複雑性PTSDとは、どのようなPTSD!?接し方のポイントは?

2017/3/13 記事改定日: 2019/2/27
記事改定回数:3回

山本 康博 先生

記事監修医師

東京大学医学部卒 呼吸器内科医

山本 康博 先生

二宮 英樹 先生

記事監修医師

東大医学部卒、セレオ八王子メディカルクリニック

二宮 英樹 先生

三上 貴浩 先生

記事監修医師

東京大学医学部卒 医学博士

三上 貴浩 先生

複雑性PTSDは、心的外傷後ストレス障害(PTSD)の一種として近年提唱されいている概念です。心的外傷後ストレス障害(PTSD)は交通事故、人の死に直面したこと、戦争体験などの体験によって発症します。
一方で複雑性PTSDは、幼少時代の虐待など、もっと長期的な出来事が原因で起こります。この記事では、複雑性PTSDの症状や治療法について解説します。

複雑性PTSDとは?

心的外傷後ストレス障害(PTSD)は、交通事故や身近な人の死、戦争やテロ、津波や大地震などの自然災害に巻き込まれたことなどが原因で発症します。

PTSDを発症すると、突然つらい記憶がよみがえったり、不安や緊張が続いたり、めまいや頭痛、不眠、感情や感覚の麻痺といった症状があらわれます。こうした症状は、身の危険が及ぶようなつらい経験をした直後であれば誰にでもあらわれますが、こうした症状が数カ月以上続いていたり、悪化したりする場合は、PTSDの可能性があります。

複雑性PTSDは、幼少期に虐待(性的虐待も含む)や監禁を受けていたことや、長期間にわたって捕虜になっていたことがあるなど、数カ月から数年にわたる体験が原因で発症するものです。

複雑性PTSDは、次のような経験をするとさらに深刻なものになると考えられています。

  • 幼少期に原因となる出来事が起こった
  • 両親や兄弟から被害を受けていた
  • 被害を受けた期間が長期にわたる
  • トラウマとなる出来事が起こっている間、味方がおらず孤立していた
  • 現在もまだ加害者とつながりがある

複雑性PTSDの症状が出てくるのには何年もかかることがあり、子供が複雑性PTSDを発症した場合、成長するにつれて性格や症状が変化していきます。
また、大人が発症した場合は人を信頼することが難しく、自分が周りから孤立していると感じることがあります。

複雑性PTSDの症状

複雑性PTSDの症状は、PTSDと共通するものと、複雑性PTSD特有のものとがあります。

PTSDと共通する症状

  • フラッシュバック(原因となった出来事が、突然鮮明に蘇ってしまう)
  • 同じ悪夢を繰り返し見る
  • 身体症状が出る(痛み、冷や汗、吐き気、ふるえなど)
  • トラウマとなっている出来事を思い起こさせる人や場所を避ける
  • 常に神経が張り詰めている(不安やイライラ、不眠などが出る)
  • ときどき感情や感覚がまひしているように感じる

複雑性PTSD特有の症状

  • 自己嫌悪感や罪悪感がある
  • 自分の感情をコントロールするのが難しい
  • 他人とコミュニケーションをとるのが難しい
  • 身体感覚がまひしているか、鈍くなっているように感じる
  • 注意や集中力を欠く時期がある
  • 自分が自分であるという感覚が失われている(解離)
  • 自傷行為で感情をコントロールしている
  • 自殺願望がある

複雑性PTSDの治療法

複雑性PTSDの治療は、以下の3段階で行われます。

心の安定を取り戻す

複雑性PTSDを治療するための最初のステップは、トラウマとなっている精神的な苦痛やつらい感情に心が支配されている状態から抜け出し、自分自身で感情をコントロールできるようにすることです。そのために、「グラウンディング」という方法が使われます。

グラウンディングとは精神的な安定を取り戻すために行われる方法のひとつで、「現在(今ここ)」をしっかり意識して生きていくことを目指します。複雑性PTSDの人は、つらさから逃れたいあまり、自分という感覚を失っていることが多いため、この方法で過去のつらい記憶や体験と現在とを区別することができます。これにより、心身のバランスを保てるようになったり、現実の日常生活をしっかり生きている実感が持てるようになったりします。

トラウマに焦点をあてた治療を行う

トラウマに焦点を当てた治療として、以下のような方法があります。

  • 特定のタイプの心理療法
  • 認知行動療法(CBT)
  • 眼球運動による脱感作および再処理法(EMDR)

これらの治療法は、トラウマとなっているつらい記憶を思い出したときの苦痛を和らげたり、コントロールできるようになったりするのに効果があります。ただし複雑性PTSDの場合、この方法を適切に用いないと症状を悪化させてしまうこともあるので注意が必要です。

再統合する

最後の段階では、これまでの治療で身につけたスキルやテクニックを使いながら、新しい生活や人間関係を築くことを目指します。症状に応じて、抗うつ薬などの医薬品が処方されることもあります。

複雑性PTSDの人には、どのように接すればいい?

複雑性PTSDの人は、特定の他者に対して極端な依存をすることがあります。それと同時に、その人物が自分から離れてしまうことに異常なまでの恐怖心を抱き、自分の思い通りに行動しないと攻撃的になるなど真逆の態度に出ることがあります。また、自傷行為や自殺願望などを見せることで、相手の注目を集めようする傾向があります。

このような複雑性PTSDの人に接するときには、依存性を持たれないよう、適度な距離感を持って接し、過度な共感や傾聴は控えるようにしましょう。また、自傷行為や自殺願望などを見せられた場合でも、過剰な反応は禁物です。

おわりに:複雑性PTSDの治療は段階的に行う

複雑性PTSDは、長期にわたって幼少期に虐待を受けたり、監禁や拷問を受けていたりすることが原因で発症するため、PTSDに比べて心の傷が深く、また、治療も長期化する可能性があります。しかし、しっかりとステップを踏んで治療していくことで、他人や社会に対する不信感が少しずつ和らぎ、「人を信じても大丈夫」という気持ちを取り戻すことができます。焦らず、ゆっくりと治療していくことが大切です。

この記事に含まれるキーワード

治療(462) 症状(560) PTSD(9) 複雑性PTSD(2)