妊娠中に特に注意すべき3つの感染症について知ろう

2017/8/28

前田 裕斗 先生

記事監修医師

前田 裕斗 先生

妊娠中はお母さんと赤ちゃんの健康のために配慮することがたくさんありますが、中でも特に気をつけるべきことのひとつが感染症です。
妊娠中は免疫力の低下やホルモンバランスの変化によって感染のリスクが高まるため、一層注意が必要です。
この記事では、妊娠中に特に注意すべき3つの感染症についてご紹介します。

冷凍宅配食の「ナッシュ」
冷凍宅配食の「ナッシュ」

性感染症

性的接触を介して伝達され、妊娠中に母体や赤ちゃんの健康に影響を及ぼす可能性のある疾患には、以下のものがあります。

・クラミジア…クラミジアトラコマチスという細菌による感染症
・性器ヘルペス…ヘルペスウイルスによる感染症
・尖圭コンジローマ…ヒトパピローマウイルスによる皮膚病変
・淋菌…ナイセリア・ゴノレエという細菌による感染症
・AIDS…ヒト免疫不全ウイルスによって引き起こされる感染症
・梅毒…梅毒トレポネーマによって引き起こされる感染
・トリコモナス症…腟トリコモナスという原虫による感染症

性感染症によってもたらされるリスク

未治療の性感染症は問題を引き起こすリスクが高いです。
クラミジアは早産や流産、新生児の目や肺炎の感染を、ヘルペスは出産時に母体から赤ちゃんに引き継がれて神経系の感染症を引き起こす可能性があります。

未治療の淋病及びトリコモナス症は流産、早産、出産、早期の膜破裂のリスクを高め、梅毒は胎盤を通過し様々な異常や死産を引き起こす要因になり得ます。
しかし幸いなことに、性感染症は診断が比較的容易なため、妊娠中にも安全に治療することができます

適切な検査と治療を行ない、赤ちゃんに害が及ばないようにしましょう

B型肝炎

B型肝炎は、B型肝炎ウイルス(HBV)によって引き起こされる感染性肝疾患(肝臓の細胞が炎症を起こし、肝細胞が破壊されてしまう病気)です。

ウイルス性肝炎にはA型肝炎やC型肝炎もありますが、B型肝炎は出産時に新生児に影響を及ぼすことが知られています。
B型肝炎の症状には、黄疸、倦怠感、腹痛、吐き気、嘔吐、食欲不振がありますが、約3分の1の感染者は症状が出ずに発症に気づかない可能性があります。

そのため、日本では妊娠した場合はB型肝炎の検査が必須の検査とされています。
感染しているかどうかは検査でのみ確かめることが可能です。

母子感染のリスクや対処法は?

B型肝炎は母子感染はしないと考えられていますが、出産中に母親の血液や排せつ物を介して感染してしまう可能性が高いです(約90%)。赤ちゃんがウイルスに感染すると、生涯にわたって肝疾患を発症するリスクを抱えてしまいます

そのため、B型肝炎の検査で陽性と出た赤ちゃんは、生まれてすぐにB型肝炎ワクチンとB型肝炎免疫グロブリン(HBIG)という2種類の予防接種を受ける必要があります。
この2つの薬剤が生後12時間以内に投与されれば、赤ちゃんが生涯にわたってB型肝炎に感染しない可能性は90%以上になります。
2回目の予防接種は1〜2ヵ月齢で行い、3回目の予防接種は6ヵ月齢で行いましょう。

尿路感染症

尿路感染症は泌尿器系で起こる細菌性感染症で、腎臓、膀胱、あるいはそれらをつなぐ管など、尿を体外に運ぶためのシステムのどこかで細菌が感染することで発症します。
最も一般的なものは膀胱炎です。

すぐに適切に治療すれば重症化することはほとんどありませんが、感染が腎臓まで拡大した場合は、更に深刻な病気を引き起こす可能性があり、病勢によっては流早産などの原因になることもあります。

対処法

症状を改善する方法は以下の通りです。

抗菌薬による治療

処方された抗生物質を服用すれば尿路感染症を治療することができます。
ただし腎臓まで感染が及んだ場合少なくとも数日は入院で点滴抗生剤治療を行った方が安全です。
状況が落ち着けば内服抗菌薬に変えることも可能でしょう。

水分をたくさんとる

細菌を身体の外へ出すためには頻繁に膀胱を空にすることが重要です。
水分をきちんと摂り、排尿を促すようにしましょう。

おわりに:母子感染を防ぐために検査を受けましょう

感染症に罹ってしまった場合も、医療機関で治療することで症状を改善でき、胎児への感染を防ぐことができます
妊娠中はもちろん出産後も健康な状態で過ごすために、感染症についての知識を深め、きちんと検査を受けて母子感染を防ぐことが大切です。

関連記事

この記事に含まれるキーワード

感染症(49) 妊娠中(34) リスク(23) 母子感染(18)