喘息(ぜんそく)治療はどこを目的にすればいいの!?

2017/7/6

山本 康博 先生

記事監修医師

MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長
東京大学医学部卒 医学博士
日本呼吸器学会認定呼吸器専門医
日本内科学会認定総合内科専門医
人間ドック学会認定医
難病指定医
Member of American College of Physicians

山本 康博 先生

喘息は現在のところ完治をさせることはできません。しかし、症状を抑えコントロールをすることは可能であり、正しく発作を管理できるようになることが治療の目的になります。そのためにはどのようなことに注意すればいいのかについて詳しく解説していきます。

冷凍宅配食の「ナッシュ」
冷凍宅配食の「ナッシュ」

喘息の治療はどのように行う?


喘息治療は、長期管理薬と発作治療薬の2種類の薬が使用されます。日常生活に支障がないように、発作をコントロールする目的で使われる「長期管理薬」が治療の基本となり、発作が起こったときの緊急措置として即効性のある発作治療薬が使われます。
長期管理薬での治療は、大人子供に問わず「吸入ステロイド」で気道の炎症を抑えることが中心になり、喘息の状態にあわせて医師が作成した治療計画をもとに、治療が進められていくでしょう。

吸入ステロイドとは

喘息発作を管理するために、最も重要といえる長期管理薬です。吸入して気管支にダイレクトに作用させるため、薬の量を抑えられ、副作用のおそれが少なくなります。気道の炎症、腫れ、痰を抑えることで空気の通り道を確保し発作を起こりにくくして、体の負担を少なくしていきながら喘息をコントロールします。吸入ステロイドの効きかたはゆっくりで、効果のピークまで数時間かかることもあります。吸入ステロイドの投与量は症状の重さによって異なりますが、毎日使用する必要があります。急に止めると発作が悪化する可能性があるので、自己判断で吸入を中止しないようにしましょう。

経口ステロイド

急な発作が起こったときの緊急処置として使われる発作治療薬です。強い効果が期待できますが、長期的・頻繁な服用は喘息の発作管理の妨げになる可能性があり、非常にまれではありますが骨粗鬆症、高血圧、糖尿病、気分の不安定などの副作用のおそれがあるといわれています。

 

民間療法は補助目的で

病院での治療の他にも、喘息の緩和に効果的とされる民間療法がいくつか報告されています。漢方、鍼灸、カイロプラクティック、ホメオパシーなどは、その代表的なものとして挙げられるでしょう。ただし、これらの方法は医師にによる治療に代わるものではありません。あくまで補助として用いるようにしましょう。

治療の目的は喘息のコントロール


喘息の治療の目的は、症状を抑えることです。そのために、以下のことに留意しながら治療が進められていきます。
・咳や息切れなどの、慢性的で煩わしい症状を予防する
・即効性の高い薬の必要性を減らす
・肺の機能を維持する
・日常の活動レベルを維持し、夜間の睡眠を促進する
・発作を防止し、緊急処置室や入院につながる症状を防ぐ

喘息をコントロールできる程度は、時間の経過ともに変化し、家庭、学校、職場などの環境も、症状が変化する要因になります。喘息の発作がどの程度コントロールできているかによって薬の量が変わっていくので、環境面を見直すことも治療にとって重要なポイントといえるでしょう。

発作を未然に防ぐためには


普通の人には影響がないものでも、喘息者にとっては発作の要因になる場合があります。例えば、ペットの毛や香水は代表的な危険因子です。このような「発作のトリガー」となるものをあらかじめ把握し避けることが、発作を未然に防ぐうえで重要になってくるでしょう。

また、発作のきっかけになるものの多くはアレルゲンです。部屋はこまめに換気・清掃を行い、ダニが好まない清潔な環境に努め、外出するときにはマスクを着用するようにしてアレルゲンから身を守るようにしてください。アレルゲンの除去がむずかしいときは、アレルギー注射で予防・緩和するという方法もあります。ただし、アレルギー注射自体は喘息を治療するものではなく、事前の医師の確認が必要になることは留意しておいてください。

医師に相談しながら不眠やストレスなどの生活習慣を見直し、ウォーキングや水泳など心肺機能を高めるために適度な運動を取り入れ、発作が起こりにくい環境づくりを進めていきましょう。

おわりに:喘息発作をコントロールして、QOLを向上しよう

ほとんどの喘息は、発作のコントロールが可能とされています。生活の質(QOL)向上のためにも、医師の指示通りに治療を進めていきましょう。また、万が一発作が起こったときのために、子供が喘息を患っている場合は周囲の大人全員で子供の行動計画について情報共有するようにしてください。そして、発作治療薬で治まらないような急な発作が起きたときは、手遅れになる前にただちに救急車を呼びましょう。

関連記事

この記事に含まれるキーワード

アレルゲン(25) 喘息(71) ステロイド(50)