パニック障害の原因は? ストレスも関係している?

2017/7/11 記事改定日: 2018/3/26
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前田 裕斗 先生

記事監修医師

前田 裕斗 先生

突発的な激しい動悸や発汗、震え、不安感などの「パニック発作」を、定期的に繰り返す「パニック障害」。このパニック障害の原因は、一体何なのでしょうか。ストレスが原因で発症するという話もありますが、それは本当でしょうか?パニック障害の原因と治療法について解説します。

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パニック障害の原因はセロトニン不足?

パニック障害が起こる原因としては、脳内の神経伝達物質が関連していると考えられています。人間の脳は、大きな不安を感じると「ノルアドレナリン」という恐怖や不安に関連する神経伝達物質を活発に分泌するのですが、通常は「セロトニン」という物質がノルアドレナリンの作用を弱め、精神を安定させるため、パニック発作を起こすことはありません。しかし、パニック障害の患者さんはセロトニンよりもノルアドレナリンの分泌量が多いことが原因で、発作が起きやすくなっていると考えられています。

そして実際、セロトニンの量を増やす薬を服用するとパニック障害の症状は改善するため、セロトニンとノルアドレナリンの分泌量のバランスが原因と考えられているのです。

仕事などのストレスもパニック障害の原因?

パニック障害の発症には、遺伝などの身体的要因と心理的要因が複合的に結びついている可能性があるとされ、この「心理的要因」の中にはストレスも含まれると考えられています。まだ因果関係がはっきり証明されたわけではありませんが、遺伝子に特に異常はなくても、幼少期に親と離別したり、虐待を受けたり、仕事や家庭で強いストレスを感じたりすると、パニック障害を引き起こすケースもあると言われています。

ただ、仕事のストレスなどの特定の1つのストレスや出来事ではなく、複合的に強いストレスや疲労を感じ続けることで、パニック障害を発症しやすくなるという指摘もあります。

首が原因でパニック障害が起こる?

一部の整体院などの治療院では、「首の歪みによって自律神経失調症を発症したことが原因で、パニック障害が引き起こされている可能性がある」と仮説を立てているところもありますが、これに関してははっきりした因果関係が証明されているわけではありません。

パニック障害の治療

パニック障害には主に2つの治療方法があります。

薬での治療

パニック発作やパニック障害をコントロールする簡単な治療法があります。いくつかの薬は、パニック発作を和らげ、止める効果が期待できます。

例えば、パキシルやジェイゾロフトのような「抗うつ薬」は、不安とパニック発作の予防に効果的とされ、 パニック発作が起きた際に抑えてくれる効果もあるとされます。軽度の副作用がありますが、コントロールを失ったり人格を変えることはありません。

また、ワイパックスやソラナックス、リボトリールなどの抗不安薬は、恐怖や不安から解放してくれる薬です。よく処方される薬ではありますが、依存作用があるために長く内服する場合には注意が必要です。 薬を処方された場合、勝手に服用を止めてはいけません。 服用を中止する必要がある場合は、医師の指示のもとで数週間かけて徐々に減らしていくことになります

カウンセリングでの治療

カウンセリングは、パニック発作やパニック障害の治療に非常に有効と考えられています。 利用可能なカウンセリングの種類については、医師に相談しましょう。 カウンセリングは薬のような即効性はないですが、有効性には期待できます。 また、カウンセリングと薬の併用は、パニック発作やパニック障害の治療に効果的であるという報告もあります。

ストレスを解消することも大切

はっきりと因果関係が証明されたわけではありませんが、先述の通り、ストレスもパニック障害の原因の一つと考えられています。このため、ストレスを解消することも、パニック障害の治療を円滑に進める上では大切なことです。具体的には以下のことを実践してみてください。

悩みについて書く

悩みの種について書くことが助けになることもあります。ストレスを感じさせた出来事と、その出来事によってどんな気持ちになったかについて書く時間を一日に10分から15分取りましょう。何がストレスを引き起こしているのか、そしてどれくらいのストレスを感じているのかを自覚するうえでの手助けになります。自分のストレスのことを詳しく知ることによって、より良い対処法を見つけることに役立ちます。

感情を表に出す

自分の気持ちに正直になり、話して、笑って、泣いて、怒りましょう。友人、家族、カウンセラーと自分の気持ちについて話すことは、ストレスの健康的な軽減方法と考えられています。

本心から楽しいと思えることをする

忙しすぎてできないと感じる人もいるかもしれませんが、心から楽しいと思える時間を過ごすことは、リラックスにつながります。

瞑想する

瞑想をすると、現在起きていることに注意が集中します。呼吸に注意を注ぐのは、集中するために有効とされる方法のひとつです。マインドフルネス・ストレス低減法(MBSR)は、ストレスを管理し、よりよく対処できるようになる上でとても役に立つ瞑想の一種です。

運動する

定期的な運動は、非常に効果的とされるストレス管理方法のひとつです。気軽に始めるものとして、ウォーキングはうってつけではないでしょうか。家の掃除や庭仕事といった毎日の活動でもストレスの軽減効果が期待できます。また、ストレッチやヨガは筋肉の緊張をほぐすことも、ストレスの軽減に役立つでしょう。

おわりに:ストレスにうまく対処し、パニック障害の治療効果を上げよう

基本的にパニック障害は、脳の神経伝達物質の分泌バランスの問題が原因で起こると考えられていますが、日常的に強いストレスが積み重なることでも発症リスクが上がると考えられています。適切な治療を進めつつ、日々ストレスを溜めないように努めることが大切です。

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