記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
2017/8/8
記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
前回の記事では、外からの刺激による難聴の原因についてお伝えしました。今回の記事では、耳垢や薬の副作用、慢性疾患など、体の中の原因について、まとめました。
耳が聞こえにくいと思っている人の中には、その原因に心当たりがある場合もあるでしょう。この記事を読んで思い当たることがある場合は、病院で耳鼻科を受診しましょう。
ここでは、難聴の原因となる体内での問題を中心にまとめます。
耳垢は外耳を、汚れや菌から守る役割をしています。
しかし、耳垢が溜まり固くなると、硬くなった耳垢のかたまりが耳を詰まらせ、聴力に影響することがあります。耳に痛みが出たり耳が詰まった感じがすることもあります。
耳垢が詰まっているような気がする場合は、自分で綿棒を入れて取ろうとせず、耳鼻科の医師にお願いしましょう。
薬の副作用で難聴になる場合があります。特定の抗菌薬やがん治療薬などはこのような副作用が起こる可能性があるため、薬の服用・投薬と同時に聴力の管理も行われます。
また、薬を常用的に服用することでで、永続的な難聴となる場合もあります。アスピリン、非ステロイド系抗炎症薬、アセトアミノフェンの常用は難聴のリスクを高めるといわれています。薬の服用を中止すると、聴力に関連した副作用が消えることもあります。気になる場合はスグに医師に相談しましょう。
耳に関係ないと思える特定の慢性疾患が難聴の原因となることがあります。
例えば、内耳や脳への血流が阻害されることで難聴が起こることがあります。こうした疾患には心臓疾患、脳卒中、高血圧、糖尿病などがあります。関節リウマチなどの自己免疫疾患も、難聴と関連があるとされています。
骨腫、外骨腫、良性ポリープなど、非がん性の腫瘍が外耳道を塞いで、難聴となることがあります。このような場合は、腫瘍を取り除くことで聴力を取り戻すことができるケースもあります。
聴神経腫瘍は、聴覚・平衡感覚を司る聴神経にできる腫瘍のため、聴力に影響を与えます。聴力だけでなく、平衡感覚の問題や、顔のしびれやチクチクした痛みも現れることも特徴です。
耳周辺への外傷は、中耳骨の位置を変えたり、神経損傷の原因となります。この結果、永続的な難聴になることもあります。
飛行機や、スキューバダイビングなどによる突然の気圧の変化は鼓膜、中耳、内耳の損傷の原因となることがあります。
鼓膜は、通常2~3週間で回復することが多いですが、内耳の損傷が重度の場合、手術を受けなければなりません。傷がある場合、耳に綿棒などを入れてはいけません。鼓膜に傷をつけ、永続的な損傷の原因となります。
思い当たる場合は、スグに病院に行き、耳鼻科を受診しましょう。
多くの小児期の疾患には、難聴の原因となるものがあります。
中耳炎は中耳に水が溜まり、聴力が失われる原因となります。通常は感染が治り、中耳の水がなくなれば治ります。
他の感染症でも、中耳や内耳の損傷に繋がるものもあり、永続的な難聴の原因となることもあります。小児疾病で難聴に影響する可能性があるものには、水痘、脳炎、インフルエンザ、麻疹、髄膜炎、おたふく風邪などがあります。
これらの病気は、ワクチンの接種で防ぐこともできるので、子供の感染症が気になる人は病院に相談しましょう。医師はどのワクチンをいつ接種すればよいのか説明してくれるでしょう。
生まれつき難聴の子供もいます。先天性難聴と呼ばれるものです。
先天性難聴は遺伝することがあります。また、母体が糖尿病の場合や妊娠中の感染症などが原因になる場合もあります。
新生児が未熟児だったり、新生児が十分な酸素を得ることができなかった場合や、分娩中の外傷などの理由から、赤ちゃんが難聴となる可能性もあります。また、新生児の黄疸も、新生児難聴の原因の1つではないかといわれています。
年齢が上がるにつれ、聴力は低下していきます。自分の耳をきちんと手入れし、病気などに気をつけていたとしても起こるものです。
年齢に関連した難聴は、内耳の有毛細胞の消失により起こることが多いです。
残念ながら、加齢による聴力の低下を防ぐ方法はありませんが、失われた聴力を補う様々な方法があります。
補聴器など、自分に合うものはどれなのか、耳鼻科の医師や補聴器の専門家に相談をしてみましょう。
今までみてきたように、難聴の原因は、外からの刺激から小児期の疾患、生まれつきのものまでさまざまです。加齢による難聴のように、気をつけていてもどうにもならないものもあります。ただし、難聴は、補聴器などの機器を使うことで、かなりの聴力を補うことが可能です。