喘息の種類にはどんなものがある? 薬の種類についても解説

2017/8/10 記事改定日: 2018/4/5
記事改定回数:1回

山本 康博 先生

記事監修医師

MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長
東京大学医学部卒 医学博士
日本呼吸器学会認定呼吸器専門医
日本内科学会認定総合内科専門医
人間ドック学会認定医
難病指定医
Member of American College of Physicians

山本 康博 先生

一言で喘息といっても、実は喘息にはさまざまな種類があるということをご存知でしょうか。今回の記事ではそんな喘息の種類や、喘息の治療薬の種類、喘息発作を管理するコツなどについて幅広く解説します。

冷凍宅配食の「ナッシュ」
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喘息にも種類がある!

喘息には、「アトピー型喘息」と「非アトピー型喘息」の2種類があります。

アトピー型喘息

アトピー型喘息とは、アレルギーが原因で起こる喘息です。鼻や口から侵入したアレルゲンにIgE抗体が反応することで起こります。具体的なアレルゲンとしては、以下のものが挙げられます。

・ホコリ、カビ、ダニ、花粉
喘息の発作の誘因と考えれる一般的なアレルゲンは、ホコリ、カビ、ダニ、草花などの花粉です。花粉が誘因の喘息の場合、毎年同じ時期に喘息の症状が出ていないか思い出してみましょう。

・特定の食べ物
ピーナッツ、卵、魚などの特定の食べ物がアレルゲンとなって、喘息を引き起こすことがあります。

・ペットの毛、フケ
古い角質がペットの皮膚から剥がれ落ち、衣服、家具、壁などに溜まっていき、これを吸い込んでしまうと、喘息発作を誘発することがあります。猫アレルギーは、猫の唾液、肌、尿内のタンパク質に反応するとされ、空気や物の表面に蓄積した猫のタンパク質が喘息発作の誘因になることもあります。

非アトピー型喘息

アレルゲンが特定できないタイプの喘息です。屋内・屋外での空気汚染やタバコの煙、塗料、ヘアースプレーなどで引き起こされることもあると考えられています。

運動誘発性喘息

運動誘発性喘息は、マラソンやサッカーなどの持久力が必要な運動によって誘発される喘息です。喘息を持つ多くの人たちが運動をするとある程度の喘息症状を経験していますが、普段喘息がない人でも、運動中だけ喘息になる人もいます。

運動誘発性喘息では、運動が始まってから5~20分後に気道が最も狭くなり、息がしにくくなるといわれています。ヒューヒューという喘鳴音や咳などの喘息発作の症状がでるかもしれません。運動を中止すると30分ほどで回復します。

職業性喘息

職業性喘息は、職場での誘因によって起こる喘息です。この喘息は、仕事に出勤している日だけに息苦しさや喘息症状がで出るという特徴があり、この喘息に罹っている人の多くは、典型的な喘息の症状であるヒューヒューという喘鳴音の代わりに、鼻水、鼻詰まり、目の炎症、咳がでます。職業性喘息に罹りやすい職業としては、動物のブリーダー、農業、美容師、塗装工、建具師などがあります。

咳喘息

ゼーゼー、ヒューヒューという喘鳴や呼吸困難がなく、咳だけが続くタイプの喘息です。アレルギー素因のある人に多く見られますが、アレルゲンや原因は不明です。再発を繰り返す傾向にあり、風邪やタバコの煙、運動などが悪化要因と考えられています。

喘息に似ている別の疾患

喘息と同様の症状が出る他の病気があります。例えば、心不全は心臓疾患の一形態ですが、喘息の症状と似た喘鳴や呼吸困難感などの症状が表れるため心臓喘息と言われます。

喘息の薬の種類

喘息の薬には、炎症を抑え、気管支が狭くなるのを防ぐ「長期管理薬」と、発作時に気道を速やかに広げる「発作治療薬」があります。

長期管理薬

長期管理薬には、「ステロイド薬」「テオフィリン徐放剤」「長期時間作用型β2刺激薬」「抗アレルギー薬」があります。

ステロイド薬

ステロイドを吸入することで炎症の起こっている気管支の炎症を鎮めます。経口ステロイド薬と比べて副作用は少なく、長期使用の安全性も高いため、喘息治療薬として広く使われています。シムビコートやパルミコート、フルタイド、アドエア、オルベスコなどさまざまな種類があります。

テオフィリン徐放剤

テオフィリンとは茶葉に含まれる苦味成分で、気管支を拡張する効果があります。即効性が高く、抗炎症作用もあると言われています。

長期時間作用型β2刺激薬

吸入ステロイドと併用して処方されることが多く、文字どおり長時間にわたって気管支を拡張する作用があります。

抗アレルギー薬

現在使われている主流の抗アレルギー薬のロイコトリエン関連薬は、喘息を引き起こすシステイニルロイコトリエンの結合を阻害し、気管支の炎症と収縮を抑制する効果があるとされます。

