記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
2017/6/22
記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
穀物に含まれるタンパク質「グルテン」は、 ほとんどの人は問題なく摂ることができます。しかし、セリアック病 (セリアックスプルーとも)の人は、グルテンで免疫反応を起こしてしまいます。どのようなものにグルテンが用いられているのかを理解し、食生活を彩る工夫がグルテンフリーダイエットです。病をコントロールしながら健康的な暮らしていく方法を紹介するので参考にしてください。
セリアック病を発症すると、腹痛、嘔吐、下痢、便秘など消化器系の異常をきたす症状が現れ、苛立ち、抑うつ状態になるなど精神状態にも影響します。発症の原因は小麦・大麦・ライ麦などに含まれるタンパク質の一種であるグルテンに対する免疫反応が引き金になって起こると考えられています。重度のストレスや怪我、女性に場合は出産が要因になることがあるといわれています。また、加えて遺伝的な素因も大きく関与していると考えられています。セリアック病を発症しやすい家系があり、セリアック病の人のほとんどがHLA-DQ2またはHLA-DQ8という遺伝子を持つとされています。
セリアック病の症状は、グルテンの摂取によって現れます。小腸の上皮がダメージを受け、ビタミン、カルシウム、タンパク質、炭水化物、脂肪などの重要な栄養素の吸収を妨げるため、身体がうまく機能しなくなってしまうのです。 発症を予防するためには、栄養士の指導のもと、グルテンを除いた食事管理を学び、コントロールしていくことが必要になります。
グルテンはコムギ、ライムギ、オオムギ、ライコムギなどの穀物に含まれており、これらはケーキ、パン、パスタ、シリアルなどの様々な食品に用いられています。 また、加工食品に添加されることもありますので、食品ラベルをよく確認することが重要です。なお、メーカーが加工食品の成分を変更することもありますので、購入のたびに確認しましょう。小麦を含まないからといって、グルテンフリーとは限りません。例えば、次に挙げるものにはグルテンが加えられているので注意しましょう。グルテンが含まれているかわからない場合は、食べるのを控えた方が無難です。
<グルテンが含まれている食品・製品>
・ビール、その他のアルコール
・クルトン、パン粉と詰め物
・加工された惣菜の肉
・模造ベーコンとシーフード
・ソース(肉汁、増粘剤)
・スープとスープベース
・しょうゆ
・薄焼きせんべい
・マリネ
・麦芽、麦芽フレーバー、麦芽酢
・処方薬および市販薬およびサプリメント
・ビタミンを含む栄養補助食品
・リップスティック、リップグロス、リップクリーム
・子供用粘土(セリアック病の子供は、粘土を使用した後に手を洗う必要があります)
グルテンが摂れないからといって、食事を楽しむことができなくなるわけではありません。グルテンフリーの食品は多数あり、工夫によって今までを同じ程度に食事を楽しむことができます。 最近は、パンやパスタ、ソース、焼き菓子などのグルテンフリー食品が開発されています。スーパーや専門の健康食品店、インターネットで探してみましょう。
<主なグルテンフリー食品>
・果物
・野菜
・肉、魚、鶏肉(マリネやコーティングはしない)
・米
・ナッツ
・グルテンフリー粉(ジャガイモ、大豆、米、キビ、亜麻、ソルガム、タピオカ、コーンスターチ)
・ミルク、コテージチーズ、クリームチーズ、ヨーグルトなどの乳製品
専門の書籍、ウェブサイトを利用して、自ら積極的にグルテンフリー食について学ぶことはとても大切ですが、必ず医師や栄養士の指導のもと、食べることのできるものと避けなければならないものをリストにまとめ、食事の計画を作りましょう。外食の際には、メニューに使用している食材を店員に確認してください。最近はグルテンフリーのメニューが用意されている店や、 グルテンフリー専門のレストランもあるので、食事で困ることは少ないのではないでしょうか。
セリアック病には根本的な治療法がありません。そのため、セリアック病患者はグルテンフリーの食生活を続ける必要があります。しかし、食品について正しい理解を深めることによって、彩り豊かな食生活を実現することができるでしょう。グルテンフリーダイエットの開始直後は、医師からビタミン、ミネラルを補う栄養補助食品を勧められることがありますが、これも食生活プランがしっかりしていけば基本的に必要なくなります。不安に陥ったりしてしまうと、かえって症状を悪化させてしまいますので、ぜひ、前向きにグルテンフリーダイエットに取り組んでいきましょう。