記事監修医師
東京大学医学部卒 医学博士
めまいが起こる原因としては、頭部外傷や外傷性脳損傷(脳が頭蓋骨にあたるほど頭を激しく打ちつけた場合に起こる損傷)のように、外部から衝撃が加わることにより起こるめまいと、病気の症状として起こるめまいがあります。
ここでは、とくに後者を取り上げ、代表的なものをいくつか挙げてみます。
ウォルフ・パーキンソン・ホワイト(WPW)症候群は、心臓に余分な電気経路が存在するまれな心臓病です。 これは、不整脈と呼ばれる心拍のリズムの変化を引き起こす可能性があります。 WPW症候群を患う人は、一定期間、非常に速い心拍(頻脈と呼ばれる)を経験することがあります。
症状としては、めまいの他、動悸や急激な胸の鼓動、疲れ、意識の喪失(倒れる)、息切れしやすいなどがあります。
高さ2000m以上の高所で起こる病気です。深刻な高山病には、急性高山病、肺に影響を与える高地肺水腫(HAPE)、脳に影響を与える高地脳浮腫(HACE)がありますが、予防することもできます。
最初の徴候は、頭痛、頭部のふらふら感、衰弱、睡眠不全、胃の不調などです。より重症になると、咳(せき)、錯乱、呼吸困難があらわれ、まっすぐ歩くことができなくなります。
肺高血圧症とは、肺に血液を運ぶ血管の血圧が上昇する、深刻な健康問題です。肺動脈は、心臓から肺まで血液を運ぶ血管です。これらの動脈が狭くなったり、損傷したりすると血を多く運べません。これにより肺に血液を押し込むことがより困難になるため、心臓に負担がかかります。狭窄した動脈では血圧が上昇し、心臓の右側と肺に血液を運ぶ血管の高血圧を引き起こします。
肺高血圧症は、最初は何の症状もないかもしれませんが、悪化するにつれて運動やその他の活動が困難になる他、めまい、息切れ、咳、疲労、胸の痛みや圧迫感、急速な心拍、足首、脚、腹部の腫れなどの症状が出ます。
良性発作性頭位めまい症(BPPV)は、内耳の問題であり、突然、めまいを感じさせます。
症状としては、部屋が回転しているように感じたり、周囲が動いているように感じるかもしれません。または特定の方向に動いた時(頭を回したり、立ったり、ベッドで転がったり、横になるなど)にめまいや吐き気を感じます。胃の調子が悪くなる場合もあるでしょう。BPPVは厄介ですが、重篤な症状となることは滅多にはありません。
メニエール(Meniere)病は、内耳の問題です。 原因は正確にはわかっていませんが、内耳の体液の蓄積に関連している可能性があります。本人にとっては煩わしい病気かもしれませんが、伝染性はなく、致死的でもありません。
また、慢性(進行中)の疾患ですが、患っていても常に症状が出るわけではありません。症状が現れる発作は頻繁に起こり、20分から2時間以上続くことがあります。
メニエール病は、通常、片側の耳に発生しますが、この病気に罹っている人のなかには両耳に罹患している人もいます。
症状としては、めまいや耳の膨満感、、耳鳴り (耳の轟音)などです。めまいは回転している、または廻っているように感じます。発作はバランスの問題を引き起こし、不安定な歩行になるかもしれません。回転している感覚のために、汗、吐き気を感じたり、嘔吐したりする人がいます。 特に、低音に対して、聴力障害が発生することがあります。
洞不全症候群は、運動中など心拍出量を増やす必要が起こった時に、心拍数を上げたり下げたりして心臓の拍動を助ける洞結節の異常から、徐脈(じょみゃく)を起こす病気です。心臓病に罹患した600人のうち約1人に洞不全症候群がみられ、70歳以上の高齢者に多く発症します。
主な症状は、意識喪失やめまい、不整脈や徐脈(脈がとんだり、速すぎたり遅すぎたりする)です。ただし、症状がないか、少し具合が悪いと感じているだけの人もいます。
内耳炎(ないじえん)は、内耳と呼ばれる耳の内側の一部を冒す病気です。通常、内耳は人の姿勢のバランスを保つのに役立ちます。内耳炎によって腫れると内耳は正しく働かなくなるので、脳は正しいバランス信号を得られなくなります。
症状は、朝目を覚ました直後に症状が現れることがありますし、また一日中どの時間でも、突然症状が出ることがあり得ます。
一般的な症状は、ふらふらするようなめまい、回転しているような感覚(回転性めまい)、目のけいれん(眼振とも呼ばれる)、吐き気または嘔吐、片耳の聴力損失、耳中で鈴がなっているような幻聴(耳鳴り)など。
めまいは、しばらくおとなしくしておけば収まることがほとんどです。しかし、大きな病気が隠れていることがあります。
例えば、自分に慢性疾患がある場合や、体が弱っている、妊娠中などの時に、なかなかめまいが治らない場合は、早めに医師に相談するようにしましょう。