記事監修医師
産業医科大学第1外科
佐藤 典宏 先生
2017/3/14
記事監修医師
産業医科大学第1外科
佐藤 典宏 先生
プロのアスリートであろうと、レクリエーションでスポーツを楽しむ人にかかわらず、運動中に適切な量の水分補給をすることは重要です。 水は体温を調節し、関節をスムースに動かし、栄養素を輸送してエネルギーを与え、健康を保つのに役立ちます。 適切な水分補給がされていない場合、からだは最高のコンディションで動くことはできず、疲労、筋肉けいれん、めまい、さらにはより深刻な症状を起こすことになりかねません。
運動すれば、当然汗をかくので水分を補給する必要があります。汗の量は、外気温や運動の種類によっても異なりますが1時間で1 Lの汗をかくこともあるといわれています。それだけの水分が失われているのですから、水を飲んで補ってあげなければいけないのです。そのためには1日におよそ1.2 Lの水を飲むことが必要だといわれています。
また、汗にはわずかではありますが塩分が含まれています。長時間の激しい運動で大量の汗をかいたときには塩分も失われます。体内の塩分(ナトリウム)が減少すると、筋肉のけいれんや、脱水に陥りやすくなります。運動やスポーツで大量の汗をかいたときには「水」だけでなく、「塩分」もいっしょに補給することが大切なのです。運動中の塩分補給には、塩タブレットなどがおすすめです。
水分量を維持するために必要なものは水だけですが、1時間以上の長い間激しい運動をする場合、スポーツドリンクが役立ちます。 スポーツドリンクのカロリー、カリウムおよびその他の栄養素は、エネルギーや電解質を提供してより長時間運動するのを助けてくれます。
スポーツドリンクは、添加している砂糖のためにカロリーが高く、高濃度のナトリウムを含むことがあります。 また、1回に飲む量を確認してください。 1本のボトルには複数回分の飲む量が含まれています。ボトル1本を飲む場合は、栄養成分表に記載されている含有量を2倍または3倍に薄める必要があるかもしれません。一部のスポーツ飲料にはカフェインが含まれています。カフェインを含むスポーツドリンクを飲む場合は、食事にカフェインが多くなりすぎないように注意してください。
脱水は、飲むよりも失う水分が多いと起こります。 からだに十分な水分がない場合、からだを適切に動かすことができません。 脱水には軽度から重度の程度がありますが、脱水症状には以下のような症状がみられます。
・めまいやフラフラした感覚
・吐き気または嘔吐
・筋肉けいれん
・ドライマウス
・発汗不良
・速い心臓の鼓動
重度の脱水症状では、精神錯乱、衰弱、意識喪失などがみられることがあります。 これらの症状がみられたら、直ちに救急医療を受けるべきです。
一方で、マラソンやトライアスロンなどの持久力活動では、体内のナトリウム(塩分)が不足して低ナトリウム血症を起こすことがあります。 体内のナトリウム濃度が低すぎると、細胞は水で膨潤し始めます。これは脳が腫れ、肺が体液で満たされ、低ナトリウム血症を起こすことになります。 低ナトリウム血症は、混乱、頭痛、嘔吐、手足の腫れなどの症状がみられ、危険な状態です。
適切な水分を維持しているかどうかを確認する簡単な方法は、尿をチェックすることです。 尿が無色または明るい黄色であるときは、よく水分が取られている状態です。 濃い黄色または琥珀色の尿は、脱水の徴候です。
喉がかわいたと感じるときには、すでに脱水気味になっているということで、パフォーマンスレベルも低下してしまっている可能性があります。また喉がかわききってしまうと、逆に水分を飲みすぎておなかが痛くなったりすることもあります。
特に、マラソンなどの長時間の運動をするときは、運動前・運動中・運動後のそれぞれのタイミングに、きちんと水分補給の時間を設けることが大切です。
運動前、運動中、運動後の飲料水については、次のような提案もあります。
・運動を始める2〜3時間前に500〜600mLの水を飲む
・運動を始める20〜30分前またはウォームアップ中に230mLの水を飲む
・運動中は10〜20分ごとに200〜300mLの水を飲む
・運動後30分以内に250mLの水を飲む
こまめな水分補給と塩分補給を忘れずに、運動やスポーツを楽しんでくださいね!