、急性食中毒は慢性的な健康問題につながる可能性があります。

脱水症状

嘔吐や下痢で失った水分を正しく補給できないと脱水症状に陥ります。脱水症状は、十分な水分と電解質(ナトリウム、カリウム、塩化物など塩の中に含まれるミネラル)が不足している状態であり、体が適切に機能しなくなります。乳児、子供、高齢者のように免疫系の弱い人は脱水症状になるリスクが大きいです。
嘔吐や下痢と共に、次のような脱水症状の兆候と思われる症状が現れた場合は、病院を受診しましょう。
・強い喉の渇き
・稀尿
・濃い色の尿
・無気力、めまい、脱力感

また、以下の症状がでた人は即座に医師の診察を受ける必要があります。
・脱水症状の兆候
・水分を摂ることができないほと、嘔吐が長引くとき
・成人は2日以上下痢が続き、子供の場合は24時間以上下痢が続くとき
・下腹部や直腸に深刻な痛みがでるとき
・38度以上の熱がでたとき
・血便や膿が混じった便が出るとき
・黒い便やタール状の便が出るとき
・神経系症状がでたとき

おわりに:危険な食品を知り、食中毒を予防しましょう

食中毒は特に高齢者の場合は重症化するリスクがあるので注意してください。どのような食品が危険かを学んでおき、事前に食中毒を防ぐようにしましょう。

関連記事

この記事に含まれるキーワード

食事(225) 高齢者(102) 食中毒(68)