記事監修医師
東京大学医学部卒 医学博士
眠ろうとしても眠れない、いつの間にか時間が経ってしまい、焦るからまた眠れない、朝起きても疲れが取れない……。
このような症状で悩まされる不眠症に、なぜなってしまうのでしょうか? また、どうすれば治るのでしょうか?
この記事では、そんな疑問に答えるために、不眠症の治療について、2回に分けてまとめました。今回の記事では、不眠症についての概要と対策としての良い睡眠習慣づくりについてお伝えします。
不眠症には、入眠しずらい、もしくは眠り続けることができないという症状があります。そのどちらか、もしくは両方ある睡眠障害が不眠症です。不眠症の場合、次に挙げた症状が1つ以上現れます。
・入眠困難
・夜間に頻繁に起きたり、眠りに戻りづらかったりする
・早い時間に目覚めてしまう
・目を覚ますと疲れている
不眠症には、一次不眠症と二次不眠症の2種類があります。
一次不眠症は、不眠症の原因が他の健康疾患や問題と直接関係していないものです。
二次不眠症は、不眠症の原因が、健康疾患(喘息、うつ病、関節炎、がん、胸やけなど)や、痛み、服用している薬、アルコールなどにあるものをいいます。
不眠症は、症状が出ている期間や頻度によって、短期(急性不眠症)・長期(慢性不眠症)などにわけられます。
急性不眠症は、一晩から数週間症状が続く状態です。慢性不眠症は、1週間で3日以上の不眠の状態があり、1か月以上続いている状態です。
急性不眠症の原因には、以下のようなものがあります。
・重大な人生のストレス(失職や仕事の変化、愛する人の死、離婚、引越し)
・病気
・感情的または肉体的な不快感
・睡眠を妨げる騒音、光、極端な温度(暑いまたは寒い)などの環境要因
・薬(風邪、アレルギー、うつ病、高血圧、および喘息の治療に使われるものは、睡眠を妨げる可能性がある)
・通常の睡眠サイクルに影響を与えるもの(時差ぼけや日中シフトから夜間シフトへの変更などの生活の変化)
慢性不眠症の原因として、以下のようなものがあります。
・うつ病または不安、もしくは両方
・慢性的なストレス
・夜間の痛みや不快感
不眠症の症状には、以下のようなものが挙げられます。
・日中の眠気
・疲れ
・イライラ
・集中力や記憶の問題
この記事を読んで、不眠症かもしれないと思ったら、病院を受診してください。
不眠症を診断するときには、検査、病歴、睡眠履歴などが評価として使われます。詳細な睡眠履歴を把握するために、1〜2週間ほど睡眠日記をつけることや、睡眠パターンや昼間の気分について書き留めておくよう勧められるかもしれません。
医師は、睡眠の量と質についてパートナーに確認することもあります。また、医師が必要を判断した場合は、特別な検査のために専門機関を紹介されることもあるでしょう。
急性不眠症は、治療を必要としないことがあります。軽度の不眠症は、良好な睡眠習慣(この記事の最後に説明します)を実践すると改善する場合が多いです。
不眠症で眠くて疲れているため、日中の活動が難しくなっている場合、翌日の眠気などを避けるために医師は限られた期間だけ睡眠薬(睡眠導入剤)を処方するかもしれません。
ただし、市販の睡眠薬は不眠症の人に勧められない場合もあるので注意しましょう。市販の睡眠薬は望ましくない副作用を伴うケースも多く、時間の経過とともに有効性を失いやすい傾向があるためです。
慢性不眠症の治療は、最初に不眠症の原因となっている根本的な症状や健康上の問題を治療することから始まることが一般的です。
また、不眠症が長期間続く場合、医師は認知行動療法を提案するかもしれません。認知行動療法は、不眠症を悪化させる行動を変えたり、睡眠を促す新しい行動を身につけるのに役立ちます。こちらについては次回の記事で詳しく説明します。
睡眠衛生とも呼ばれる良い睡眠習慣を身につけると、質の良い夜の睡眠につながり、不眠症を克服することにつながるとさいわれています。
ここでは、良い睡眠習慣のためのいくつかのヒントをご紹介します。
・毎晩同じ時間に寝て、毎朝同じ時間に起きる。夜の寝つきが悪くなるので、日中は昼寝をしない
・寝つきを悪くする可能性があるので、就寝前に携帯電話やスマホ、もしくはデバイスといった光を放つものを長時間使わない
・遅い時間にカフェイン、ニコチン、アルコールを摂らない(カフェインとニコチンは興奮剤で、入眠を妨げ、アルコールは夜間に目を覚ます原因となり、睡眠の質を下げる)
・定期的な運動をする(興奮したり、寝つきが悪くなる可能性があるので、寝る前には運動しない。専門家は、就寝前の少なくとも3〜4時間は運動をしないことを勧めている)
・遅い時間に量の多い食事を食べない(就寝前の軽食は寝つきをよくする)
・寝室を快適にする(暗く、静かで、暖かすぎず、寒すぎない状態。明るさに問題があれば、アイマスクを試してみる。音に問題がある場合は、耳栓か、「ホワイトノイズ(スマホのアプリなどにもあり)」を試してみる)
・寝る前に、リラックスするための習慣(本を読んだり、音楽を聞いたり、お風呂に入ったりする)を行う
・睡眠やセックス以外のためにベッドを使わないようにする
・眠りにつくことができず、眠くならない場合は、起き上がって読書をしたり、何かしたりする
・心配事があって目が覚めている場合、寝る前にTo Doリストを作るようにする(夜遅くに心配事に意識を向けないようにする)
不眠症はとてもツライ症状ですが、医師の助けを借りて、しっかり治療することで改善が期待できる病気です。記事の中にある良い習慣を試してみながら、気長に治療に取り組んでいきましょう。
次回の記事では、不眠症の治し方の認知行動療法や薬での治療についてみていきます。
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