男性特有の器官である前立腺。高齢者が注意すべきトラブルとは?

2017/7/15

三上 貴浩 先生

記事監修医師

東京大学医学部卒 医学博士

三上 貴浩 先生

男性なら誰しもペニスと膀胱の間に前立腺を1つ持ちます。前立腺は性生活に重要なものですが、前立腺のことをあまりよく知らないどころか、間違った扱いをしてしまう男性もいるのではないでしょうか。
今回は、前立腺に現れる症状の中でも高齢者に多いとされる2つの症状について解説します。

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前立腺について


前立腺は膀胱の下に位置し精液の一部を分泌する、男性の性生活に重要な働きを担う器官です。前立腺は年を取るにつれて大きくなる(肥大する)ことがありますが、50歳以上の男性の3分の2には異常をきたすことがないといわれています。
肥大化した前立腺が尿管を圧迫し尿の問題を引き起こしてしまう場合もありますが、これは良性の前立腺肥大のことが多いです。

しかし、ほかの前立腺疾患として、感染が原因で起こる前立腺炎による腫れが現れることがあり、これは排尿時に痛みを伴います。また、前立腺の単一細胞が異常増殖することで、がんが発症することもまれにあります。

以下で、高齢者の罹患率が高い「良性前立腺腫大」と「前立腺がん」の2つについて見てみましょう。

良性前立腺腫大


良性前立腺腫大(BPE)は、前立腺肥大症の一つで、排尿時に影響が出る状態です。
良性前立腺腫大は、50歳以上の男性に多く見られます。ガンなどの腫瘍や感染症による腫脹ではないため、通常は健康に深刻な被害が及ぶことはほとんどありません。

原因

前立腺肥大の原因ははっきりとはわかっていませんが、ホルモンの変化が関係しているのではないかと考えられています。
年齢を重ねることで変化していく体内のホルモンバランスが、前立腺に何らかの影響を与えることで前立腺を肥大させている可能性が示唆されています。

症状

前立腺が肥大すると、尿道(尿が通る管)を圧迫してしまう場合があります。
尿道が圧迫されると、排尿時に影響が出てしまい、以下のような状態を引き起こす可能性があります。
・最初に尿を出すのが難しくなる
・頻繁に尿意を催す
・膀胱を完全に空にするのが難しくなる

症状が軽く治療の必要がない場合もありますが、肥大が進行し症状が悪化すると日常生活で多くの問題を抱えてしまうこともあります。

また、前立腺肥大と聞くと、前立腺ガンを発症するリスクが高くなるのではないかと思う人も多いかもしれませんが、前立腺肥大のない男性と前立腺肥大がある男性の発症リスクはさほど変わりありません。

前立腺がん


前立腺がんは、男性にとって一般的ながんの1つであり、死亡率の高いがんとして知られています。

しかし、初期の段階で見つかった場合は生存の可能性が高いとされ、初期に見つかった人の90%が最低でも5年以上、65~90%は少なくとも10年以上生存するといわれています。

前立腺がんの初期のうちは自覚症状がまったく現れないことがほとんどで、症状が現れたときにはすでに進行しているケースが多いとされます。主な前立腺がんの症状は以下の通りです(いくつかの症状は、ほかの前立腺の疾患によって引き起こされる場合があります)。

・頻尿。特に夜間がひどい
・排尿困難
・力んで排尿したり、出し切るのに時間がかかる
・排尿時やセックスのときの痛み

これらの症状がある場合はす医師に相談しましょう。

70歳以上の男性で前立腺がんを患っている人は多いといわれていますが、ほとんどが診断されていないか自覚症状がないものです。

大多数の症例を見るかぎり、前立腺がんの進行は遅く症状や問題を引き起こすことが少ないため、診断されないままになる可能性があります。
しかし、時として前立腺のがん細胞が急激に増殖し、前立腺の外側に出て浸潤が始まると、骨などほかの部位に転移することがあります。

おわりに:高齢になるとリスクが高まる

前立腺がんのリスクは年齢が上がるにつれて高くなります。がんと診断された人の大半は50歳以上といわれ、前立腺肥大または前立腺手術によって尿失禁のリスクが高まるのも、50歳以上といわれています。。
高齢になっていくにつれ、知らないうちに徐々に体の自由もきかなくなっていきます。自分では元気だと思っていても、どこかに重大な問題が起こっていることもあるので、体の不調があるときはすぐに医師に相談するようにしましょう。

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