発作治療薬

喘息の発作をすぐに鎮めるために使う薬で、「短時間作用性吸入β2刺激薬」「経口ステロイド」「テオフィリン薬」「短時間作用性吸入抗コリン薬」などの種類があります。

短時間作用性吸入β2刺激薬

気管支にある交感神経受容体に作用し、気管支を拡張させます。

経口ステロイド

炎症を抑える効果がありますが、胃潰瘍や糖尿病などの特定の疾患がある人は服薬できません。

テオフィリン薬

テオフィリンの作用については先述の通りですが、発作を鎮める際には注射剤として使われることが多いです。ネオフィリンが代表的な薬です。

短時間作用性吸入抗コリン薬

中等度〜重度の喘息発作が起きたとき、短時間作用性吸入β2刺激薬とともに使われます。アトロベントやテルシガンが代表的です。

藤田医院 の情報をもとに編集して作成 】

喘息発作の症状

息が切れて、あえぎ、胸が締め付けられるような感じがしたり、胸からヒューヒューという喘鳴音がします。また、咳が止まらなくなることもあります。ひどい喘息発作が起きた場合は、喘息の薬を使わないと生命を脅かす症状となる場合があります

喘息は夜間から明け方に悪化しやすい

喘息は夜間から明け方に喘息症状が現れやすいという特徴があります。これは、喘息が睡眠・覚醒の周期(概日リズム:サーカディアンリズム)に強く影響を受けているためです。ヒューヒューという喘鳴音、咳、呼吸困難などの症状はよくみられる症状ですが、夜間に起こる場合は危険が伴います。ある研究では、喘息の関連死は夜に多いことが示されています。その理由として

・喘息の誘因であるアレルゲンに曝されることが多くなるため
・気道が冷やされるため
・仰向けの姿勢で寝ることが多いため
・サーカディアンリズムに関係したホルモンの分泌
などが考えられます。

喘息があり、夜間に症状が悪化することに気が付いた場合は、喘息専門の医師に診断をしてもらい、喘息の理由を解明しましょう。場合によっては逆流性食道炎や後鼻漏などが夜間の症状を増悪させているかもしれません。適切な喘息の薬と薬を使うタイミングを理解することは、夜間喘息の管理と質の高い眠りを得るために重要なことです。

救急車を呼ぶ場合とは

歩いたり話したりするだけで息が切れ、唇や爪が青くなったり、発作時の吸入薬を使用しても発作が治まらない場合は、深刻な酸欠状態に陥っている可能性があり危険です。気道を開くために緊急の治療が必要となるので、すみやかに救急車を呼びましょう。

前兆を見逃さない

喘息ははっきりとした症状が起こらないこともあります。咳が多く出る(特に夜間)、眠れない、理由もなく疲れている、息が切れているような気がするなど、一見たいしたことがないようなものも、喘息による症状の可能性があります。この症状が原因で1日の活動に問題がでるわけではありませんが、ひどい喘息発作がくる前兆の場合もあるので注意が必要です。

最大呼気流量計(ピークフローメーター)

最大呼気流量計は、肺からどれくらい空気を吐き出すことができているかを測定する機器です。医師は喘息がきちんと喘息が管理されているかを確認するためにこの機器で測定することがあります。最大呼気流量計の値の変化を把握することは、喘息発作が起こる周期を予測するのに役立ちます。セルフチェックとして喘息発作の前兆として毎日測定しているピークフローが低下することがあり、早めの対処につながります。

喘息の行動計画を作り管理する

喘息を管理するための行動計画をご紹介します。

誘因を取り除く

喘息の管理を行うことがまず第一歩です。スモッグ指数が高い場合は屋外に出ないようにしたり、ダニ対策処理のされた寝具を使うなどしてみましょう。アレルゲン対策の方法として効果的とされる方法は、アレルゲンの元となるものや、アレルゲンが集まる場所を取り除くことです。ペットの毛やフケ、カーペット、布張りの家具などは特に注意しましょう。

アレルギー注射

喘息発作の誘因となるアレルゲンを避けられない場合は、アレルギー注射の接種で症状を和らげ、発作の回数を少なくすることができます。アレルギー注射は特定のアレルゲンへの敏感性を低くする効果があるとされ、アレルギーの専門医はどのアレルギー注射が喘息の緩和に効果があるかを判断する必要があります。

おわりに:喘息の種類に合わせた症状管理を!

喘息にはさまざまな種類があり、その種類によって発作の引き金は異なります。喘息発作を管理し、QOLを上げるために、まずは自分がどの種類の喘息なのかを把握することが大切です。

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