記事監修医師
東京大学医学部卒 医学博士
ワクチンの接種広く普及した1963年に比べ、子供の伝染病患者は少なくなりました。そのため「子供へのワクチン接種は本当に必要なのか?」という疑問を持つ親も増えてきています。そこで、ワクチン接種の必要性とその理由についてこの記事で見ていきましょう。
例えば麻疹ワクチンの接種ができるようになった1963年より以前は、米国ではほぼ全ての人が20歳になる前に麻疹にかかっていたといわれています。それによって1000人に3人が死亡し、数え切れない人数が重症になっていましたが、予防接種が行われるようになると感染ケースがそれまでと比べて99%も減りました。
また、百日咳の予防接種が開発される以前は、毎年米国で何千万人もの感染者及び数千人の死者がでていましたが、今日の米国での年間の感染ケースは7000人で、死者は10人程度です。その一方で、百日咳のワクチン接種ができない地域では、現在でも毎年30万人以上の人々が死亡しています。これらのことから、幼児期の一連のワクチン接種が子供を伝染病から守るのに重要であると言えるでしょう。
幸運なことに、上記で紹介したような伝染病に罹っている子供をあまり見かけなくなりました。そのために「ワクチン接種を受けなくても大丈夫ではないか?」と考える人も増えてきているようです。しかし、自分の子供が病気に感染しないでいられるのは他の子供たちがワクチン接種を行っているからです。ワクチン接種を受けていない子供はこれらの伝染病にかかるリスクがあり、感染してしまうと病原体を自分の周りに広げてしまう可能性があります。予防接種を受けないという選択は、自分の子供の健康だけではなく、友人や隣人、自分の住むコミュニティーに住んでいる人たちの健康を脅かす危険性があるということを覚えておきましょう。
ワクチン接種から生じる潜在的なリスクや副作用について、小児科医に話を聞いたり、説明書きを医師からもらって読むなどして、予め接種するワクチンに関する情報を知っておきましょう。正しい情報を持てば、安全性について必要以上に不安にする感じることもないと思われます。また、ワクチン接種のときに注射針を刺した場所に痛みや赤みが出たり、気分が悪くなったり、微熱が出るなどの反応がでることはありますが、軽い症状で済むことがほとんどであり、長く続くことはないでしょう。
ワクチンの主成分は、病気の原因となるウイルス・細菌・毒素です。ワクチンが効果的に働かせるために他の成分も必要になりますが、その大部分はワクチンの製造過程のみに必要になるものばかりであり、提供される段階では除去されているかごく少量しか残っていません。
不活化ワクチンは死菌ワクチンとも呼ばれ、化学薬品や熱によって破壊されたウイルスを原料にしています。免疫応答が弱いという特徴があるため、免疫力の維持のために複数回の投与が必要になる場合や、増量が必要になる場合があります。生ワクチンは弱毒化ワクチンとしても知られ、弱められているものの完全に壊されてはいないウイルスが原料になっています。
改めてワクチン接種の重要性を確認できたのではないでしょうか?子供にワクチン接種をするかどうか決める際に、安全性や副作用などのリスクを確認し、得られるメリットを踏まえたうえで受けるかどうかの判断をするようにしましょう。